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001 プロローグ(前編)

※R15設定しましたが念のためです。過激なシーンなしでどこまでファンタジーできるか模索中。

ドゴゴゴゴーーーン!!

ある日の正午、まだ冬の気配が残る森の中にその轟音は突然鳴り響いた。


ーーなんだ?何が起こった!?


むせ返るほどのホコリと煙。砕けた壁の向こうに人影が見えた。

嫌な気配を感じて身構えながら叫ぶ。

「ごほっごほっーーっ誰だ?何者だ!?」


風で煙がはれていく。

そこに現れたのは、闇の魔力をまとう一人の男性。

肩の位置で切りそろえられた艷やかな黒髪。ヤギのような角。背中には黒い翼。

身につけている衣類は上質で品が良く高貴な身分が想像できる。


「よう、ガキども」


見た目は30歳くらいだが地を這うように響く声は年齢不詳。

強い魔力に身体がすくむ。一緒にいた叔父上も動けないようだ。


ーーこの容姿と魔力、まさか魔族か!?実際に見るのは初めてだ!


「ふんっ。あいつもついにくたばったか。結界が薄れてきたおかげでようやく見つけたぞ。」

ジャリジャリと音を立てながら、大きく開いた壁穴から室内に踏み込んでくる。


「姉上の忘れ形見を迎えに来た」


その言葉で我に返った叔父が叫ぶ。

「レオン!!あの子達と一緒に鍵の部屋へ行け!」


呼ばれた青年は大きくうなずいて走り出す。

部屋を出て、廊下を走り、こちらへ向かっていた妹と弟を見つけると急いでカギの部屋へ押し込める。


「兄上、先ほどの轟音はなんですか?」

「レオン兄?なんでこの部屋?」

2人の肩に手を置いたレオは息を切らしながら答えた。

「魔族が現れた。おそらく大婆様の弟だ」

「ーーーっ!」

「叔父上がひとりで応対しているから私も戻る。お前たちは絶対にこの部屋から出るな!

 ここは大爺様が強固な結界を張っているから安全だ。いいか、絶対に出るなよ!!」

そう言い残してレオン大急ぎで叔父の元へ向かった。




その頃、突然現れた魔族の男は部屋をぐるりと見渡し、本棚に飾ってある写真立てに手を伸ばしていた。

並んでいる中でも一番新しそうな写真を手にして裏側を見ると文字が書いてある。


ーレオンハルト19歳、ヴィクトール14歳、アリスティーナ8歳ー


3人と一緒に写っているのは精霊族の特徴がある初老の男。

他の写真に目をやると、少し面影のある人物が写っていた。


「……忘れ形見といっても、その曾孫ひまごになるようだな」


家族の写真を見ながら懐かしそうに微笑んで、ポツリとつぶやく。

「姉上の子どもの頃にそっくりだ」



「ーーっあの、もしかして、魔族の王家の方でしょうか?」

叔父上の声が聞こえる。

刺激しないように静かな声で、ただ、動揺しているため少し震えているのが分かる。

レオンはそっと部屋に近づくと中の様子をうかがった。


「いかにも。我はシノン・ディア・グラキエスの弟、アモン・ディア・グラキエスである。姉上の忘れ形見を迎えに来た。おとなしく渡してもらおうか」


「そう言われましても、あの子達の父親は不在にしておりますし、叔父の私が決められることではありません。それに、先月身内を亡くしたばかりですので静かに見守っていただけないでしょうか」


アモンは冷たい目を向けながら「おまえ達の許可などいらない」と言い放つ。

「ドアの後ろにいるのはわかっているぞ。レオンハルト、出てこい」


圧が強く響く声。突然呼ばれてレオンの肩が跳ね上がる。心臓バクバクである。

少し迷ったものの、叔父一人に押し付けるわけにはいかないので覚悟を決める。

深呼吸をして、手を握りしめ、開けっ放しのドアの前に一歩出た。


「……お初にお目にかかります。ルーヴィッヒの曾孫・レオンハルトです」

一応、貴族の礼のポーズをしてみる。相手は王族だ。



「お前がレオンハルトか。礼儀正しく成長しているようで嬉しいぞ。これからもグラキエスの血筋に恥じぬよう努めよ」


アモンは満足したようにニヤリと笑った。

そして品定めするような目線で無遠慮にレオを見る。


「見事な金髪だな。エルフの血が濃いのか。他の魔力も感じるが……闇の魔力は少ないか」

少し残念そうにしたものの、手にしていた写真を見ながら要件を言う。

「ところでお前には弟妹がいるようだな。会わせてもらおう」



レオンと叔父に緊張が走る。できれば弟妹と魔族は会わせたくない。

先月亡くなった曽祖父ルーヴィッヒからは「絶対に魔族と会わせてはならない」と強く言われていた。


どう答えたら良いか考えていると、叔父が先に声を発した。

「大変申し訳ないが、2人は今でかけておりまして……」


ドゴゴーンッッ


叔父の横の壁に穴が空いている。

頬には傷が……攻撃の破片がかすったようだ。顔面蒼白である。

アモンの赤い目が鋭く光る。睨まれただけで魂が抜かれそうだ。


「私は嘘は嫌いなんでね、大人しく連れてくることだな。姉上の血を引く者や身内に手荒な真似はしたくない」


弟妹を渡すわけにはいかない。だが圧がすごすぎて弱気になりそうだ。

こんなとき、大爺様ならどうするだろう。

冷や汗が止まらないーー!

読んでくださり有難うございます。

かなり長いお話になりそうなので不定期更新になります。

少しでも興味を持っていただけましたら続きも読んでいただけると嬉しいです。

〜〜〜〜〜

第二章に出てくる予定の「異世界創造伝記」を別連載にて公開しております。

こちらもどうぞよろしくお願いいたします。

https://ncode.syosetu.com/n7983jn/

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