第21話 追跡
風属性の力を持つ宝石の力で空を飛ぶ僕はヴァサールを夜空から出発した。帝国は街道を道なりに進んだ先、馬車で10日という長距離。
整備された街道には一定距離ずつに灯り、
時々人が歩いている。
「チチッ!?」
「おっと。」
空を舞うコウモリが驚いて避ける。
僕は構わず飛び進む。
さぁ敵はどこだろう。
馬車の時速は約7、8kmらしい。
僕の飛行速度は現在約120km。
どこかにターゲットはいる。
僕はサテライト・タイガーの力で探す。
...範囲外だ。
サテライト・タイガーの有効範囲は半径150m。
移動と連絡となるとターゲットは間違いなくAGI(敏捷性)が高い、加速系のスキルを使われていれば正直キツイな...。
何よりヤツはその同志とやらが出発したのがいつなのかまでは口を割らなかった。
サテライト・タイガー、クールダウン開始。
なら...オブシディアン、半径200m以内の気配を感知。効果時間は3分、クールダウンは30秒。
さぁどこだ、僕なら出来る。
僕だから出来る!
「闇夜を照らせ、フラッシュマイン!!」
「っ!」
地上から光魔法が放たれる!
目眩しか!?
「撃て!!」
でも目眩しも完全耐性持っているんだよね。
「ミラー・ダイヤ。あらゆる魔法を弾き返せ。」
「なにっ!?ぐあああ!!」
なるほど、念話使える人員は少ないから使えないヤツは妨害役にしてますってことか。巡回の薄い森の中から撃ってきたか、森の中でよく見つけたな。
でも構ってる暇はない、無視していこう。
「ギャオーッ!!!」
「うわっ!?」
何だ今の!?
前腕?前脚が翼の竜...見た目からしてゲームにいたレッサーワイバーンか?でも何だ、化け物というかグロいというか...見たことあるぞ?...そうか職業の死霊魔術師か!!
レアだけどコアなやつ使ってるなぁ...じゃない。
レッサーワイバーンゾンビとなれば使用者はそこそこレベルが高いぞ、使用できるのはレベル60以上の死霊魔術師だ。
ゲームでは....まぁ中級者になりかけかどうか程度だけど。だってあのゲームのレベル上限って...いや考えるのは後だ。
この程度、
「ギャオーッ!!!」
「空戦も想定してくるなんて用意周到だな!ダイヤモンド、トパーズ、サンストーン。聖なる輝きよ、穢れた魂に救済を!!!」
対アンデッド系上級魔法[ジ・レクイエム]。
...過剰火力だったか、レッサーワイバーンゾンビは一瞬で灰燼と化した。
「馬鹿な...わ...ワイバーンが...!?」
「アイツか。」
エメラルド、ウインドアロー。
「ぐべぇっ!?」
「ちっ、Aがやられた!ならばこれはどうだ!」
「!」
向こうの木々から黒い影...いや、コウモリの群れだ。どうやらアンデッドでは無いらしいがあの牙...どう見ても吸血コウモリだな。
コウモリの飛行速度は種類によっては時速160km近くって弟が言っていた。あれは...違うだろうな。
ならこのまま無視すれば...、
「きゃーっ!!」
「うあああ、コウモリの大群だ!!」
「な!?」
「ふっふっふ、夜とは言えどここはヴァサールに向かう街道。人通りはあって当然よ!!」
一般人を人質に...!
「アイツら...こっちを見ろ、鬼眼晶!!!」
「チチッ!!」
「魔法で注目を集めたか?だが馬鹿め、我が3万匹のブラッドバットに叶うとでも?」
「多分...こっちだ!!」
「結局逃げるか...まぁいい、あの方向は仲間の、」
「闇夜を照らせ、フラッシュマイン!」
「は?」
「チギャーーッ!?」
突然の眩い光、
驚き、混乱し、落ちるコウモリ。
「あ゛っーーー!?俺のブラッディバットがーーーっ!?」
「よっし。」
「何やってんだお前ら゛っーーー!?」
目潰し部隊がまだいたのはさっき感じ取っていた。
コウモリは急な強い光には弱いんだ。
このまま加速だ、さらに飛ばせ!!!
「まずい、追え!!」
「そういうの無理だから俺達ここにいるんだろ。」
「...。」
ーーーーーーーーーー
「...ご苦労、あとは任せろ。」
「頼むぞ。」
シュッ、
「ギャア!?」
「!?」
「...遅かったか、まぁ君を止めればいいだけか。」
「チィッ!」
「あ、待て!」
かなり時間が経った、
僕の飛行速度は最高で時速150km。
それでもヴァサールから飛び立ち11時間以上が経った。まだ少し距離はあるけど、この先にあるのは帝国領内への境界線。あそこに逃げ込まれればもう遅い。
おそらく領内はすぐ伝達出来る準備があってもおかしくは無い。
そして、ついに見つけた。
「逃がさないよ。」
「くそっ、...ここで死ぬわけにはいかない!!」
暗殺者の職業か。
二刀流のナイフと纏う加速スキル。
加えて幻惑系スキルも纏い逃げる事を考えている。
「シャァッ!!」
動きは早い、でも威力がそこまで高く無いように感じる。
「これはどうだ!」
剣系スキルのファイブスラッシュ。
この動きからして...AGI主軸残りSTRとDEXに均等割り振りにしてあるな。
「シャアァッ!!!」
「よっと!」
「何っ!?」
接近戦であってもこの程度じゃ僕でも勝てる。
「右、下、上、上、下。」
「な、なぜだ!」
「左、からのエルボー!!」
「ぐあっ!?」
「からのパンチ!!」
「ぶべぇっ!?」
鼻に向かってパンチ、
どうだ痛かろう。
「ぐはぁっ!?...ここで捕まる訳には!!」
「アメジスト、クリスタルスパイン。」
「なっ!?」
逃げようとしたのでアメジストの針で檻を作る。
「ここまでか...帝国に繁栄あれ!!」
「あ、やめといた方が。」
「...え?」
奥歯を噛み潰す行動...毒を飲もうとしたな?
まぁさっきのエルボーで毒消し魔法仕込んだけどね。
「あ...あ...!」
せっかく見つけたし情報引き出すのもいいけど...こんな所に重要情報持ってる奴を置いておくなんて思えない。ましてやこの程度じゃなぁ...そうだ。
「伝言は忘れろ。」
「何...あ゛...!?」
“さっき手に入れたサンプル”を使ってみた。
「...上に伝えろ。.....ってな。」
「...!!!...は...い...。」
男は走り去っていった。
これで間違った情報が回るだろう。
さぁ、戻ろう。
...!!
タンザナイトが僕に何かを感じ取らせる。
境界線の方からだ。
...放っておけない。
僕は再び空へ舞う。
「魔物だ、魔物の襲撃だー!!!」
「きゃーっ!!」
「...まじか。」
境界線の壁、門周辺の群がる大量のトカゲ人間。
リザードマンか!!
あの見た目は魔物としてゲームに出ていた方だ。
倒しても問題は...ないはず。
「ひぃ、く、来るなぁ!!」
「ゴァッ、ゴゴァッ!!」
「う、うわああ!?」
ピュンッ、
ドサッと倒れるリザードマン。
「...へ?」
次々とリザードマンを撃ち抜く光。
「おい見ろ...あれ!」
「子供が浮いているぞ...!?」
「...Jewel of Vlll、起動!」
8つのダイヤモンドが僕の周りを飛び回る。
(これくらいでバチは当たらないはず。待っててください公爵様。)
国境門の兵士は突然現れたその存在に言葉も出なかった。
白い衣と幼い体。
ついでに言えば少年か少女かもわからぬ容姿。
輝くダイヤと光を纏い、空を舞うその姿に。
誰かが言った。
「...天使だ。」




