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109 もうひとつの異変

幽霊船の船尾に立つ女性は大婆様によく似ていた。

もっとも、大婆様よりも力強い魔力を纏っていて「健康美」という言葉が似合いそうな雰囲気だが。


驚いて凝視していると……目が、合った気がする。

ギクリとして身体が強張ったが、こちらに顔を向けた彼女は優しく微笑んだので安堵した。


ーー本当に、何者なのだろう。



遠ざかっていく船。

小さくなっていく青い光。


ーー行ったか。


窓から外を伺い、気配察知を展開する。


「はーーーーっ怖かった!」

「もう大丈夫か?」


机の影に隠れていたアリスとヴィーが深く息を吸って立ち上がった。


「さっきの何だったんだろうね?」

「幽霊船ってやつだろ。初めて見たぜ」

「行っちゃったよね? もう平気?」



「……いや、まだだ」


「? 兄さん?」



幽霊船はたしかにすれ違って離れて行った。

けれど、引いていく気配とすり替わるように違う気配が近づいていた。


それはドロドロとした、あの岩陰の気配に似ている。


緊張から開放されたばかりの弟妹達は気づいていないらしい。


この海域、昔は次元の亀裂があった場所だと聞く。

ここも魔素溜まりの痕跡がくすぶっているのだろうか。

それとも悪魔が魔力の残滓を残していたのか。


窓から空を覗き込めば、月はまだ青い。


ほんと、溜息しか出ないな。


気配の出所を探っていると、少し先に謎の魔力を見つけた。

それも一つじゃない。

いくつかの種類の魔力が存在している。


ーー俺の力じゃこれが限界か。


「トール、頼みがある」



大爺様の日記にあった、あの探索魔法を試してもらおう。

索敵に空間魔法を重ね合わせれば立体的な造形も分かるようになると書いてあった。

先ほど察知した謎の魔力の方角に向けて魔法を展開してもらう。


魔力を練り上げ広げていくトール。

すぐには上手くいかなかったが、数回トライ&エラーを繰り返したら探索魔法を展開できるようになった。流石だな。


「なんか、対峙してる……?」

「何かと戦ってるってことか?」

「両方とも船だよ」

「え……また幽霊船とか言わないよな。今度は何なんだろ全く」

「さっきの船は幻影っぽいけど、今度は実態のある船だと思う」


「……争いに巻き込まれたらまずいな」

「それなんだけど、ここは元と同じ海域だけど異空間なのかもしれない」

「異空間?」

「たぶん。次元の狭間か、時間軸が違うだけなのかわからないけれど」

「どうしてそう思った?」


「昨日、そこの本棚にあった本を少し読んだんだ。冒険物語に幽霊船は時間軸を超えて航海するって書いてあった。近くの船を道連れにすることもあるんだって」


「それと、青い月が出てからヴィックと繋がらない」


ーーそういうのは早く言ってほしかったなぁ……


つまり、幽霊船の航海に巻き込まれたってことか?

航路を変更したくても船なんか操作できないし、現状は魔道具に任せっきりだ。

対峙している船は海賊の類も考えられる。巻き込まれる前に回避するには……この異空間から抜け出す

のが一番の解決策とは思う。


時間軸が関係するなら俺に出来ることもあるかもしれない。

でも、過去視だけじゃ意味がないよなぁ。


どうしたら正解なんだ?

いつも読んでいただきありがとうございます!

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