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ジュエルソーサラー、転生宝石商  作者: 亜土しゅうや
水の街、宝石はここに
14/36

第14話 逃げる令嬢

 「ハァ、ハァ!」

 

 気がつけば私は屋敷の窓から逃げ出していた。

 

 あの後だ、お父様が来た。

 心配する様子で扉の向こうから話しかけてきた。

 その目は、真っ黒に染まっていた。


 私は窓を開け、飛び出した。

 エイト様のように風魔法で着地、全力で走る。

 

 この時間に馬車はない。

 どこに逃げればいい?

 誰か、見張りの兵士さんは...っ!?

 

 「お逃げ...くだ...さい、ミリーお嬢様!」

 「ああ...そんな!!」


 血を流し倒れる兵士さん。

 側には真っ黒な目の色をした別の兵士さん。

 血に濡れた剣が灯りで光る...!


 私はまた走り出す。

 より大きな恐怖心が私を飲み込む。

 屋敷の庭を抜け、街に出る。


 「...いた。」

 「お戻り、くだ、さい。」

 「お嬢様...。」

 「っ...!!!」


 ナイフを持った従者。

 ああそんな、あの人達まで!

 嫌...嫌...!!


 「嫌ぁっーーーー!!!」


 思わず叫んだ。

 涙が止まらない。


 街頭があるから周りは見える。

 せめて見回りの人がいてと私は願った。


 偶然か、それからすぐに人がいた。


 「...!オーロラ姐さん、あの人!」

 「え..あ、ミリーお嬢様!?」

 「じ、自警団の方ですか!?」

 「そうよ、何があったのですか!?」

 「お願い...助けて!みんなが...みんなが!!」

 「落ち着いて、今はアタシ達のホームに行きましょう!」

 (裸足で寝巻き、それにこの焦りよう。...まずいわね、屋敷が襲われた!!この前の事件と関わりがあるかもしれないわ!!)

 「う、うわあ!?」

 「!?」


 現れたのは黒いフードの人達。


 「チィッ、ラーちゃん!!!」

 「はい!!!」


 屋根から大きな鎌を背負った少女が現れた。


 「ミリーお嬢様をホームへ!!アタシ達はコイツらをなんとかするわ、急いで!!!」

 「はい!!!」


 ラーちゃんと呼ばれた少女は私をお姫様抱っこって、ええっ!?


 「跳びますよ!!」

 「う、うわあ!?」


 なんて力、跳躍力。

 私を抱えてるのに軽々と家の屋根まで跳んだ。


 「ご無事ですか、ミリーお嬢様!何があったかはわかりませんが少なくとも非常事態なのはわかります。ホームなら安全です、しっかり掴まっていてください!」

 「え、掴むってどこにぃ!?」


 少女は屋根から屋根へピョーンと跳んで移動する。


 「!、危ない!」

 「ウインドスピア!!」

 「ギャアッ!?」

 「おお、流石ミリーお嬢様。助かりました!もうすぐ着きます!」

 (待っていて、ティナ、お父様、お母様、ナーシャ、みんな!)

 

 そうしてこの街の自警団本部へ辿り着く。


ーーーーー


 自警団ホームにて。

 

 「っ...なんて事、屋敷を直接襲うなんて!?」

 「外の衛兵は何をやってるんだ!?」

 「操られた人はどうなっている、襲撃者は!?」


 「よくぞご無事で、ミリーお嬢様。」

 「助けて頂いてありがとうございます、リンさん、えっと...ラーさん。」


 安全を感じたのか私の肩がぐっと重く感じた。

 涙声で私は事の全てを話す。


 「...今話してくれた事から考えると、おそらくそいつらは以前ドームさんを襲った奴等の仲間、関係者だと思うよ。加えて地下水路の事件もね。ティナお嬢様の12歳の誕生日が近づいて警備も強化したでここまで動くか...卑劣な!!」

 「そのティナお嬢様が身につけていたというネックレスの石も気になります。一体誰が...?」

 

 宝石なのか鉱石なのかもわからない、見るだけで背筋が凍るようなあの魔力...。


 「ラーちゃん、さっき見たって奴らの顔は見えた?」

 「はい、なんとか。」

 「えっ、私には見えなかったのですが..?」

 「この子、暗闇でも景色がしっかり見えるの。さっき屋根の上跳んで来たでしょ?」

 「あ...。」

 「...この町の人間じゃない、数日前から見た顔だけど、どれもただの観光客としか見えなかった。...手練だよ。」


 だとするとさっき現れた人達以外にも仲間がいる可能性がある。特に...みんなを操る誰かが。


 「誰かを操る魔法ね...前にエイト君が言っていたのとは違うモノみたいだけど、本当に同じ犯人なら趣味が悪いなんてモノじゃないわ。...本当に一体誰がこんな事を。」

 「...心辺りがあるとすれば“属国派閥”の貴族の仕業ですわ。」

 「!」

 「皆様はご存知かと思われますが、現在この国は西の帝国と冷戦状態にあります。ですが今どちらも優劣ついておらず、単純な武力が上の帝国相手に何かを火種に大規模な戦争になる前に下につこうと考えるのが属国派閥、勝負ではなく手を取り合う事で経済資源の使用供給を安定化させ争う姿勢そのものを互いに抑えようという考えを持つのが私達、和平派閥です。幸い帝国の貴族も同じ考えを持つ方が多くいます、故に和平派閥の貴族...それも大きな立場を持つ上級貴族である私の様な者を狙う事で和平派閥に痛手を負わそうというのです。大雑把な極論ではありますが今この均衡が下手に崩れればいずれ内乱が起き、国内武力は低下、帝国と手を取り合うには弱く難しい、結果下に付かなければなりません。手を取り合うとは優しさだけで成り立つものではございませんので。」

 「だとしたら今回襲ってきた連中が落としたこれは...。」


 ラーちゃん...って人は何かを取り出す。

 紋章が書かれた板。

 これに見覚えがあった。


 「ノーブルアンツ...!!」

 「の...ノー?」

 「属国思考の帝国貴族が立ち上げた裏組織です!...彼らがこの国にいる事はおそらく属国派閥の王国民は既に彼らの...!!」

 「なんて事...!?」

 「!...今更ではありますが皆さんは我々の派閥は気にはしないのでしょうか?」

 「ん?そうね...私達平民は今を生きるのが最大の目標だからね、平和になるって言うなら正直どっちでもいいのだけど...目の前でこれ見せられちゃあどっち信じるかなんて言うまでもないわ。」


 皆が頷く。


 「リンちゃん、オーロラちゃん達が帰って来たわ!」

 「本当、無事なの!」

 「ちょっと怪我をしているけど、無事だわ。」

 

 するとフラフラと誰かが歩く。


 「おいお前、怪我してるんだろ。無理に動くなって!」

 「放せ。」

 「?」

 「リン...さん。報告...が...、ありま...す。」

 「どうしたの、かなりやつれていない?休んだ方が...。」

 「...!!!!」


 この話し方...雰囲気...気配!

 まさか...まさか!?


 「みんな逃げて!!やられたわ!!!」

 「オーロラちゃん!?」

 「ぬおおおお!!!」


 オーロラと呼ばれた人が操られた団員さんを抑える。


 「これは!?」

 「アタシの煌紅玉スパークリングルビーは洗脳耐性があるわ、それを知られたのか不意を突かれて気絶させられた!大失態だわ...だからみんな逃げて!!コイツらは強い!!!」

 「ミリーお嬢様、こっちよ!ラーちゃん、お嬢様をお願い!!」

 「え、リンさん!!!」

 「地下水路に逃げます、お嬢様!!!」


ーーーーー


 ライラさんに手を引っ張られながら、

 暗い道を走る。


 「多分上で逃げても囲まれていました、いつどうやってかはわかりませんが団員が洗脳されていたと考えると、あのまま地上で..目の前で戦えば私もやられていました。地下水路の構造はわかります、全部の出口が掌握されていなければなんとか...!」

 「はぁ、はぁ。」

 「...少し歩きましょう。追手はまだ来ていません。」

 「ダメです、今は逃げなくては!走ります!」

 「ふぇ...凄いです..。」

 「ふぇ?」

 「え、ああいえ、なんでも。」


 キラッ


 「危ない!?」

 「キャアッ!?」

 「...困りますよ、殺してはいけないから加減して追いかけてるのにここまで逃げられてはムカついて仕方がありません。」


 後ろには弓を持った、細く背の高い男。

 怪しい笑みを浮かべこちらを見ている。


 「嘘...気配は無かった。」

 「気配を隠すのは得意なのです。...初めまして、私はノクサス。趣味は...そうですね、人形遊びです。」


 ノクサスはピンと指を指す。


 「あがっ...!?」

 「ら、ラーさん!?」

 「体が...まさか、マリオネットダンス!?」

 「大当たり、もしかしてディバイン・アクアの件に君も関わっていたのかなぁ?...ミリーお嬢様、お屋敷へお戻りください。さもなくば腕の一本は切り落としますよ?」

 「あ...あ...!」

 「...答えてくれませんか。では!!」


 ラーさんが鎌を振り下ろそうとした...その時だ!


 『ディバイン・アクアウォール。』

 「!?」


 輝く水の壁が私を守る、ラーさんの呪いを解除する!

 水路を流れる水から、水の体の狼が私達を囲む。

 さらにそこから少女が現れる。


 「...おや、また会いましたね。また私に操られにきましたか?」

 『黙りなさい。二度もこの地下水路に貴方を招き入れたのは我の責任。えっと...ライラと...知らない小娘。我が守るからジッとしていて。』

 「は...はい!」

 

 ノクサスは笑う。


 「あっはっはっは!もうお忘れですか!?精霊も耄碌するんですねぇ!」

 『我は負けない、...はあ!!!』

 「っ!?」


 少女の体が輝き、衣が豪華になったというか、一目で強さが増したのを感じた。


 『えっと...八式宝石魔法術式:激流陣。この街に手を出した事を永遠に後悔なさい。』

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