事情説明
「桜には話しましたが、暁祝二って言います。15歳です。山奥でじいちゃんと二人で住んでいたんですけど、3年前にじいちゃんが死んで、途方に暮れていたところで、異世界のアヴァロンに召喚されました。向こうは魔族と呼ばれる、異形の人類と一般的な人類が対立していて戦争をしていたんです。その戦争も魔族が優勢でそこで自分ともう一人が召喚され、現地の選ばれた勇者と呼ばれる人と戦争を終わらせるために各地を回り戦争を終わらせました。それが2年前です。そこから、今の今までこっちの世界に帰るための魔術を研究して、やっと今日帰って来れたんです。その帰るための転移魔術の影響で秋葉原周辺の魔素が枯渇してしまいました。そこは俺のミスです。向こうには魔素がどこでも濃いため、こっちがそこまで魔素が少ないとは思っていなかったので・・・。すいませんでした。ざっくりとここまでの経緯はそんな感じになります」
「先生、信じられないでしょう?しかも向こうでは賢者って呼ばれていて、こっちに帰ってきた目的はこっちの高校に入学する為だそうです。正直、私は設定盛り過ぎで考えるのが嫌になったので、先生の帰りを待っていたんです」
祝二の説明に桜はそう付け足す。三田は少し考え込むように口を開いた。
「なるほど・・・桜君は日本の陰陽道の名家出身だから詳しく伝わってないかもしれないけど、異世界は確かに存在している。私の祖母も魔術の家系でね、そちらの家系ではかつて魔女狩りが盛んに行われていた400年前頃にマーリンと呼ばれる大賢者が魔術師保護のために異世界を作り出しそちらに保護したらしい。今現在の魔術師は保護を断った魔術師の生き残りだと。勇者云々は何とも言えないけどね。暁君、何か証拠となるものはあるかい?」
「証拠・・・一応マーリンの手記は持っています。異世界を生み、大勢の魔術師、幻獣生物などを転移するのにどうしてもこちらの世界に残り魔術を制御することを手伝ったとされている方が何人かいた書かれていました。そのうちの一人はエルフの女性だったとか。エルフの寿命は平均1000年ですし、その人がまだ生きていれば手記を見せれば証拠になりませんか?そんな方に心当たりとか無いですか?」
「いや、それは・・・確かにエルフの女性に心当たりはある。一応エルフが現存していることは機密事項に当たるが。そもそもエルフを空想の存在とせずに話をする時点で、それは真実か、頭のおかしい奴のどっちかだ。ある意味信憑性は上がる。わかった。明日、今日の件を報告と共に合わせてあげるよ」
「先生、それって私は知って大丈夫な話ですか?」
「桜君なら大丈夫、協会の会長で学校の理事長のことだよ。君は昔からパーティーとかであっているだろう?」
「いや、大丈夫と言われましてもあの人がエルフだなんて知りませんでしたよっ!」
三田の軽い口調に桜は慌てて反論する。
「あの、ところで俺、本来の目的は高校入学なんですけど、教師である三田先生の方から入学はどうにかしてもらえたりしないですかね?」
「ああ、それもあったね。高校入学のために転移したのは本当だったのかい?向こうの世界の学校ではだめだったのかい?」
話を遮られて少し不貞腐れた表情の桜を横目に三田は祝二に確認する。
「そうですね、向こうの世界は戦争も多かったりしたので、こっちほど教育は充実はしていないです。識字率もまだまだです」
「そうか、学校入学は問題ないと思うよ。元々若い魔術師の卵の保護も目的としてるし、突然素質のある人間を受け入れたりもするから。まあその件も明日合うエルフの方が学校理事長なわけだから、一緒にお願いしてあげるよ」
思いの外、大ごとになった現代帰還だったが、何とかなりそうで祝二はホッと胸を撫で下ろしたのであった。