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011 カーディナル王国の異変

翌日の昼過ぎ。

剣の素振りをしていると「やってるな」と声が聞こえた。

振り向くと、そこにいたのは籠を背負った旅装束の老人。


おじじが帰ってきた。


「ゆうべ、おばばから伝書鳥が届いたでな。早う会いたくて急いで帰ってきたわ」

ガハハと笑うシワくちゃの顔。

逆だったようにフサフサしている白い髪。

小柄なわりに圧を感じてしまうのは、彼の体内魔力量がとても多いからだろう。


お土産を買ってきてくれたと言うのでみんなでお茶にする。

おばばの家に行って、囲炉裏を囲み雑談をしながらお土産のスイーツをいただく。

カーディナルの王都でも人気だという、紅りんごのカップケーキ。

薄くカットされた紅りんごが、クルリと花の形に巻かれてスポンジの上に飾られている。


確かにこれは女性が好きそうだ。

贈り物に喜ばれそうだし、貴族のお茶会にも映えそう。


フィンも喜びそうだなと考えていたら、アリスとヴィーは食べ終わるなり隣の部屋に行ってしまった。

面白い魔道具を借りたので遊ぶのだそうだ。

初めて見る物ばかりで好奇心を刺激しているようだ。



「カーディナル王国へ行くのか?」

ふいに、おじじが聞いてきた。


「はい、父上との連絡がとれなくなってしまったので探しに行くつもりです」

「……やめといたほうがええぞ」

「えっ! やっぱり何かあったのですか!?」

「あの国は今おかしい。行かんほうがええ」

「おかしい……とは?」


おじじはお茶を飲み、思い出すように考え込むとゆっくり首を振った。


「カーディナルは国全体に結界が張ってあるのを知っとるな?」

「はい、山や森に囲まれているから魔獣が入ってこないように聖女が結界を張っていると」

「その聖女がのぉ、半年ほど前に国外追放されたらしいんじゃ」

「は!?」


流石にみんな目を丸くした。


「え〜っと……聖女が何か、やらかした……とか?」

「それが、わしも情報を得ようと王都でいろいろ聞いてみたんじゃが理由がちっともわからん」

「それでは今、結界は?」

「結界はあるが何かおかしい。何がと言われるとよくわからんが、とにかくおかしいんじゃ。こっちに戻るときは国境の砦を通らんかったから気づくのが遅くなったが、結界を出たあとに違和感があった」


さてはこの人、砦の門の行列に並ぶのが嫌でこっそり飛び越えたな。

砦を通ると遠回りになるしなぁ。


「そして今度は第一王子の婚約破棄騒ぎじゃ。」

「トルナード殿下が!? そんなバカな……!!」

「おや、面識があるんじゃったかの?」

「ええ。カーディナル王国には2回ほど行きましたが、年齢も近いし城ではとても良くしていただきました。」

「そうか……わしも賢い王子だと思っておったがの、何を考えているのやら」

「婚約者はローゼンドルフ辺境伯のアシュリー嬢でしたよね。とても溺愛……いえ、大切にしていたのを覚えています」


あの殿下がアシュリー嬢を手放すなんて信じられない!

本当に、一体何が起こっているんだ?

父上が心配だ。

巻き込まれていなければ良いけれど……



「まあ、そんなわけでの。今あの国に行くのはやめておけ」

「しかし父上が……」

俺の中で、父上を探しに行くのは決定事項だ。


「あぁ、そいういえばのぉ」

おじじは難しい顔をして言った。


「おばばからの伝書鳥は届いたんじゃが、わしが返信した伝書鳥はこっちに届いておらんようじゃ」

「そんな……」

「カーディナル王国内の情報が外に伝わらないように妨害されておるのかもしれん」

「だから父上と連絡が取れないのか」


それにしたって連絡が取れないまま1ヶ月近くも帰って来ないのはおかしいだろう。

怪我でもして動けないでいるか、捕まっている可能性だってある。

もしかしたら「探しに」ではなく「救出」になるかもしれない。


「本家にも相談してみよう、焦らず考えて行動するべきじゃろな。こっちでも情報を集めてみるから少し待て。気が急いてはいかんよ」


たしかに、ここは慎重に情報を集めてから向かうべきだろうか。



「ところでレオンハルト」

「はい」

「ルーヴィッヒ様から預かっていたものがあるんじゃ。お前さんに渡しておく」


おじじはそう言って、一冊の古い本を渡してくれた。

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