表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/133

閑話2/薔薇の紅茶は大人の味 sideアリス

大陸の南東には、うっそうと緑が茂る森があります。

その森には不思議な言い伝えがあり、いくら足を踏み入れても元の場所に戻って来てしまうのだとか。

大昔から「精霊が住んでいる」と言い伝えられていますが、見た人はまだいません。



……他種族にはそう伝えられていた森なのですが、時々精霊達のお茶会に招待されるお客様もいるようです。




桃薔薇(ルイーゼ)ちゃーん! 遊びに来たよ」


八重歯を見せて嬉しそうに手を振るのは、黒髪の少女アリス。

転移扉を通ってやってきた彼女は、他種族の血も引いているが曽祖父は精霊族のルーヴィッヒだ。

森の精霊達に受け入れられてる……とは言い難いが、親切にしてくれる精霊達もいます。


『アリスちゃん、いらっしゃい!』


『あれ? 今日はアリスちゃん一人だけなの?』

「うん。レオン兄がちょっと熱を出しちゃって。今、トールが看病してる」

『アリスちゃんは一緒にいなくていいの?』

「全員いるとうるさいから遊びに行ってこいって言われた」


『……ああ、トール様かぁ』


しょんぼりしているアリスの頭を、桃薔薇(ルイーゼ)がヨシヨシとなでた。

少しだけ気分が浮上して笑顔になる。


そこへ給仕係がワゴンに綺麗なティーセットを並べて運んできた。

上位精霊の彼女は子供姿で、薔薇の頭をしている。


「あれっ昨日とは違う精霊さんだね。紅茶も昨日と違う」


『毎日違う精霊がオススメのお茶を用意してくれるんだよ。今日の給仕さんは私も始めましてだね』


笑顔の桃薔薇(ルイーゼ)に向かって、給仕さんはすまし顔でペコリと頭を下げた。



「昨日のフルーツティも美味しかったけど、今日はなんだろう?」


アリスがワクワクしながら桃薔薇(ルイーゼ)と一緒に席につくと、給仕は透き通る紅色の紅茶を用意してくれた。


『いい香りだね』

「うん、爽やかな薔薇の香り」


『「いただきまーす!」』


ひとくち、コクン。


「…………」

『…………』


少しだけ渋みと、苦みと、口にすると香りがきつく感じる。


「えっと、ミルクとかありますか?」

『この紅茶には合いませんよ』


『砂糖かハチミツはない?』

『そのまま飲んだほうが風味が感じられますので』


すまし顔を崩さない給仕さん。


『ローズティーも飲めないなんて、この茶会に参加するにはまだ早いんじゃないですか?』



二人は顔を見合わせて困ったように菓子に手を伸ばした。

甘いだろうと思った菓子類も素朴な味で甘くない。

仕方なくボソボソと焼き菓子を食べるしかなかった。


菓子を食べると喉が渇くので、紅茶の2口目を口にする。

顔が歪みそうになるのを我慢して飲んでいると、後ろから声をかけられる。




「こーら、何をしているの?」


赤薔薇(ローズ)さんである。

いつも茶会を仕切っている彼女はテーブルを見てだいたいを察した。


「ゲストが心地良くいられるように応えるのも給仕の役目でしょう?」


扇子で口元を隠しているけど目は笑っていない。

給仕の精霊は渋々といったかんじでジャムを出してきた。


『……どうぞ』


紅茶にジャムを溶かすと、爽やかな香りに甘さがプラスされた。


『「あっ美味しい……」』


ほっとしたように笑顔になったふたり。

赤薔薇(ローズ)は微笑んで頷いたけど、給仕の精霊は納得できないのが表情に思いっきり出ていた。




「あの、薔薇の精霊さん。ローズティーが飲めるようになったらまた遊びに来るので、その時にもう一度淹れてくれますか?」


申し訳なさそうに見上げるアリス。

精霊は悔しそうに「ふぐぐっ」と唸ったけれど「仕方ないですね」と息を吐き、


「だったら私は、超絶スペシャル美味しいウルトラプレミアムなローズティーを淹れてみせますよ」


そう言って胸をはった。



赤薔薇は笑顔のまま心の中で「子供か!」とツッコミ入れたが、「そういえば、この子達はまだ子供だったわ」と力なく笑うのでした。

いつも読んでいただきありがとうございます!

給仕の薔薇の精霊は「頭が薔薇」と書きましたけどね、想像したらあ◯ぱんマンのキャラみたいになってしまいました……精霊の森のテーマは「エレガンス」なのに!どうなるキャラデザ!


少しでも面白いと思いましたら、ブクマ登録や評価、リアクションなどよろしくお願いします。

もしポチッと押して頂けたら嬉しくて更新もはかどります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ