救援
俺は改めて、ミアさんと狐の受付嬢…ロアさんから事情を聞くことになった。
「取り乱してしまい、本当にごめんなさい!こんな緊急性のある危険な依頼を頼めそうな方々は既に別の依頼に向かっていて……この緊急依頼に参加してくださる方が誰もいなかったのです!」
「そ、それであんな状態に…」
「はい……それで、このウッドソルジャー10体討伐の依頼を持って来られたのはもしかして…」
「まあ、受けるつもりなんだけどどんなモンスターなのか分からなくて
最初この人に聞こうとしたら、俺がギルドカードと名前を言うまでは怪しんで教えてはもらえなかったもんだから…」
「あ、あわわわ‼︎」
あらら、真っ青な顔が今度は真っ白に…
「へぇ〜そうなんですか?…ロア〜」
こ、こぇ~~‼︎
「ひっ…ひゃい‼︎知らぬ事とは言えも、申し訳ございませんでした~!」
「ふぅ、まあ良いでしょう……私もナルガスさんの特徴を伝えるものを持っておりませんでしたから、これ以上はあなたを責めようがありませんからね
あっ、そうでした!ナルガスさんに改めて紹介致しますね?彼女は一週間前から入った新人の受付嬢・ロアと言います」
「ロ、ロアです!先程は失礼しました⁉︎」
ゴン!っとイスの角に頭をぶつけてしまうほどの勢いで、頭を下げて自己紹介と涙ながらの謝罪をしてくるロアさん。
痛そう……
「も、もう気にしてないから大丈夫…」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
だからゴンゴン当たってるって~~‼︎
「す、すみませんナルガスさん!彼女は結構神経質なものでして…」
「お、俺は大丈夫です!それでモンスターの事なんですが…」
「は、はい!そうでした……ウッドソルジャーは木のモンスターで現在はここから少し離れた、南の森に潜んでます
やつらには手足が生えていて素早く移動したり、目眩ましの為に相手に砂をぶつけて混乱した相手をひっかき回し、力尽きた冒険者を集団で取り囲み己の養分にしてしまう恐ろしいモンスター達なんです
これまでにたくさんの冒険者さん達が挑んで行きましたが、誰一人として帰ってきませんでした…」
「それは、確かに恐ろしい話だね…だけど、なんでそんなモンスターがこのゲラルドにいるの?そいつらは昔からいたのかな?」
「はい!元はとても大人しくておおらかな性格をした無害モンスターとのでしたが、一月前から突如被害が目立ち始めて今に至っています
上級冒険者さん達に頼んでも、視界を遮られては太刀打ちできないと言われ断られて行く始末で…」
「それで俺がたまたま来たのでお願いしたいと……そう言うことですか?」
「はい」
まあ、ちょうどライさんから教わった方法を試すのにちょうど良い相手かもしれない。
「分かりました…この依頼引き受けます」
「「ありがとうございますー‼︎」」
「二人とも!そんな頭を下げすぎてたら今度はテーブルに頭が当たっちゃうよ⁉︎」
こうして、俺はこの緊急依頼を受ける事にしたのだが…下ではすでに俺が依頼を受けたことを知った冒険者達が、心配そうな目を向けてきた。
「み、みんな…すごい見てくるけどどうして?」
「い、いや…ナルガスが強いのは分かってはいるのだがな?なにもそんな危ない奴を選ばなくとも」
冒険者達「うんうん…」
ここにいる冒険者達は全員、件のモンスターに対しての恐怖を知っているのかな。
「ま、まあそうかも知れないけどさ!誰かがやらないといけないんでしょ?俺もちょうど試したい戦いをしてみたかったからやってみたいんだ!
大丈夫…どうしても不味いって思ったら一目散に逃げるから!」
「そ、そうだな?とにかく気を付けて行くんだぞ」
「もちろんだよギウルさん!行ってくるね」
俺がギルドを後にするまで、彼らはこちらの後ろ姿を見守っていたような気がする。
まあ、多分大丈夫かなと思う。
念のためにドルファ達の所に寄って良い武器とアイテム類を買っておけば、なんとかなりそうだと考えてるから。
「…ごめんくださーい」
「はぁーい!」
あっ、この声はドーランだな。
「ナルガス様いらっしゃい‼︎早速来てくれたんだ」
「うん…実はこれから緊急依頼に行くんだけど、ライさんが使う感じの武器が欲しいんだ!刀って言う武器なんだけど知らない?」
「あっ、ライさんから聞いてるよ?もう作り方も覚えたし、ちょうど試しに作ったのが一本あるから良かったらどうぞ!」
ドーランから試作型の刀を手渡されて、試しに鞘から抜いてみた。
「うわ、すごい切れ味良さそうだな!…って事は代金も高いんじゃない?」
「はい!商品として売る場合だと1,000ゴールド(10万円)なんですが、これは試作中なので100ゴールドで手を打てますよ?」
商売人の顔をして接客応対にあたる彼女の表情は、すごく生き生きしているようだ。
「おお!すっかり職人と商売をこなせてすごいや…はい、100ゴールド」
「確かに100ゴールド頂きました!…こんな素敵な仕事ができるようになったのはナルガス様のおかげだよ?本当にありがとうね!」
「どういたしまして!じゃあ次はドルファの所に行ってくるよ」
「あっ!だったらこのメモ書きをついでにドルファに渡してくれるかな?それに彼へ頼みたい事が書かれてるので!」
「ははっ、分かった!ちゃんと渡しとくよ」
俺は腰に試作品の刀を腰に差してから、ドルファがいる道具屋に足を運んでいった。
「やぁナルガス、待ってたよ!」
「ドルファ…もう立派な職人だな」
「あはは、ありがとう!まだまだこれからだけどもっと頑張るよ!
それで、今日は何が欲しくて来たの?」
「ああ、実はドーランにも伝えたんだが…」
俺は簡単に、緊急依頼のウッドソルジャー討伐を受けてドーランからも試作品の刀を購入したことを告げた後、彼女から預かったメモ書きを手渡した。
ドルファは最初「なるほどなるほど!」とメモを見て頷いていたんだが、最後辺りは突然顔を真っ赤にしていた。…もしかしなくてもそういう事だ。
「え、えっと…うん!ウッドソルジャーと戦うのなら、これを使ってもらうと良い」
「これは……目薬?」
「そう!後はこの万能回復丸薬…一つ食べただけで状態異常も体力も戻る、優れものなんだよ‼︎」
「す、すごいなそれは…でもとにかく今は落ち着いてね?」
一度熱くなると、たくさん喋るからなぁ……
「おっとと、ごめんごめん!力作だったもんでついつい……そうだ!ついでに聞くけど、あの北の国で手に入れてきた木材ってまだ余ってる?」
「あるよ?なんならここで出そうか」
「うん、お願い!」
「それじゃ…よいしょっと!」
収納魔法をからそれを出すと、邪魔にならないところにひとまず置いといた。
「これこれ!この木材があれば画期的な日用品が作れるよ」
「日用品かぁ、武器に使わないで済むのなら大歓迎だよ!間違っても俺が作った扇子だけは作っちゃダメだからね?
あれは町一つ吹き飛ばせるくらいの風を生み出すんだから!」
「え?あの小さいのが⁉︎……嘘みたいな話だけどほんとなの?」
「本当だよ…俺は二度とあの二つと同じ物は作りたくない」
「わ、分かった!扇子はやめとくよ…」
「ありがとう…それで、この二種類全ての代金はいくらになるの?」
「うん…合計で120ゴールドだよ」
「お、思ったより高いね…はい!120ゴールド」
「そりゃ、どちらもエリクサーを素材に使った商品だもの!そのくらい元をとらなきゃ」
「そうか…ありがとう、確かにいただいたよ!」
「気をつけて行ってきてね~」
「おう!」
意気揚々とゲラルドを出た俺は、聞いた情報通り南の森へと足を運んでいった。
「せめてウッドソルジャーを見つけるまでは、サーチとオーラ視を使っておこう!
この武器にも多少は慣れておきたいし…ね!」
俺は振り向き様に、ファングラビットを一撃で切り伏せた。
刀についた血のりは勢いをつけて振りきるときれいに飛んでいき、切っ先の向いた方向へと勢いよく飛んでいく。
「ヤバイ…めっちゃ強いしカッコいい‼︎もっと早く気づいとけば良かった!」
俺が刀をもってはしゃいでると、例のウッドソルジャーらしき影達が目の前に群がってきた。
「キキキ!」
「エサ、エサ」
「クウ、クウ」
「物騒すぎる事を言いながら来たなぁこのモンスター達は……うっ‼︎」
俺が慌てて目を閉じると同時に、盛り上がった土を俺に目掛けてぶっかけてきた!
確かに軽い量の砂じゃなく質量が少しある土をかけられた日には、目も口も開けられないだろう。
「試してみるか…全てのスキルをオフにして、訓練で身に付けた成果を!」
俺は刀身を一度鞘に納めて、朝の訓練と同様に目を閉じたまま集中力を高めていく。
「感じる…連中の動きかた、攻めと逃げのパターンが手に取るように分かるぞ」
最初に動いたのは近くにいたウッドソルジャーだが、撹乱のつもりなのか通りすぎてゆくだけ。
俺はまだ動かない…間合いが届くはんいではなかったからだ。
2体目以降も、最初の奴と同じで近づいては離れていく。
5体目から、軽く引っ掻く程度の攻撃を仕掛けてきたんだが、どうも先端には毒があるみたいだ。
おそらくそれもあって冒険者達は一人残らずやられていったんだろう。
俺は少し毒耐性があるからたいていは平気だが、問題はこいつらを一気に殲滅しないとダメって事だよな。
待てよ?確かこいつらは力尽きた冒険者を囲むって言ってたっけ。じゃあ…
「うっ、ぐっ……」
いっちょ芝居で奴らをつるとしようか。
「キキ!キキ!エモノ、エモノ‼︎」
「クウ、クウ!」
やつらが根っこをこちらのそばに這わせてくる。
俺は一瞬の隙を突くために、じっと待った。
「(まだだ、まだ……ここだ!)ふっ‼︎」
「ギアアアァ⁉︎」
俺は木の根っこごと、奴等の本体を回転切りの要領で叩ききってみせた。
「ギ、ギギィ~~!」
「まだ一体残っていたか…逃がさないぞ!」
「待ってください‼︎」
一気に距離を詰めて一閃を放つその寸前、大きな声で俺を制止する存在がいた。
「誰だ‼︎」
「わ、私は森の精霊・コロッポと申します!お願いです…彼を見逃して下さい」
姿を現したのは、レダの背丈よりも更に小さくたくさんの葉っぱを体に巻き付けて服を作ったような格好をした、二頭身姿の女の子だった。
「見逃してとはいっても、俺もこいつに食われそうになってたんだが?」
「ギ、ギァ…」
怯える相手を間違えてない?
「ハァ、不意打ちで俺が後ろを向いてるときに攻撃をしないってそいつが約束できるんなら見逃すが、またこんな事をするようなら流石に見逃しきれないよ……何か事情があるの?」
「ギゥ…」
コロッポいわく、『彼』が彼女に向かって何かを呟いてるように見えた。
「実は、私たちの住む所は南のスライム王様の近くなんです
ただ、あの方達が暮らしてる森よりも私達が暮らしてるのは山脈が見える所でして、かなり寒い所なのですが…」
「うう!寒いところは俺苦手だなぁ…と、とにかくそこで何があったの?」
「はい…そこの近くに湖があって、私たちは昔からよく水のみ場として利用をしてたんです
それが最近になって濁った色をした水が山肌の窪みから染み出てきたせいで、それを含んだ湖の水を飲んだ彼らと私の仲間達は、他の種族の体液を吸うようになりました……」
なんか、聞いてるだけでもとんでもなく危険な感じの話だなと俺は思い始める。
「それはつまり、その水の原因が何かを知って解決すれば大丈夫になるって事なんだよね?」
「はい…あの、こんなお願いをするのは図々しいとは思いますがどうか私達を助けて下さい‼︎」
「オネガイ、ジマズ…」
「お前、喋れるんだ…」
「彼はほんの少し飲んだだけのおかげだなのか、まだ理性が残っているのです
どうかお願い致します……私達の集落を助けて下さい!」
「本当はこんな大事はギルドに先に報告しておかないといけないんだけれど、そんな余裕は無いんだよね?」
「はい……」
「…分かった!じゃあせめて、南のスライム王様に会わせてくれ
そこから俺の代わりにゲラルドのギルドとかに伝えてくれる相手を見つけたい!」
ついでだし、今のうちに解毒魔法を使おう。
「はい!喜んで案内致します」
森の精霊・コロッポに南スライム王の元へと案内されることになった俺。
導かれるまま歩き続けていると、森のなかで少しだけひらけた所に出た。
その時、たくさんのスライム達が一つに合わさり、俺の身長と同じ高さになってくれた。
「ナルガス校長…こんなところまでどうされたのかな?せっかくなので改めて名乗らせてもらおう!私は南森に住まうスライム王のエル・ド・ミルマー」
「南スライムの王様…エル・ド・ミルマー様
先日はお越しくださり、ありがとうございました!実は、お願いしたい事がありまして…」
俺が話した内容は、今回ウッドソルジャーの討伐に来たが10体のうち最後の一体だった『彼』を、コロッポが見逃して欲しいとかばった事。
さらに彼らが住む所の調査をしたいので、俺の代わりにゲラルドに戻り事の次第を伝えて欲しいことを告げた。
「そういうことならば話は早い…ちょうどこちらも深刻な状況になってきたのだよ
我らの中からも狂暴なスライムが出始めたのだ!
原因を突き止めてくれると言うのなら是非ともお願いしたい‼︎
ギルドにはその事も含めて救援要請をしておこう…どうか頼んだぞ」
「はい、分かりました!場所はここらから更に南にあると言われている、あの白い山で良いですか?」
「ああ間違いない!手間をかけて申し訳ないな」
「いえいえ、元々一人で複数の相手を倒す訓練のつもりでしたから…でも、できれば暖かい服が欲しいかも」
「うむ…すまないが我らは服は持たないので希望通りの物を提供することはできない
ただ、暖を取るための生活魔法[ウォーム]の修得をさせることならできるぞ?」
「ぜ、是非!お願いします‼︎」
「ふふっ、やはり猫族には寒さは堪えるということか……では目を閉じるが良い」
「あはは…はい」
暖かい何かが、体の中に入っていくのを感じる。
「よし、これで使えるはずだ!試しに今使ってみると良い」
「ありがとうございます!では早速使いますね……[ウォーム]」
暖かい風が、俺の体を優しく包み込んでいく。
とても気持ち良くて、癖になりそうだ…
「ふむ、気に入ってもらえたようで何よりだが他に何かあるか?」
「そうですね、差し支えなければルードスにも救援をお願いします!何も起きないと思いたいですが念のため…」
「分かった!そちらには私自身が赴こう」
「ありがとうございます!では行く前に一つだけ…コロッポ!そこのウッドソルジャーをここに」
「えっ?は、はい…さぁウラッキー?」
「ギィ」
「そのままそこにいてね?うまく行くかは試してみないとだけれど…ケアルー!」
ものは試しに解毒魔法・ケアルーを唱えてみた。
効果はあるだろうか?
「ギギィ!ギ、キ…キィ!」
「「毒が解けた⁉︎」」
コロッポとミルマー様の反応がかぶるほどに、驚く事態となった…試した俺もだけど。
「あ、ありがとうございますナルガスさま‼︎おかげさまでウラッキーが元に戻りました…」
「いやいや、まさか本当に解けるなんて思わなかったけど、助かって良かったよ」
「キィ!キッキィ‼︎アリガトウ…ウレシイ‼︎」
「元に戻れたのなら、ひとまずは安心かな…でも、俺以外にも解毒魔法のケアルーを覚えてもらわないと、一人だけでは無理そうだ」
「わ、私達も持ってます!そうですよね?南の王様」
「ああ!これならばギリギリで引き留めることができそうだ……調査は君にお願いしたい!我らも救援が来たらかならず向かおう!北の王にもこの件は伝えておくのでな」
「ありがとうございます!じゃあコロッポ、案内してくれるか?」
「はい!こっちです‼︎」
まさか討伐依頼から救出依頼に変わるとは……とナルガスは心の中で呟きながら、南に見える白い山のふもとへと向かい、元凶を断ちに行くためコロッポと共に進む。
毒に侵されていたウラッキーとミルマー王達に見送られ、二人は目的地まで向かうのであった。
うう…深夜2時過ぎまで起きて推敲するのはやっぱ眠い(-_-)zzz




