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ジュエルソーサラー、転生宝石商  作者: 亜土しゅうや
水の街、宝石はここに
3/36

第3話 依頼を受ける宝石商

 「はわわ...。」

 「お嬢様、顔が赤くなっておりますよ。」

 「あはは...こういう顔立ちでして。」


 エイトです。


 盗賊に襲われた貴族の馬車を見かけたので町へ入る為と貴族関係の繋がりを持って宝石の売り手を探そうかなーって思い助けたら、相手はなんと公爵令嬢!


 これは当たり...とは言い切れない。

 実は負傷兵がいたのですがエーデルであるヒール鉱石を使って助けたら色々治っちゃったのだ。

 

 それで感動したのか、僕は令嬢の屋敷...公爵邸に案内されてしまったのだ!流石にここから先は礼儀関係の塊だ、貴族相手の礼儀なんて知らないんだけどー!?


 そう思いながらも町へは刻々と迫る。

 町に入ったら“あの魔法”で逃げようかな...。


 ちなみに僕の前に座っているのは公爵令嬢のミリー。その横に座るのはメイド・付き人のナーシャと言うらしい。


 僕の今の体は前世の妹があらかじめ勝手に設定した女の子っぽい男の子アバター。それ故にミリー嬢は僕を女の子と勘違いしていた模様。


 ちなみにナーシャさんはスキルで見抜き、さっき助けた兵士さんは最初から気づいていたのだ。多分年の功ってやつだ、凄い。


 「あのー、エイト様。」

 「なんでございましょう。」

 「先程の紫色の宝石をもう一度見てもいいでしょうか?」


 拝見するじゃないのか...意外とこの令嬢、ゆるい?

 紫色の宝石...アメジストか!


 「どうぞ、こちらです。」

 「...!」

 「これは...!」


 二人は目を輝かせながら注目している。

 前世でアメジストは産出量が多いからそこまで珍しくもなく安い部類だけど...。


 「この見事なアメジストはどちらで?」

 

 ゲッ。


 考えてなかった!

 宝石となれば産出地とかの話は出て当然じゃないか!

 でもこれゲームのドロップ品、ゲーム知識じゃな...。


 「もしや...ドロップなのでしょうか?」

  

 へ?


 「ナーシャ、確かここ数ヶ月魔物のドロップで宝石が出た例は...。」

 「一件もございません。」

 「その...ドロップ品です。」

 「ええっ!?」


 こっちでも宝石はドロップするのか!

 なら場合によっては言い訳し放題だ。

 と言うか実際にこれドロップ品。


 「私は少々特別な力を持っておりまして、魔物から宝石を得やすいのです。宝石を取り扱っているのはそれが理由なのです。」

 「なるほど、この目で見たエイト様の能力にはそんな力が。稀に不思議な力を持つ方とお会いしますが、エイト様の能力はその中でも特別でございます。」

 「そうなのですか?」

 「はい。お教えられる限りでは...そうですね、“相手の精神に干渉して自身に有利な状況へ持ち込もうとする悪徳商人”や“一度見た景色や記憶、覚えた技術を決して忘れる事が無いエルフ”...。」

 「サラッととんでもない事言いますね。」


 どう考えても国家機密レベルなんですけど。

 怖いなこのメイドさん。


 「他にも宝石はありますの?」

 「勿論、ルビー、シーライト、エメラルド!色々ありますよ!」

 「加工済みの装飾品はございますの?」

 「当然、お値段は跳ね上がりますが!」

 「これは...!」

 「サファイアのブローチです。周囲には空の涙、金属はプラチナを使っております。」

 

 空の涙はゲーム内の宝石。

 雨のように透き通るような透明度が特徴、ダイヤモンド程硬くは無い。

 梅雨イベント限定エーデルで、使うと30分間水魔法への耐性が50%上がる。

 僕だと70%だ。


 ちなみに装飾品は僕の手作り。

 ジュエルソーサラー入手特典の1つに、

 [宝石加工]というスキルがある。武具やアイテムなどの加工は鍛治系...所謂[スミス]の分野だ。


 ジュエルソーサラーはその内の一つ[宝石加工]が扱える。それにより入手した宝石は素材さえあればさらに強力なアイテムや装飾品への加工が自分で出来る。


 素材集めはなんとかなってた、だから“宝石商”として活躍が出来た。


 「これは...ナーシャ。」

 「ええ、お嬢様。」

 「ん?」


 ミリー嬢の空気が変わる。


 「...これを仕入れるのは並以上の商人でも困難。あり得るのは“極めて高い技術を持った職人にコネがある”か“商人本人が極めて高い技術力を持っている”...ですわ。」

 「そこに“盗んだ”とか“偽物”は含まれてないのは何故でしょう?」

 「エイト様、私はお嬢様から主従契約の術を受けています。...そう言えばおわかりで?」

 「...なるほど。」


 主従契約術...主と部下を結ぶ魔法。

 従者との間で許可した従者の記憶領域を見る事が出来る。おそらく大千里眼は許可しているが常に見ている訳じゃないんだな。使った直後僕が男だって気づいてなかったから。


 「であれば...どの宝石をお求めになりますか?お金さえ頂ければ“どんな宝石”も...このエイトであればご用意してみせましょう。」

 

 僕もそれなりに雰囲気を醸し出す。

 

 「...どんな宝石も...ですか。フフフ、決まりましたわ。」

 「?」

 「エイト様、一つ依頼がございます。」

 「依頼...ですか?」

 「私には妹がいます、その妹が1ヶ月後に誕生日を迎えるのです。」

 「ふむ、それはおめでとうございます。」

 「それで、あの子に似合うネックレスを贈ろうと思っているのです。」

 「...時期的に急な話ですね。宝石細工、それも公爵家相手となれば基本は1ヶ月前に準備を始めるとは思えない。何かあったのですか?」

 「はい...依頼を受けてくださった職人が暴漢に襲われ怪我をしました。その際用意するはずだった宝石も失ってしまったのです。」

 「...強盗ですか?金庫からお金は盗まれていましたか?」

 「いいえ。何も盗まれていません、ただ破壊されたのです。道具も装飾品も。」

 「それはきな臭い話ですね。よくある話ですと...他派閥の貴族の仕業でしょうか?」

 「その通りです。」


 ふーむ、町近くの街道で盗賊に襲われてる時点で怪しかったけど、この件はかなり深いぞ。僕が介入していいものかなぁ...?


 しかしこの機会を逃すのは惜しいかな。

 ゲームと違って宝石を買えるお客様はそこまでいるとは思えない、相手はプレイヤーじゃないから。それにクリスタルやエーデルを最大限に使える環境であるかすらまだわからない。


 「それで他派閥と関係なく技術も素材もある私を雇う...これはそういう依頼ですね?」


 ミリー嬢は頷く。


 ゲーム内なら使用上一瞬で出来るけど...ゲーム通りにいけるかな?それともさっきのムニエルみたいにやり方が頭から湧き出るか?


 おっと、答えを言う前に聞いておく事がある。


 「お受けしましょう...ただし、私に現在の宝石価格相場や産出量データ、産出地、この国などの宝石に関する情報が載った資料をください。それと妹さんへ贈るネックレスのイメージをできる限り具体的にまとめて下さい、原本の図があるならそれを。加えて妹さんと会う機会が欲しいです。僕なりにそのデータと客観的なイメージを持った上で制作に取り掛かりたいのでなるべく早くにお願いします。」

 「ふむ、それによって依頼料も変動する...と言ったところでしょうか。その程度なら問題ありません。明日までに致しましょう。大まかな金額交渉もその時に。」

 「かしこまりました。」


 価格は知らなきゃね、適当に提示したら詐欺になっちゃいかねない。


 さーて、宝石商エイトのリアル初仕事開始だ。

 

 ヒヒーンッ!!


 「キャアッ!?」

 「ナーシャ!」

 「おわっ、何!?」

 「大変ですお嬢様!町の門が!!」

 「あれは...!」


 突然馬車が止まった。

 窓からは町の門が見える、人がいっぱいいるが...人以外の何かが多く見える。


 あれは...狼?

 なんであんな所に?


 「アオーーーーーンッ!!!」

 「なんだ!?狼の群れがこっちに来たぞ!!!」

 「なんで町の方から!?」

 「くそっ、さっきの奴らの仲間か!」


 おかしい、人が住んでるエリアの前で堂々と待ち伏せって明らかに野生生物がとる行動じゃない。


 モンスターテイマーがいるのか?

 それなりのレベルなら複数の魔物を使役出来る。


 「来るぞ、武器を構えろ!!」

 「ルビー、ガーネット、ルベライト!輝く炎の壁!みんなを守って!!」


 煌めく炎が馬車を、兵士を囲む。

 

 「なんだこの炎は!?熱くない...むしろ力が湧くぞ!」


 この炎は味方と認識している者には効かず、付近の味方はSTR値が1.1倍になる。


 「失礼!」


 僕は馬車の屋根に登る。

 

 「鬼眼晶!」

 

 鬼眼晶はエーデルの一種。

 使用者は一定時間全ステータスが上がる代わりに敵の注目を一気に引きつける。


 狼達のヘイトは僕に向けられる。


 「今です!」

 「助かるぜ、ボウズ!!」


 狼魔物自体はそれ程強くなく、ヘイトが誰か一人に取れれば後は楽勝だ。


 「ナーシャ、敵の位置は?」

 「...いません。おそらく遠方からかと。」

 「簡単な命令なら多少距離が離れていても操れる、テイマーでよくある戦法です。」


 でもわざわざ町の前で待ち伏せるのがわからない。

 待機中に衛兵に討伐されててもおかしくないのに。


 「何がともあれ、町に着きますわ。」


 僕達が乗る馬車は町の検問の列についた。


ーーーーーーーーーー

 湖近くにある大きな町[ヴァサール]。


 さて、活気のある町じゃないですか。

 ゲームの最初の町と同じ雰囲気だ。


 「エイト様、近くの宿を借りましたので本日はそこでお泊りください。」

 「色々ありがとうございます、ナーシャさん。」

 「もし窮屈であればこちらにご連絡ください。我々の方から宿を探し直します。」


 渡されたのは一枚の紙。

 そこに書かれているのは数字や知らない文字が混ざった12文字。

 

 でも読めるぞ、なんかの補正か?


 「....ん?この感覚は。」

 〈これで聞こえますでしょうか?〉

 「!」


 念話か!

 こっちの世界ではコードで読み取る事で登録が出来るのか。凄い。


 ...今更だけど考える事が多くて疲れた。

 早速だけど借りた宿で休憩するとしよう。


 「では僕は早速宿に向かいます。町の事も知りたいので今日はこの辺で。」

 「エイト様、明日はよろしくお願いします。」


 

 さてさて、宿はここだn...でかい。

 下町宿屋じゃなくてホテルレベルじゃん。


 部屋はここ....広っ!?

 元病室暮らしには落ち着かないよこれは。

 

 ...でも今後の事を考えて慣れていた方がいいか。

 わぁ、ベッドがふかふか。

 鏡が大きい。

 景色すご。


 ...病院じゃない個室はいつ振りかな。

 あの時とは感じる風が違う、とても暖かい。


 よーし、1時間後に町を周るとしよう。

※ナーシャはスイートルームを借りてました。

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