050 第二十話 激突!バロンとブルーノ 01
ケンツ視点
「ケンツ!アリサさん!」
シャロンが頭上を見あげて驚いる。
「な!ケンツ、テメェー!」
「なんで空に浮いてやがるんだ!?」
シャロンの視線を辿り、バロンとブルーノも俺とアリサに気が付いた。
三人の驚愕する顔を見て、俺は気を良くした。
ふふふ、どうだ驚いたか!ケンツ様の飛空魔法を!
今の俺は空だって飛べるのさ!わははははは!!!
「でもそれ、私の高機動飛空魔法ですけどね」
「うぐっ、おいアリサ、人の心を読んで水を差すんじゃねーよ」
だがアリサの言う通りだ。
これは例の無限魔法貯蔵に取り込んだアリサの高機動飛空魔法だ。
無限魔法貯蔵は他者からの攻撃魔法だけでなく、魔法と名の付くモノなら何でも取り込むことが出来るようだ。
さらにこの無限魔法貯蔵には、古の大賢者バンバラから説明されていない秘密があるのだが、それはまたの機会に。
今はバロンとブルーノを追い払わないとな。
― スタッ……
― スタッ……
俺とアリサはシャロンの前に降り立った。
「シャロン、無事か!?」
上から見ていた限り、シャロンが無傷っぽいのはわかっているが、念のため聞いてみる。
しかしシャロンは――……
「ブツブツブツ……」
「「 !? 」」
「なんかシャロンさんの様子が変です!心が壊れているようです!」
「な、なんだと!バロン、ブルーノ、テメーらシャロンに何しやがった!」
何と言う事か!
シャロンは心に異常をきたしていた!
何もされていないと思ったのに、まさか精神崩壊系の攻撃をすでにシャロンにしていたのか!?
俺はバロンとブルーノをギロリと睨んだ!
しかし、バロンとブルーノは、
「し、知らねーよ!俺達は何もしてねーし!」
「されたのは俺達の方だぜ!この鼻血を見やがれ!」
バロンとブルーノは止まらない鼻血をダラダラと垂れ流しながら訴えた。
なんだ?ムカつくやつらだが嘘を言っているようには見えないぞ。
どうなってんだ?
「ああ、シャロンさんは違うみたいです。幸せ過ぎて意識が飛んだみたいですね」
「へ?」
シャロンが何をブツブツ呟いているのかよくよく聞いて見ると……
「ケンツが……ケンツが『俺のシャロン』って言ってくれた……えへへ……『俺のシャロン』って……えへへへ……」
「…………」
シャロン、おまえこんな時に……
やはりあれか、一年間も放置した反動だな。ちょっと嬉しいことがあると簡単に精神が飛んじゃうんだ。
くー、可愛いぜシャロン!
よーし、シャロンの前でいいところを見せてやるか!
「おいアリサ、シャロンを見てやってくれ!バロンとブルーノはこの俺が倒す!」
「え、二人同時は流石にきつくないですか?……やっぱり無限魔法貯蔵の攻撃魔法で?」
まあ確かにアリサの攻撃魔法を使えばこんな奴ら一撃で屠れるかもしれないが、それは借り物であって自分の力じゃねぇ。
借り物の力じゃ気が治まらねー。
なんせこっちは今回の件だけじゃ無く、今までイジメられた恨みもあるんだ!
こいつらには自分の拳でぶん殴らねーと気が治まらねぇーんだよ!
「バロン、ブルーノ、腰ぎんちゃくだったおまえらが、シャロンを狙うとは随分大それたことをするじゃねーか。覚悟は出来ているんだろうな」
俺は指をボキボキ鳴らしながら凄む。
「何言ってやがる、紛い物のインチキ野郎!」
「テメー如きが覚悟とか片腹いてーんだよ!」
バロンとブルーノは、俺の事を完全に格下扱いしているのか、せせら笑いながら距離を詰めて来る。どうやら向うも拳で勝負するつもりのようだ。
「いくぜ!」
「おうっ!」
バロンとブルーノが拳を握りしめ一気に間合を詰めようとした!
「コオオオオオオオオオオオオオオ……」
しかしその前に俺は十分呼吸を整え……
「縮地法!」
― ブワッ!
「なっ!」
「ぬっ!」
俺は一瞬のうちに残像を残して超高速移動!
ブルーノの前に入り込み、
― ドスゥッ!
スマッシュ気味に繰り出した俺の左拳が、ヤツのボディに深々と突き刺さる!
「げはぁっ!!!!」
ブルーノは体をくの字に折り曲げた。
そして下がったヤツの顔面目掛けて、今度は渾身の右ストレート!
― ベキュッ!
「ぶばっ!?」
拳が顔面にめり込み、ブルーノはズルリと崩れ落ちた!
まさに一瞬の出来事だ!
「て、てめえ、今のは一体なんだ!?」
超高速移動であっさりとブルーノを下した俺の力にバロンは驚愕する。
俺が今使ったのは【縮地法】という技で、アリサの説明によると超高速移動術【縮地】をマスターする前の基本技らしい。
【縮地】と【身体強化】をマスターするには、強靭な肉体と独特の呼吸法が不可欠なのだが、幸いにも俺はその二つをアリサのレクチャー前からクリアしていた。
おかげで【縮地法】まではすんなりとマスターできたのだ。
そして身体強化も……
「身体強化1.5倍! はあああああああああ!!!」
― ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
身体がミチミチと力が漲り充実していく!
「な、なんだぁ、そりゃあああ!?」
明らかに気配が変わった俺に対し、バロンが過剰に反応した。
ふふふ、恐れおののけバロン!貴様はもうおしまいだ!
徹底的にぶん殴ってやるぜ!




