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091 時空の中の光

朝からいきなり突拍子のない話を振られてしまった。


落ち着いて話を聞いてみると、使いの者が来て『午後になれば島に行ける』と告げたらしい。

『それまで時間があるから水源にでも言ってみますか?』と。

ただし水源まで少し距離があるから島に行くのが少し遅くなるとのことで、先ほどの騒ぎになったようだ。


水源はとても美しい水場で、先代の光の大精霊(リュシー)がよく行っていたとか。

何か手がかりがあるかもしれないな。


「兄さん大丈夫? 珍しくグッスリ寝てたけど」

「ごめん、寝すぎた」

「ずっと振り回されてたし、疲れてたんじゃない?」

「大丈夫だよ。ちょっと精霊力を使いすぎただけだと思う」

「……そう?」

「折角だから水源を見に行ってみたいね」


それを聞いていたアリスとヴィーは大喜びで弁当の用意を始めた。

トールは島に早く行きたかったようだけど、決まったなら仕方ないと準備を手伝う。

俺も軽く朝食を済ませて出かける準備をした。


部屋を出ると、シエルがこちらへ向かってきていた。


『今日のご予定はお決まりですか?』

「これから水源に行って、その後に島へ行こうと思います」

『承知しました。私がご案内します』

「いつもすみません」

『これも私の仕事ですから』

「有難うございます」




アリス達はすっかりハイキング気分で、みんなで騒がしくしながら水源へと向かう。

深い緑の原生林と渓流の涼やかな音。

木々の葉の間から差し込む光。

可愛らしい光の粒子の精霊たちが森のそこかしこに漂っており、荘厳な空気を柔らかく感じさせる。


苔の生えた岩場、大きなシダの葉に覆われた道なき道。

勢いのあった水流はやがて穏やかな小川になり、いくつかの沢や細い小川が流れ込んでいた。


『水源はいくつかあるのですが、一番高い場所にある水場がこの先です』



シエルの後に続いて、緊張しながら足を踏み入れると……ぐらりと視界が揺れた。


想像以上に魔素が濃い。

精霊の森はただでも高濃度の魔素地帯だ。

その中でも更に魔素が濃い……魔素だけじゃない、強烈な精霊力の残滓。

意識が引っ張られそうになる。


「兄さん?」

「おい、大丈夫か!?」

「レオン兄!!」

『気をしっかり……!』



薄れていく意識の中で見えたのはーー


岩の隙間から流れ落ちる小さな滝。

その下にある滝壺。

草花に囲まれた滝壺の水はとても澄んでいて。

そこから流れていく小川のせせらぎが心地よくて。


鳥達の鳴き声と木々のざわめきも聞こえる。


過去に引っ張られていく意識。



これって……瞳を使ってないのに過去が視えてるってことだよな。



一体どれだけの精霊力をここで使っていたのか。

さすが大精霊、とんでもない残滓だ。


時空を遡る中で見えた光。


先代の光の大精霊・リュシーだ。


彼は精霊力を川の流れに乗せていた。


そういえば蜃気楼は水場で発生することが多いなと思い出す。


ーーなるほど、彼はこうやって離れている場所の様子も見ていたのだ。

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