第9話 宝石の意思
「なっ、お...狼ぃ!?」
「でかい...しかも体が...水で出来ているぞ!」
地下水路の中央区域へ到達した僕達の前に現れたのは5mくらいの大きな水の狼。
「なんだ、なんなんだコイツ!?見たこともない、みんな離れろ!!」
「アオーーーーーンッッ!!!」
「オーロラちゃん!!」
「んん!?」
水狼はオーロラさんに襲いかかる。
「んぐぅ!?」
「オーロラちゃん!?」
「何よこれ!体が水だから殴っても効かないわ!」
「なんですって!?」
「オーロラちゃん逃げて!」
「ふん、アタイを舐めないでよ!」
オーロラさんの腕輪の2種のルビーが輝く!
「ディープ、スパークリング!アタイに力を貸して頂戴、バーストフレイム!!!」
「ギャウッ!?」
「効いた!」
狼がオーロラさんの攻撃に怯んだ!
「この狼ちゃんは魔法が効くようね、アタイの情熱は熱かったかしら?」
「グルルッ!!」
流石だ、真っ先狙われたそばから攻略方法を見抜いた!ゲームでも炎で体を構成した敵だっていた、その時も魔法が効くとわかっていた。それをオーロラさんは自力で瞬時に気づく!
尊敬だ、尊敬しかない!
「鬼眼晶、狼を惹きつけろ!!!」
「なっ、エイトちゃん!?」
「覚悟の上です!ルビー、ガーネット、ルベライト、ストロベリークォーツ!!みんなを聖炎で守れ!!!」
煌めく炎がみんなに纏い強化する!
「エメラルド、スフェーン、ペリドット!僕に風を!!!」
風が僕を包み機動力を強化!!
「グルルォーーーッッ!!!」
「エイトくん!!」
「ナトロライト、お前の動きは見えている!」
強化された直感と洞察力、観察力が水狼の動きを見切る!!
「今です!!」
「魔法、撃てーーっ!」
「グルゥ!?」
よしっ、水狼の胴体に命中した!
でも元プレイヤーとしてわかる、今の水狼の動きはおそらく、
「....。」
「な、なんだ?狼の動きが止まったぞ?」
「よくわからんがチャンスだ!」
「待って、柱の宝石が!」
「!」
ディバイン・アクアが再び輝く、
すると周囲の水が水狼に取り込まれてゆく!
「アオーーーーーンッッ!!!」
「回復した!?」
やっぱり、この手の自動回復持ちのボスは相手の戦力、戦略を知るために捨て身覚悟で攻撃してくる!
少なくとも相手は自身へダメージを通す方法を僕達が持っている事に気づいた。ならどうするか、
ただ動き回ればいい。
「狼が!」
「エイトくんが危ない!!」
水狼は周囲に水の柱を形成、液状の体で何度も飛び込みながら僕を追いかける。
回復しながら動き回り、そして高い位置にいる僕を狙う!
「っ!」
風の力を纏っているおかげで空中行動が出来る、鬼眼晶の力で水狼のヘイトは僕に向いたままだ。
なら...!
「...。」
僕は柱に背を当てジッとする。
「....グァオ!!!」
「そこだ、バーストストーム!!!」
「グルォォッッ!?」
周囲に形成した水の柱で移動しているんだ、ディバイン・アクアが組み込まれている中央の柱にくっついていれば、
この柱に組み込まれたディバイン・アクアが水狼の力に何か関係があるなら、
柱を壊さないために正面や後からは狙わない、左右のどこかからギリギリで僕を狙うはず!
圧縮した暴風で砕けた水の体に向かって、
「ルビー、ガーネット、ルベライト、ストロベリークォーツ!気化しろ、ブレイクフレイム!!!」
「今よみんな!撃てー!!」
「グォーーーッッ!!?」
爆炎とともに水の柱が消え、ディバイン・アクアの輝きが収まった。
ああ、これだ。
ソロプレイでは味わえない、一致団結の圧倒的なパワー!
「凄いわエイトちゃん!あんな凄い技が使えるなんて!」
「ふ、ふぇ...す、凄いです。」
あ...そういえばあの狼は水だから血に触れずにずっとあのキャラだったのか、ライラさん。
まぁ下手に暴走されるよりは...いいか。
僕はみんなの元へ降り立つ....、
その時だ。
「.....ッッ!?」
「え...?」
オーロラさんが背中から大きく血を出す。
「ア゛ッ!?」
「う、うわああっ!?」
リンさんや他の人まで何かに切られた!?
『...。』
「なっ...あれは!?」
再びディバイン・アクアが輝く。
水が収束し現れたのは綺麗な衣を纏う女性。
「女の人...?」
『...人間よ。』
「喋った...。」
『我はエクア。ディバイン・アクアの意思なり。』
「意思...?」
ディバインやサタンの宝石にそんな機能は無かった筈...?
『人間よ...今すぐお逃げなさい。』
「へ?」
『遠くへ、街を捨て、どうか遠くへ。』
「え、ちょ、どういう。」
『もうこの体は、我の、物でなくなりつつある。』
「え!?」
『早く、逃げな...さい...。』
「うわあ!?」
いきなり水鉄砲撃ってきた、しかも勢いがさっきのよりも増している。弾丸どころか対物ライフルだ、当たれば体が肉片になって吹っ飛ぶ...!
動けるのは、ライラさんと...僕だけ!?
「...よくも。」
「!、ライラさん?」
「よくも...よくも...みんなを!!!」
みんなの返り血を浴びたのか!?
「フレイムサイス!!!」
『...。』
魔法を帯びた大鎌がエクアを斬った。
...だが。
「手ごたえはあった、でもさっきよりずっと...強い!!」
「危ない...うわっ!?」
なんだ、体が、水に...!!
「エイトくん!!!」
『水針の大地。』
「ッ!!」
水の針が地面からライラさんを襲う!
「危ない...なんて危ない、みんなに、当たったらどうすんの!!!」
さっき売ったタンザナイトで強化されているから動きが良くなっているとはいえ怒りで色々見えていない!
「消えろ、消えろ、消えろーーーッ!!!」
『...。』
「あ゛っ...!」
「っ...!!!」
ライラさんが胸から血が噴き出る。
ああ...そんな。
『...。』
エクアが涙を流す。
傷つけたくないのに体が勝手に動く、この悍ましい力...ああそうか。
ナトロライトの力が見せる、彼女の体を黒いモヤが包んでいるのを。
ヒール石が皆の傷を癒す。
鬼眼晶が僕の全ての力を強化する。
「...アクアマリン!」
『!』
水の拘束が弾け飛ぶ。
「見えた...見えたよ。」
『なんで...逃げない...なんで?』
「攻略方法が見えたから。」
『まさか...私を...助ける気?』
「貴方に恨みはない。」
『嘘だ...アガッ!?』
エクアの体が操り人形の様に不気味に動く。
ゲームで見た魔法だ。
あれはマリオネット・ダンスという対象を操る魔法。タチの悪い事に本人の意識を残したまま体を勝手に動かせる邪悪さを持つ。
厄介なのは解除するには一定以上ダメージを与えなければならない事。
...ここまで情報が揃えば。
「貴方の輝きを取り戻して見せる、僕は大宝石商エイトだ!!!」
ルビー、トパーズ、シトリン、エメラルド、タンザナイト、サファイア、アメジスト、スピネル。
「八式宝石魔法術式展開、ジュエルソーサラー!」
ここからは僕の舞台だ!