107 青い月
夜の海はやけに静かで。
聞こえるのは波の音だけ。
今夜は丸い月が青く光っている。
月が青い?
月ってそんな色だったっけ?
否だ。
月の青い光に照らされる船上。
ただし星はひとつもない。
晴れているなら満天の星空が見えるはずだろう。
次から次へとなんなんだよ!
いいかげん腹が立ってきた。
大きく息を吸って、ゆっくりと吐く。
ーーよし。
「この船は結界があるから大丈夫だ。けど、何があるか分からないから集まっておこう」
異変に気づいてオロオロしていた弟妹に声をかける。
急いで荷物を収納し、船長室に集まって窓から外の様子を伺うが、真っ暗な海に月の光が反射しているだけ。
「……悪魔でしょうか?」
「いや、この気配は違うと思う。どちらかというと魔獣に近い気がするよ」
「海の魔獣は初めてだ」
「俺も。違ってたらごめん」
トールは静かに首を振って窓の外を警戒する。
アリスはすがるようにヴィーを抱っこして部屋の隅に座り込んでいた。
ザザーン……ザザザー……
ザザーーン……ザザザザ……
どれくらいの時間が過ぎただろうか。
息を潜めていた俺達は、小さな声を漏らした。
「……兄さん」
「あれは、何だ……?」
月の光を受けてぼんやりと青白く光る物体。
まだ距離があるから見えづらいが、わりと大きめの船だ。
視力強化で観察してみるとボロボロの帆に傷だらけの船体。
月の光を受けている場所は見えるが、影の部分は何もないように思える。
ーー幽霊船。
きっと、これがそうだ。
話には聞いたことがあるが見たのは初めてである。
金銀財宝が積まれているとか、幻の宝物が隠されているとか、噂はいろいろ。
ロマンを求めて幽霊船を探しに行った海賊もいたとか、そのほとんどは海に沈んでしまったとか言われているけれど。
手を出さなければ何もされないはず。
俺は静かに通り過ぎるのを祈った。
ーー頼むから、何事もありませんように!
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