第2話 ハリス公爵家との出会い
僕はエイト。
前世は病弱であまり体を動かせない中、可愛い可愛い弟妹が買ってきたVRMMOオンラインゲーム[ファンタジーオブエレメント]で謎の宝石商エイトとして活躍していた。
隠し職業「 Jewel Sorcerer 」
それはゲーム内で唯一僕だけが持っていた職業だ。
その能力はアイテムである宝石の力を最大限それ以上に引き出せる不思議な魔法を使えるのだ。
しかしそれを得てから1年、病気による度重なる衰弱で僕は死んだ。だが目が覚めると僕の体はエイトになって異世界に転生していたのだ!
さて早速だが現状を話そう。
そよ風が流れる草原、
大樹の先には大きな湖、さらに先には街が見える。
ゲームではこんな所は無かった、おそらくゲームの能力を持って全く別の異世界に転生したってところだろう。
敵キャラである魔物や盗賊がいない辺り、転生スタート地点としては当たりの部類かな?
そんな僕は湖の側でキャンプ中。
ゲーム内で買ったキャンプセットを広げ、
椅子に座ってゆったり釣りをしている。
前世で現実じゃ一度も出来なかったから涙が出そう、家族の皆んな...夢一個叶ったよ。
当然釣竿にも宝石を使っている。
・グリップエンドに[魚王の雫]。この宝石は
弟妹の協力で手に入れたレアクリスタル。
これを釣竿に組み込むと釣り上げた魚系魔物の
レアドロップ率が15%上がり、魔物の物理と
魔法の耐性が20%下がるのだ!
ちなみに普通の魚の場合は食いつきが良くなるというちょっと嬉しい機能となる。あ、品質も上がるんだよ。
グイッグイッ
お、かかった!
よーし...ってこれリール竿じゃなかった!
ええいヤケクソ、それー!!!
ザパーンッ
[レイクシルバーを 1匹 入手しました。]
おお、それなりに大きい魚が釣れた!
これは鮭の仲間かな...?
ちなみに料理は心配なく!
元が非戦闘アバターだったので生活スキルの方が多いのだ。
すごい、どう調理すればいいか頭から浮かぶ!
こんがり塩焼きが食べたいのだが、それにしては若干大きいので切ってフライパンで焼こう。
えーと小麦粉、バター、塩、キッチンペーパー...。
塩をかけてキッチンペーパーで余分な水分を取る。
臭み消しになるらしい。
取ったら軽く小麦粉を眩しバターを溶かしたフライパンで焼く!
焼き上がったらレモンとタルタルソースをかけて、
[鮭のムニエルを入手しました。]
じゃじゃーん、かーんせーい!!
クリスタルの効果もあってか鮭には油が乗っている!
知ってる?魚や植物は油、牛や豚などは脂なんだって!
では早速、いただきまーす!
「あむっ。..んん〜〜ーーー!!!」
んまーい...!何これ、旨みが口いっぱいに広がるよぉ...!
あっという間に僕はムニエルを全部平らげた。
美味しかった、ごちそうさま!
ちなみに余った内臓などの部位は加工して魚の餌に。
骨は保管、アイテムボックス内は時が止まってるから保存は効く。これだけ美味けりゃ骨から良い出汁取れそう!
お腹が膨れたところで町を目指していざ出発。
ーーーーーーーーーー
そこそこ整備された森の小道を歩き、町を目指して10分経った頃、街道と思われる白い道を見つけた。ここから町の入り口に辿り着けるのかな?
そう思い街道に入ろうとした時だ。
キィンッ!
転生して2時間も経ってない内に嫌な音が耳に入る。
ゲームのストーリーや例の本からも似た展開があった、これは!
「オラァッ!金目のモンと女は傷つけるなよ!」
「男は殺しちまえ!」
「お嬢様!」
馬車と兵士に、7人の野蛮な男達。
間違いない、盗賊による襲撃だ!
襲撃を受けている馬車の人達は貴族ってやつか?なら助けて繋がりを持つのが良さそうだ。
町へはタダで入れる保証がないからね。
よーし、...ってどうやって戦えばいいんだ?
確かゲームだと...あーもう考えてる暇は無い!
アイテムボックス、[パラライズロック]!
これは当てた対象が3秒間痺れるエーデル鉱石!
でも僕が使えばなんと5秒に増加!
「ぐああああ!?」
「な、なんだ!」
宝石魔法...[アクアマリン・水の砲撃]!!
「んな!?ぎゃああーー!!!」
「ひいいっ!!?」
「一体...どうなっている!?」
「おい、あそこに誰かいるぞ!」
「もう2発飛んでけ!パラライズロック!」
「おあああっ!?」
「ぐえええっ!!」
「あ..ああ!」
「今だ、捕えろ!!!」
怯んだ盗賊達は兵士に捕まえられた。
ジュエルソーサラー...いいなこれ!
ゲームと同じイメージで使える、ならきっと“あのスキル”も使えるかもしれない。
「ご無事ですか、お嬢様!」
「え、ええ...。」
「隊長殿、一体何が起きたのですか?盗賊に水が飛んできた様はに見えましたが...?」
「うむ。だがそれだけではない、盗賊が一瞬麻痺を起こした様にも見えた。それも向こうから現れた者から...ん?」
兵士はその方向を見たが、謎の人物の姿は無かった。
「ぐあっ!?」
「!!」
木々の影から男の声。
「やっぱりね、偵察役がいたか。」
「誰だ!?」
「敵じゃないよ、ほら!」
僕は偵察役の男を兵士に突き出した。
「な...何者なんだ?」
「僕?僕はエイト、ただの宝石商さ。」
とりあえずアメジストとトパーズを見せる。
「宝石商?」
「商人以前に子供じゃないか、なんでこんな所に?」
まぁ、そう思われるよね。
「何やら危うい状況だったので加勢させていただきました。お怪我はありませんか?」
「はい。ここにいる皆は無事ですわ。」
おや?
「お、お嬢様!」
「ダメです、怪しい奴が...!」
「あー...失礼ですがどこかの御貴族様なのでしょうか?」
「無礼者!このお方はハリス公爵家の、」
「お黙りなさい隊長。」
「は、ははぁっ!」
公爵家?
だとしたらこの女性は公爵令嬢っていうやつかな。
「私の名はミリー。ハリス公爵家の長女でございます。この度私達を助けていただいた事に深い感謝を。」
御令嬢が頭を下げた途端、付き人のメイドや兵士達が慌てて頭を下げた。
「っ...。」
「あれ?そこの兵士さん...怪我をしているご様子ですが?」
「!、失礼。これはお見苦しい姿を...。」
「隊長、治癒のポーションです。」
「待て、敵の武器に毒が仕込まれていたらしい、どうも体が痺れる。そのポーションでは治せん。」
ふむ、この兵士さんは護衛隊長か。
毒をくらってる割にはピンピンしているな。
「隊長、それならば馬車へ...。」
「いえお嬢様、その必要は...。」
「あのー...お取り込み中すみません。」
「ん?ああ、そなたには...。」
「怪我...治しましょうか?」
「治す?解毒のポーションを持っているのか?」
「いえ、これを。」
ポーチ(アイテムボックス)から取り出したのは小さな結晶が混じった翡翠色の石。
これはヒール鉱石、砕くと周囲の仲間のHPが4割ほど回復するエーデルなのだ。
ちなみに僕が使うと....。
「...ヒール石か、ダメだ。それには解毒効果は無い。」
おお?
エーデルの存在を知っている?
なら丁度良い、僕の能力を見せよう。
僕はエーデルを砕いた。
「おりゃっ!」
「...おお?おおお!?」
隊長さんは驚く。
体の毒が癒え、HPが大きく回復したからだ。
ヒール鉱石は僕が使うと範囲内の仲間の毒などの状態異常を癒し、HPを6割分回復させるのだ!
「こ...これは!?体動く!傷が癒ている!悩みの腰痛が全く痛くない!!?」
「ええええーーーーーっっっ!?」
...思った以上に効果出たみたい。
「まぁ、なんという...あ!これは失礼しました、エイト様。まさか隊長の長年の悩みまで癒していただけるなんて...。」
「いやーあはは...まさかここまで効果が出るなんて驚きです。」
ガシッ
「へ?」
「...ありがとう...ありがとう!!!」
「えっ。」
え?え?
隊長さん、涙流してる!?
「俺は...あの腰の痛みが悩みだった。ポーションによる鎮痛と治療を続ける都合上、前線を外れこういった仕事を続けていた。だが近頃は体の動きに違和感も現れ始め引退を考えていた...それを...あんたは!!」
うわー、めっちゃ感動してる。
「ぐすっ。」
「え。」
「...エイト様!」
「はっ、はい!」
すると兵士達が整列、
「この場で御礼を尽くす事は出来ません。なので私は貴方を公爵邸へお招きしたいと思います。」
「えええ!?」
おいおい、ちょっとした繋がりと町へ入る事が出来ればそれでいいと思ってたけど...、
まぁこれはこれでいい...のかなぁ!?
「待ってください!こんな素性もわからない商人が公爵邸に行くのは流石に恐れ多いのでは...。」
「構いませんわ。そうですわよね、ナーシャ?」
「はい、お嬢様。」
「へ?」
お?メイドさんの目が青く輝いている?
確かどこかで...まさか!?
「大千里眼...!?」
「驚きましたわ、エイト様はこの能力についてご存知なのですね。」
スキル[千里眼]。
狙いを定めた対象の位置、気配、ステータスがわかる。いわば見透しの能力。
そしてその上位スキル[大千里眼]。
今の3つに加えて対象の称号...つまりどういう生き方、その個人・個体がどういう存在であるかまでも見透す事が出来るのだ。
ゲームでは特定の称号を持つ魔物を何度か倒す事で得られる職業があるので結構重要なスキルだ。
それもあってか、設定上相手が善人か悪人かも見抜けるので犯罪歴なんてない僕は一応...大丈夫かな。
いや、そこじゃない!
妹の本の中で書いてあった、転生者にはステータスになんらかの転生した証拠、目印、称号があったりするって。
僕は転生してからのステータスはまだ全部見ていない。
「このスキルを知る者はかなり少ないはずです...やはりただの宝石商ではございませんね...面白い方です。私ナーシャは貴殿を公爵邸へ招かれる事に異論はございません。」
ニヤァ...ってしているよあのメイドのお姉さん!
薄気味悪っ!?(失礼)
「決まりです!では馬車にお乗りください!」
調子に乗り過ぎたと思い退がろうとした時だ。
メイドさんがいつの間にか回り込んでた。逃げられない!!!
嘘でしょ、考える事はいっぱいあるけど...そんな事より今更だけど公爵家相手の礼儀なんて知らないよーーーーー!?!?
「何モタモタしてんだ、ほーら乗った乗ったボウズ!」
「...へ?ボウズ?」
「お嬢様、この方は“男性”ですよ?」
「ええええーーーーーっ!?」
隠してる訳じゃなかったけど、
そういや今の僕、女の子っぽい男の子のアバターだった...。




