町を見て回ろう
四人で家に戻り、今後の事を決めることになった。
まずはレダと一緒に4人で暮らすことの提案をしようと口を開きかける前に、父さんが先にその件を出した。
「二人にお願いがある。俺はレダを我が子のように大事にしてるしお前たちとももう一度一緒に暮らしたい。」
「あなた、相談するまでもないわ。私もナルガスも既に同じ気持ちでいたもの…ね?ナルガス」
俺は迷わず頷く。
「もちろんだよ。お母さんやお父さん、レダともずっと暮らしたい!」
「お兄ちゃん‼︎」
レダは目を潤ませて見つめてきた。
「二人ともありがとう!」
「レダ、情けない父さんですまない。」
「……そんなことないもん。ずっと一緒に居てくれた、心配してくれた。そんなお父さんを嫌いになれない」
「レダ、ありがとう」
お父さんは隣にいるレダを嬉しそうにだっこした。
レダと家族になりたいと言う願いも叶える事ができて、とても嬉しい。
「じゃあ、お母さんがいっぱい料理してあげるからみんなでこの家族を祝いましょ!」
「「さんせい!」」
「わーい‼︎」
「早速だけどナルガス、食材を出してくれない?」
「分かった。今出すね」
「ん?ナルガス、どこから出すんだ?」
「この収納魔法からだ…よっと!」
ドン!
普段通りにウリボアの大きい肉を台所のキッチンに出してみたら、父が唖然としていた。
「なんじゃこりゃあ⁉︎」
えっ、見ての通りただの収納魔法なんですけど?
お母さんとレダもキョトンとお父さんを見ていると次の瞬間……お父さんは血相を変えて両手で俺を掴んできた!
「えっ、なに⁉︎」
分からず混乱する俺に、お父さんからある衝撃的な事実を聞かされる。
「お前が使っているそのスキルは、国宝級に匹敵する代物なんだよ!そんなの持ってるのがバレたら、戦争の中に運び屋として死ぬまで一生こきつかわれてしまうんだ!」
「「「‼︎」」」
俺と母さん、レダもとんでもない話で強い衝撃を受けた。
「お兄ちゃん死んじゃうの?そんなのヤダ‼︎」
「ナルガスのスキルがそんな大変なものだったなんて!」
レダの年でも戦争に行ったらみんな死んじゃうことが分かってるし、母も事の重大さに顔を青くしてしまう。
「ナルガス、どこでそんなスキルを身につけたのか正直に答えなさい!」
お父さんの顔つきと雰囲気からして自分にとって危険すぎる話なのだと察したので、これはもはや誤魔化さないで話した方が良いなと判断した。
俺は狩りをするなかでモンスターを殺して食った事、その際に魔石をかじって食べたら魔力が上がった事、スキルを獲得するスキルポイントというものに後で気づいたが為に、収納魔法や他のスキルを獲得できた事などを正直に話した。
両親はもちろん信じられないと言った顔をしてたし、レダは訳が分からないまま聞いていた。
「……ナルガスが生まれた時からこの子はやんちゃなことをするんだろうなとは思ってたが、これは流石に思いもしなかった。」
「や、やんちゃなの?」
「あなたが今までやってきた事はもうやんちゃを越えてるから、どう言えば良いか私も正直わからないわ…」
「よくわかんないけど、お兄ちゃんはとっても強くなったってこと?」
レダの言う通り、俺は大抵のモンスターは簡単に倒せるようにはなったけどそんなに大問題だったんだ。
「ナルガス、お前はモンスターを倒せるようになってるが今後何をしていきたいんだ?戦争に使われずに済む手段を探す為にも、お前の考えは聞いておきたい。」
「えっ?えっと、冒険者になりたい……です。」
「そうか、それならば……よしっ!食べてから少しお父さんと付き合ってくれ。今からお前が使っている収納魔法を誤魔化す為に必要な物を買いに行ってから、一度狩りに出てみよう。」
「私とレダは?」
「できれば一緒に連れていきたい…が、ならず者が集まる冒険者ギルドにも行かなければならないからな。二人を連れていったら卑劣なやつがいないとも限らんから、大人しく家で待っててくれ。」
「えー!ヤダヤダ、レダも行きたい~‼︎」
「レダちゃん、さっきのやな門番さんたちみたいな人がもしギルドにもいたら私たち女は好きな相手と一緒になる前に汚なくされちゃうんだよ?そんなのはイヤじゃない。」
「……レダ、そんなのはイヤ。お兄ちゃんと一緒になれなくなるのはイヤ!」
「うん。えらいえらい」
お母さんはレダの頭を優しく撫でてから、早速調理に差し掛かる。
「ナルガスにレダ、二人の持ってるナオリ草を俺に預けてくれ。今のうちに薬の調合をしてから自分に服用しておく」
「「はーい」」
「よし……せっかくだから、二人とも調合の仕方を見てみるか?」
「みる!」
「みるー!」
うまく調合を覚えれば、薬草とか解毒草とかを上手く加工して回復薬とか解毒薬が作れるスキルが身に付くかも!
お父さんは慣れた手つきですり鉢でナオリ草をすって草のエキスが出るまで潰していく。
次にすりつぶしたナオリ草は水を通す紙に移され上部分の開け口をしっかりひねり、小さい糸で縛る。
最後にお湯を使うとの事なんだが、目の前にあるのは水が入ったままのヤカンが置かれているだけだ。
「あちゃー、火の素を買い忘れていたか。しょうがない……[ファイア]」
小さい炎がお父さんの掌から現れて、ヤカンの下にある木材に引火し火がついた。
かっけぇ!流石異世界だ‼︎俺はとても興奮して見ていた。
しばらく眺めているうちにすぐお湯がわいたので、紙に包んだナオリ草を湯に浸けると香ばしい匂いが漂ってきた。
コップはガラスではなく土でできたものだから、熱で崩れたりしないので冷ましてからゆっくり飲んでいく。
「うー苦い!……だが効くなぁ」
俺の持つスキル・オーラ視で見てると良く分かる。
お父さんの周りに濁った水のような色が薄れて、綺麗な青になっていったのだ。
「二人のお陰で元気になったよ。ありがとな」
「「えへへ!」」
二人して照れ臭そうに笑うのであった。
「みんな~、そろそろご飯よ〜!」
「「はーい!」」
「もうできたか」
今回はウリボアの肉が、まるで七面鳥の肉みたいに細かく食べやすい大きさに整えているから食べやすそうだ!
それではさっそく……いただきます。
うん、とても美味しい‼︎
「そう言えば母さん、先程話に出ていた門番二人とはなんのことだ?ここにはそんな決まりはないはずだが。」
えっ、あのクソ門番達は嘘を言ってたのか?じゃあ、なんだったんだろう。
「うん、レダと私に嫌がらせをしてきたんだけどね?ナルガスが一睨みしたら完全に怯えて街の奥に逃げて行ったの。」
「えっ?えっと……ナルガスがか?」
「……ええ、信じられないでしょうけど。」
「あのときのお兄ちゃん、とても怖かった」
「レダまで言うとは…その門番と名乗る連中の事は気になるが、先にご飯を食って市場にまず行くとしよう。そこで収納ポーチを買った後は、ナルガスを冒険者ギルドに登録してもらう!」
「ちょっとあなた!5歳のこの子でも登録して良いの?」
「ああ、ここの町はもちろんそうだが今じゃどこの国でも子供から老人まで、冒険者として活躍できる力がある奴はみんななっているからな。」
「レダも、やっぱり一緒に行きたいよぉ。」
「レダ!」
「ッ⁉︎」
お母さんの一喝に固まるレダ
「……レダ、お前の気持ちは分かる。
だが今のお前には戦う術も一人で生き延びる事もできないだろう?本当に行きたいのなら、まずはサバイバルスキルだけでも身に付けるんだ。」
「グスッ……分かった。じゃあお父さん、お母さんとお兄ちゃんも私にもサバイバルのやり方を教えて!手伝わせて!」
「「「………」」」
お母さんとお父さんは少し迷ったけど、俺はレダの為にしてやれることはできるだけしてあげたいと思う。
「レダ、お兄ちゃんもできる限り教えるから安心して。あとお父さんとお母さん!」
「「?」」
二人は何事かと首をかしげる。
「魔石をみんなが少しで良いからかじって食べてみて?そうすれば得られるスキルがわかるかも知らないから。」
少なくとも手に入れたスキルはちゃんとモンスターを倒すとかいろいろしないと、熟練度があまり上がらないけどね。
「よし!ここはナルガスの提案に乗ってみよう。もう家族を守りきれない不安に潰されて生きるのはまっぴらだ!」
「私も、あなたが一緒なら何でもやれるわ!」
「お兄ちゃんと一緒になれるならがんばる!」
三人ともやる気いっぱいだ。
「ならまずは、最初に決めた通りナルガスの為に収納ポーチを買ってくるがギルドに行くのはレダがサバイバルを学んでからにしよう。その代わりしばらくは、みんなで森に行って暮らす覚悟はしてくれ?」
「それだったら私たちがいた小屋に行きましょう。そこなら私たちが暮らせるくらいの食べ物を集められるわよ?レダの練習も兼ねてね」
「ありがとうお母さん!」
レダはとても嬉しそうだ。
「じゃあすぐ戻ってくるから二人は教会の中で待っててくれ。」
「分かったわ。」
「はーい!」
「行こう、ナルガス」
「はい、お父さん!」
市場にお父さんと足を運んでみると、すごい数の猫族客達で溢れていた。ただ気になる事が一つだけあって、時々こちらを見て警戒してる人達を見かけるのだ。
ウン……キニシナイキニシナイ。
手頃な商品が並んでいるエリアに来たとき、ちょうど手に取ったポーチみたいな物を父が見て言う。
「おっ!すごいなナルガス、それが今俺たちが探している収納ポーチだ。別名異次元ポーチとも呼ばれている」
「すごい便利なんだね?いくら中に入るのかな」
「そうだな。嘘か本当かは知らないが、教会にある大きな像を取り出したやつがいたとかなんとか……」
「なんか聞いてるだけで、すごく重そう…(そんな前世の昔に放送されていたという、某アニメの猫型ロボットみたいなことするやつがいたのかよ)」
あ…俺収納魔法でそれっぽいことやってたか!まあ細かいことは無しにしよう。とりあえずこのポーチを買わなきゃ。
「じゃあお父さん、これにして良い?」
「ああ構わないぞ。どれどれいくらかな?」
異次元ポーチ 値段:1000ゴールド
「「……え」」
えーっと、確か1ゴールドが日本で言う100円の単価だったからこれひとつで10万円相当の金額ってかぁ?
神様からもらった金を使いたいけど、子供がいきなり大金を表に出すとお父さんも周りの通行人も間違いなく見ちゃうし、どうしよう。
「お父さん、大丈夫?」
それとなく聞いてみよう。もし厳しかったら一旦自宅に帰ってから換金できそうな素材を出して売ってもらえればいけるはず。
「だ、だだだいじょうぶだとも⁉︎」
どう見ても大丈夫な顔じゃないな〜。
「お父さん、一度帰ってから考えよ?一応素材になるモンスターならウリボアとかはあると思うし。」
「そうだな、帰って母さん達にも言ってみよう。」
こうして、いざ買い物に来てはみたものの思いのほか高いので家に戻る事になった。
まずは、モンスターの剥ぎ取りをするために家族がいる家に戻るとしよう。
ついでにレダにも教える機会ができたから、ちょうど良いかもしれない。
だが、この時はまだ俺たち家族に襲いかかる災難に気づいていなかった。
尻尾巻いて逃げた門番を名乗る二人組の上に立つ者が企んでいる物事によって、家族の運命は大きく左右される事となる。
ナルガスの収納魔法をカモフラージュする為彼の父と市場に向かったナルガスだったが、破格の値段で売られていた為一度帰宅する事に。
この時、かの家族を取り巻く者達の存在が密かに動き出していた。
改稿したにもかかわらず、まだ直し足りない所が次々と見つかって自分の未熟さを痛感しております……
こんな未熟者の作品ですが、今後もささやかながらの評価とコメントをいただければモチベーションを保つ事ができますので!
どうぞよろしくお願いいたします。