閑話1/ショウとの思い出 sideシエル
☆「異世界創造伝記」の番外編で、光の精霊が登場したおはなしをシエル目線で再編集しています。
あれは1200年ほど前だったでしょうか。
異世界人のショウとヒナが、時の精霊の赤ちゃんを連れて精霊の森にやってきたときは皆が驚きました。
精霊王様だけはいつか彼等が来ることを知っていたようでしたが。
人型精霊になったばかりの私は彼等の世話係を任されましたが、初めての事だらけで目が回るようだった。
ショウはわりとのんびりした性格だったが、ヒナの方は活動的でしたね。
彼女に振り回されているショウを思い出して、ふふっと笑いが漏れる。
ーーあの日、森の北側に遊びに行くふたりを見つけた私は、時の精霊と一緒に同行することになった。
身体強化で森を駆け抜けた彼等は花畑のある開けた場所でランチを取りました。
チーズ&ポテトサラダ、チキンの照り焼き風、燻製肉のBLTサンド。
人族の食べ物を見たのは初めてで、香ばしいそれらに興味を惹かれた。
精霊だから食事は必要ないのだが……誘惑に負けて食してしまった。
今思い出してもたまらない。
大変美味であった。
お礼に花畑の上で光のダンスを披露しましたね。
つられて花の精霊たちも集まってきて、皆で一緒に踊るたびに粒子がキラキラと光りを振り撒いて。
草木が風に揺れて音を奏でていたのも、今思えば精霊達の仕業でしょう。
なんだろう、思い出すのが……なんだかすごく恥ずかしい。
あの時はまだ、光の粒子だった時の精霊。
ショウは彼に名前をつけて契約をした。
嬉しそうに空中をグルングルン飛び回っていたルーヴィッヒ。
そしてルーヴィッヒはヒナに精霊の加護を与えた。
本来、加護はそんな簡単に与えて良いものではないのだが「ヒナはショウのパートナーだから初めての加護をあげるのに相応しい」と言われては渋々頷くしかありませんでした。
けれど、結果的にそれがマーメイド・クイーンの誕生に繋がったのです。
岩場の魔素溜まりに捕まり、怪我をしていた人魚。
救助したものの傷薬の類はショウが作った普通のポーションしかなかった。
だがショウは、ヒナの浄化魔法と私の治癒魔法を自身の魔力と混ぜ合わせ、両手で圧縮するように小瓶の中の液体へ溶け込ませた。
「できた! 擬似的だけど、中級ポーションの出来上がりだよ!」
軽く言うショウだったが「浄化と治癒の他に、体力回復と再生の効果もついてるよ」とのことなので上級ポーション以上なのは確かでしょう。
人魚が即席ポーションを一気に飲み干すと、傷つきちぎれていた尾ビレは再生され、欠けていた鱗も修復、虹色へと変化した。髪色は水色へと変化し、耳のヒレも虹色になって大きくなり……ふつうの人魚はマーメイド・クイーンへと進化したのです。
一体、何が起こったのかと焦ったが、原因はルーヴィッヒでした。
『ボクの魔力が干渉して時が進んじゃった・・・ごめんなさい』
「それって、彼女はいずれマーメイド・クイーンになる予定だったってことだよね?」
『うん、そう。』
「な〜んだ、とんでもないことやらかしたかと思ったけど、予定がちょっと早まっただけだからセーフだよね!」
「いやいや、とんでもないことやらかしてるから! 自覚して!」
セーフだよ!と主張するショウと、つっこみを入れるヒナ。
なんてことだと気を失いそうになったが、当のマーメイド・クイーンは気にしていなかった。
『大丈夫よ。そこの彼が言うように、予定が少し早まっただけなんでしょう?』と。
感銘を受けた私はヒナに「精霊の祝福」を贈ったのだから、他者のことをとやかく言えなくなってしまったのですが。
ルーヴィッヒはあの後もいろいろ興味津々で首を突っ込むから成長するまでは目が離せなかったなぁ。
マーメイド・クイーンとも時々連絡を取り合って情報交換をしました。
なんでもショウが大陸の西側に海底都市を作ったとかなんとか。
相変わらずやらかしているなと皆で笑って話したものです。
彼等が揃わなければマーメイド・クイーンは誕生しなかった。
ショウがいなければルーヴィッヒは誕生しなかったし、ルーヴィッヒがいなければショウ達は力を得ることができなかった。
あの日、時の精霊と一緒に同行することになったのは偶然か、必然か。
ショウとヒナがこの世界を救ったのは、ルーヴィッヒ、きみの導きかもしれないですね。
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もう一本閑話を書きたいと思っていますので、7章はもう少しお待ち下さいませ。
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