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魔石をみんなで食うぞー

市場から帰宅中のお父さんと俺。

少し疑問に感じたことができたので、それとなく聞いてみることにした。


「お父さん、収納魔法を隠すために買うのに普通のポーチじゃなく、なんでわざわざ収納ポーチを選ぶの?」


「確かに変とは思うだろうけど、持ち物検査とかが場所によっては必要になるんでな。

ちゃんとみんなが知ってる道具を使ってるように見せた方が気持ちは楽なんだよ。」


「持ち物検査をこの町でやるの?」


見たところ、特に物騒な様子は見れないけど


「この町の町長がいやなやつでな。

少しでも気に入ったものがあると物から町の民に至るまでコレクションのように集めては、飽きたらポイ捨てを繰り返すふざけた相手なんだよ。」

イライラしながら話すお父さんと同じく、俺も聞いててイラッとするほどゲスなやつだな。


「そんなわけで、ただのポーチと判断されてても収納ができる所を誰かに見られていたら町長の手下どもが来てさらっていき、二度と帰って来れなくなる。」


まさしく無法地帯である。


「じゃあ、僕たちが見た門番二人に金を払えと嫌がらせされたレダも、もしかして狙われてるんじゃない?早く帰ろうよ!」


「そうだな!少し急ぐが大丈夫か?」


「大丈夫!ちゃんとついていくから」


そう言って二人とも家路を急いで走っていく。

無事に帰宅してみると、母さんとレダ共に食堂でウリボアの前で「「うーん」」と悩んでいた。


…なにしてんだろう?


「「ただいまー」」


「あっ、お帰りなさい二人とも!」


「おかえりー!」


「ああ、何ウリボアの前で悩んでるんだ?」


「そうそう!実は解体してたら変な色の石が体から出てきたのよ。」


「あっ、お母さんそれ魔石だよ?」


「えっ!これがそうなの?結構小さい物なのね。」

そこには紫色の丸い石があった。これこそ、俺が初めて食った魔石なのである。

「ちょうど良いや。三人ともこれを食べて試しにスキルを身につけてみてよ。」

俺はそう言ってみんなに勧めるが…


「こ、これ固そうに見えるわよ?」


「俺は、食えそうだな」


「レダにはおっきくて入らないよ~」


確かに、俺もうっかり肉と一緒にガリッと食って分かったけど固かったな…歯が折れるかと思った。


「じゃあ、三人がかじれる大きさに切ってみるね。」

そう言ってから左手で魔石を押さえつけて、右手でナイフを構えてすっと切れ目を入れてみる


スパッ!


思ったよりすんなり切れたので、半分はお父さんに渡して後の半分を更に切る。

器用さが働いてて良かった


ガリガリ! ペロッ、ガリ!


「おっ!思ったよりいけるなこの味」


「あむっ!レロレロ…ええ、本当ね」

お父さんとお母さん、なぜか顔が赤く染まってる?魔力に当てられたとかかな?


ペロペロペロペロ


レダはというと……


「お、おいしい~」

トロンとした目で、美味しく飴をなめるように食べていた。

すぐには噛めないだろうけどなんというか、色っぽい。


俺の場合は生肉ごと食ったせいで気づかなかったけど、甘かったのかな?

見てると俺まで食べたくなりそうなので、一度俺のステータス画面を確認する形で誤魔化しとこう。


ヴォン!


ナルガス レベル5


HP3000 MP150 スタミナ3000

攻撃力500 防御力300 

素早さ3000 器用300


ユニークスキル

オーバーセンス(H)

オリジナルスキル

神々の智恵(I)


習得スキル

回避F 爪攻撃G 斧F 解体G

罠師H 逃走F 毒耐性I

麻痺耐性I 風魔法H

収納魔法F(↑) 剥ぎ取りG

ナイフF(↑) 魔石喰らいG

モンスター喰らいH サーチG(↑) 鑑定I

ステータス閲覧G (↑)オーラ視(D) 

New! 空間操作H New! 威圧H


称号

猫を愛する者 復讐者

エスケープマスター

駆け出しサバイバー 狩人 隠密者

奇襲の名人 罠名人 回避の達人

ウリボアの天敵 木こり


 おお!なんか熟練度が少し上がってるし、何故か新しいスキルが出てるぞ?

あの時以来魔石を食った覚えは無いんだが、この空間操作ってやっぱあの時思い付きで何となくできたやつか。

魔石を使わなくても手に入るものもあったとは、もったいないことをした。


この威圧ってあれかな?門番達に怒りを向けた時に出してた殺気に近い感じの。

行動の一部もスキルとして扱われるようになるのなら、行動次第では無敵になってあのゴブリンどもを‼︎…っは!いかんいかん、また怒りが押さえられなくなるところだった。家族の様子は……あれっ?



「「「ブルブルブルッ!」」」

えっ!なんでみんな俺見て怖がってんの?


「な、ナルガス?お前どうしてそんな怖い顔になってたんだ……ガクガク」


「ナルガス、どうしたの?……ブルブル」


「ふ、ふえぇん‼︎」


「えっ?えっと。ゴブリンの話を前に聞かされた時から、時々こうなってたんだけど。」

まあ本当は、赤ん坊の頃からなんだけどね。


「ナルガス、ごめんなさい。こんな風に思い詰める話をお母さんはあなたにしてたのね……」


「⁉︎お、お母さんは悪くないよ!僕が勝手に怒ってたんだから!」


「……すまん、ナルガス。俺がお前たちを庇おうと一人残った後も、ろくに安心させてやれなくて」


「お、お父さん‼︎」


「お兄ちゃんはおに猫様にならないよ……ね?」

おに猫様ってなんだ?初めて聞く話だが、この世界の伝説かなにかか?


「…そう言えば、ナルガスにはしたことなかったよな。教会から伝えられている伝説を」


「ナルガス、おに猫様って言うのはね?遥か昔に何が理由かまでは語られてないけど、大きな怒りとその圧倒的な力で、私たち猫族を含めた全ての種族を滅ぼそうとしていたとても怖い存在なの。」


「えっ、そんなのがいたの‼︎」


「ああ。その頃は全ての種族が一致団結して長い戦いの末、ようやく封印することができたがそいつの念が今もこの世界のどこかで漂っていると言う話だ。」


「ゴブリンみたいな魔物が現れるのも、そいつのせいなの?」


「分からん。だが無関係とは俺は思ってない」


「ええ、あのとき私たちの町を襲ってきた魔物達は今までの奴よりも強そうに見えたもの。」


「戦争よりも怖くなるの?」

レダは震えが止まらないまま聞いてくる。


「……もっと、ひどくなる」

お父さんは重く話し、お母さんは両目をつむりうつむいて押し黙る。


「また、全ての種族が力を合わせることはできないの?」


「望みは薄いが、出来なくも無い。

もちろんこの猫族を束ねる王になるくらいの力と権威を手に入れれば、の話なんだがあの王達の傲慢さではな。」


「それにねナルガス、全ての種族は猫族が支配しているのよ?とても素直に聞き入れてくれないと思うの。」


「優しいひとが王さまになったらなぁ」

転生した俺でも、世界を救う英雄みたいな事は正直難しい。

神様からは確かに救ってほしいとは言われたけど、どうしたものか。


あっ、神々の智恵ってスキルがあるのを忘れてた。早速使ってみよう


神々の智恵 発動



 なんだろう?あたたかくて優しいなにかが降り注いでくるような感覚がする。


「…まことにあなた方に告げます。

今から家族揃って西の国・ゲラルドへ向かいなさい。

 この町にはすでにあなた方以外に正しきものは残らず、無法者だけが残ったのです。

神がこの町民の目を見えなくし、大いなる業火でこの一帯を滅ぼします。直ちに行きなさい」



「「「⁉︎」」」

俺の口が勝手にしゃべってた、というより誰かが使ってた感じがした。

今は、不思議がってる場合じゃ無い……


「ナルガス、今のは何なの??」


「お母さん、訳は後で話すよ。今は聞いた通り町を出よう?なんか怖くて嫌な感じがしてきた」


「お、お兄ちゃん~‼︎」

レダが俺に飛び付いて、とてつもなく怖がっている。お父さんやお母さんも得体の知れない恐怖を味わっているからか、俺やレダはもちろん二人の尻尾が緊張で膨れ上がっていた。


「行こう‼︎」

みんなうなずいて家を出た。


そこで信じられない光景を俺達は見た。

目の前には町の者から門番を名乗る二人を含め、家の周りを囲んだ状態で目が見えなくなったのか、隣り同士でぶつかり合っていたのだ!

サーチ能力をオフにしてたから分からなかったけど、これは尋常ではないぞ。


「クソ!なんなんだこれはぁ!」


「見えねぇ‼︎」


「あの家族はどこだぁ!」


「町長様が殺せと言った家族はどこよ⁉︎」


「ちきしょう!てめぇか!」


「がぁ~‼︎」


「あの家族はどこだ~!」



「おいおい、こんなことって……」


「私たちを殺すつもりだったの?」


「う、うえぇん」

門番達が町の奥に逃げていった時から、ずっと警戒するような目を町の人達から向けられていたのを俺は気づかないふりしていたが、全員が町長の命令を受けていたのか。

こんなヤバイ人達だったなんて知らなかった。


こうなったら家族それぞれがやみくもに飛び出しても、触れたら攻撃されてただではすまないかも知れない。

空間操作でみんなを運ぼう!それしかない


「お母さん!レダとお父さんも家に一度入って。この家を空間圧縮で縮めて僕が運ぶから早く!」


「ナルガス‼︎」


「僕ならこの人がいっぱいの所でも十分回避できるから、お願い‼︎」


「…分かったわ。二人とも早く入りましょ!」


「「(頷)」」

みんなが家に入ったのを見て、俺は空間操作を行う。

みるみる小さくなってポケットに入る大きさになりすぐに回収し突っ込んだ。


「みんな、全力で走るからしっかりつかまってて!」


 ドン‼︎


風魔法[ウィンドチャージ]で貯めた力を足に集めて、俺は強く地面を蹴り町の入り口まで突っ走る。

並びにオーバーセンス発動により高速移動中でも町民に当たることなく的確に避けて行くので、連中は気づいてない。


あっという間に町を出て、西の方角に走り続けていると後ろからとてつもない熱風と光が襲ってきた。

思わず後ろを振り向こうとした瞬間…「振り返るな!行け‼︎」っと、何故か神様に言われた気がしたので素直に従い、立ち止まることなく去っていく。


どこまで走ったかは分からないけど、西の国に行く前に深い森が目の前に現れた。

ここまで来れば大丈夫かなと恐る恐る後ろを振り向いたが、問題無さそうなので家を取りだし元の大きさに戻す。


中の様子を見ると……


「「「……………」」」

返事はない、まるで屍のようだ。ってゲームのセリフを言えるような状態で部屋に倒れこんでいた三人がいた。


「み、みんな…生きてる?」


「……ナルガス。私たちもう死にそうなぐらい気持ち悪いわ」

あわわわわわ⁉︎やっちまったぁ‼︎


それからみんなが回復するまで、俺は必死にケアをすることになった。

きつけ薬の作り方なんて分からないから、ひとまず一人ずつ壁にもたれさせてから楽にさせよう。


しばらくしてみんなの意識が戻ってきたので、外の空気を吸わせる事にした。


「ああ~、さすがに俺もこんな経験は初めてでうまく言えないが…ありがとう、ナルガス」


「えへへ」

お父さんに誉められたのは嬉しい。

後の二人も体を起こして近づいて来たので、無事みたいで良かった。


「「死ぬかと思った~」」二人ともまだ少しだけ顔が青い。


「ゴメンナサイ」


「あっ!良いのよナルガス、こうして無事に生き延びる事が出来たんだから。」


「そうだよお兄ちゃん!…あれっ?ねえ後ろのほうにでっかい煙があるよ?」


「「「煙?」」」

みんな一度顔を合わせてから見えるところまで少し歩いて確認すると、全員が驚きで声が出なかった。


「「「「……⁉︎」」」」

そこに見えたのは、ゼンドランがあった場所一帯からとても大きな黒煙。


これ、前世の昔話に悪者の町と化したソドムとゴモラの町が大きな炎によって滅ぼされたってのとおんなじ奴か?

神様は確かに「裁きは俺が下そう」と言ってたけど、ここまでの恐い光景だったのか…

じゃあ、あのとき使ったスキルで俺の口を使ってたのは…天使?


俺達はしばらくその光景を見続ける。

これからはレダのサバイバル特訓と、家族が魔石を食って得たスキルが何なのかを確認しながら、西の国に行くまで力をつけていかなければならない。


そしてこれが、俺達家族を中心に巻き起こる多くの種族との関わりと、次の王になる者が誰になるかを決める問題へと後に話が変わる事となる。

魔石を食べた家族に自分の所持しているスキルを見せる為発動した[神々の智恵]により、ナルガスの口を通して天の使い(?)が家族の住む家に迫っている危機を知らせた。

スキルを利用し終えたナルガスはかつて感じたことのない恐怖感を覚えて、家族の入った家を丸ごと縮小して愚民達の間をかいくぐり町を出る。


十分離れた所から家族達と共にゼンドランの方角を眺めると、天にも届くほどの巨大な黒煙が立ち込めていた。

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