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5章 問題だらけの校長先生

開校式が無事に終わった…かなり緊張したけれど、なんとか乗りきれたぞ。


「よく頑張ったなナルガス!なかなか良かったぜ」


「ジグルさんありがとう…なんか、緊張しすぎてどっと疲れた〜」


「ふふ!お兄ちゃんが[僕]って言うの久しぶりに聞いたかも」

にやけ顔で俺をからかってくるレダ。


「レ、レダー⁉︎」


「キャハハ!」


「あ…校長はナルガスだけれど、教師は誰にお願いすれば良いのかしら?」

お母さん、俺も全く考えてませんでした。


「それとレアナさん、どんな内容の授業を生徒達に教えたら良いかなんて一切話題にでなかった気がしたんだけど……これって大変なんじゃない?」


みんな「あ」

言われてみたら本当にそうだ!どうしよどうしよ⁉︎


「落ち着いてよナルガス兄さん!開校式がすんだからと言って、別に明日からスタートできる訳じゃ無いんでしょ?」

一人慌ててキョロキョロしていた俺をみて、宥めるように語りかけてくるコルナ。


「そ、それもそうか…とりあえずまずは、教師の候補者を探さないと!

国王様にミアさん、誰か専門の事で教えてくれる種族ってゲラルドにもいますか?」


「ごめんなさい、あまりゲラルドでは誰かに何かを教えている方の話は聞かないんです

その代わりと言っては変ですが、これは私個人の提案です……ここにいる子供達と町の大人達が先生となって、協力して教えてみてはいかがでしょう」


「子供が先生⁉︎…って、子供なのに校長になった俺が驚く事でも無いか」


「おお、それはなんとも楽しそうじゃのう!ワシもその提案に乗るぞ?」

国王様が言っちゃったんなら、もうその方針で行くしかないね。


「わかりました…俺達も教えられる内容の授業を考えてみます!」


「うむ!期待しておるよ?ではナルガス校長、いつ入学生達を入れたいと考えているのだ?」


「は、はい!早ければ今日からざっと一週間後……もう少し考えたい事ができた時などは更に一週間くらいまでには開きたいです」


「分かった、ワシもそのように国民達にも伝えておくとしよう…楽しみだのう!わははは‼︎」


「ではではナルガスさんに皆さん、私達はこれにて帰ります」


「あれ?ミアさん乗り物無しで良いの?」


「ああ、大丈夫だよナルガス!僕たち新しい乗り物を作ったもの

それに僕もドーランも空間操作は手にいれてるから、いつでも運べるんだよ?」


「そうだったのか!じゃあ今から走るのは…」


「私ですよ?ナルガス様!」


「ドーラン‼︎確かに君も走るの速いけど、移動中にモンスターが襲って来ないの?」


「平気ですよー!」


「安心してナルガス、ドーランはね…重たいハンマーを片手で振り回して敵を蹴散らしながら進むから!」


「えっ⁉︎そ、そうなの?」


「ウフフ~!ナルガスは外に出ることが出来なかったから知らないだけだよ~」


「そうなの?みんな」


全員「うんうん」


「ほぇー…」

俺は思わず、呆気にとられてしまう。


これなら近いうちに送迎の仕事が活躍する日も早く来そうだな。


「「じゃ行ってくるね!」」


「ああ、二人とも。行ってらっしゃい!」

二人が収納ポーチから、2台分の乗り物を出してきた。


「おお!すごいいっぱい乗れそう…」


「まさかとは思うけど、ドルファも走るの?」


「ふふ、大丈夫よナルガス!今回は足の速さに自信がある冒険者の猫族女性が一緒に運んでくれるらしいから、帰りは大丈夫みたい」

サラティの言う通り、女の猫族が小さくなった乗り物の一つを片手で持ち、ドーランも俺達に手を振ってから町を出て行った。


「よし!じゃあ、俺たちも早速それぞれが何を教えたいのか考えてみよう!でもその前に……お腹がすいちゃった」

俺の一言を聞いて、町の皆が一斉にどっと笑い始めた!


だって朝起きてから驚きと緊張の連続だったんだから、しょうがないだろ?


「あはは!そうだねお兄ちゃん…もうお昼の時間だものね」

こうして一度俺達は各自で昼食をとり、一息ついてからジグルさんの家に町民が全員が集まった。


「さて、いよいよ学校の授業について話し合う訳なんだが…誰かやってみたい事はないか?」


「ジグルさん、ウチ計算を教えたい!多分それくらいなら教えられそうだから」


「良いんじゃねえか!じゃあまず一つめはそれで決まりだな?あとはどうだ」


「じゃあ僕からもひとつ……簡単な字の読み書きならたぶん教えられるよ。」

エリオルが提案を出してきた。


「文字の読み書きってやつ、俺も知りたい」

ゴーフは、生徒として知りたいようだ。


「なるほどな…俺もそれは良いと思うぜエリオル」


「じゃああとは……魔法の使い方なら私かレダで大丈夫なんじゃない?」


「そうだね、私もそれなら教えられると思う!だったら二人で一緒に教えてみる?」


「うーん…できればそうしたいんだけど、私の相性に合う魔法の属性って限られてるからなぁ」


「そこは大丈夫だよ!まず最初だけは[魔法の使い方のきほん]だけ教えれば良いとおもう」


「そうよね、難しい事までしなくていいもんね」


「俺を含めてここにいるみんなも当然同じだけど、子供の覚えかたって誰も考えなかった答えが簡単に出てくるもんな?

だから、教えるときはいろんな見方を受け止めて行くとしよう」


「お兄ちゃんが言うと説得力はあるんだけれど……納得はしたくないんだけどなぁ」


全員「同感」


「えぇ~~‼︎」

正直俺自身としては腑に落ちないまとまりかたになった気がするけれど、こうして話し合えただけでもいい結果になれたなと思う。


そして、今日から一週間。俺にとって一番辛いと感じる出来事が毎日続くのだった。


「も、もう無理ー‼︎」


「無理じゃないよナルガス!僕もこうして付き合ってんだからちゃんと最後までやらなきゃ‼︎

立場で言うなら校長なんだし、字が書けなきゃいろんな所に知らせる事なんかできないよ!」

俺はここ毎日、エリオル先生(キビしい!)から文字の書き方を教わっていたのだった。


そしてもう一人の生徒…ゴーフも。


「ほら見てよ!ゴーフはもう一行の文まで書けるようになったんだよ?ほらほら、ナルガスももっと頑張って!」


「う、ううー…」

俺、こんなに勉強嫌いだったのかな?


「そんな耳と尻尾を垂らしたって、甘く見てあげないよ?何度それで僕から逃げてきたのさ」


「ご、ごめんなさい…」


「謝れるんなら手も動かす!」


「は、はい!」


「ナルガス、なまけるのが好きだな!」

がーん⁉︎ゴーフに…ゴーフに痛いこと言われた!


「くそう!や、やってやるぅーー⁉︎」

半ばやけくそになってしまったが、そのおかげ(?)で相手に読んでもらえそうな文章を作ることだけはできた。


エリオル様様だな……ついでにゴーフも。


「…うん、上手に書けたね!ナルガスもちゃんとやるときはやるじゃないか」


「あ、ありがとうエリオル…」

これ、エリオルは想像以上にいい先生になるかも?


開校式の日から約3日…やっと字がまともに書けるようになったのは、エリオルのおかげ以外のなにものでもない。

この3日間、こうして字の勉強だけではなくライさんやジルカさんを始め、両親達にみっちり言葉遣いの作法やら、お辞儀の仕方。

更には計算の仕方までもシエッタに教えてらう毎日だった。


猫族だからか、それとももとからなのか…こうも毎日やることが多いとどうしても抜け出したくなって、周りに何度も迷惑かけちゃってる事については少し反省している。

無事に字を書く練習が終わったので、今度はシエッタの所で計算の仕方を覚えなきゃ…


「来たねナルガス…今日は!に・が・さ・な・い・よ‼︎」


「ハ、ハイ……」

ブルブルブル


「うん!じゃあおさらいからね?まずはこの…」

こうしてみんなが俺に色々教えてくれてるのって、本当に恵まれているんだなぁ…と深く実感しながらも、シエッタが言ってくれている要点をしっかりとおさえ、どうにかある程度の計算はこなせるようにはなった。


「うん…良くできました!いい感じに計算ができてるじゃない」


「あ、ありがとうシエッタ!少しはマシにはなったかな?」


「そうね、本当はお金の計算と言うより重さで判断する方法もあったりはしたんだけど…それは落ち着いた時にゆっくりと教えていくから忘れないで?」


「ハ、ハイ…」

勉強、やっぱ嫌いになりそうだ。


「オッケー!じゃあ、今日はお疲れ様♪」


「うん、ありがとうねシエッタ!」


「どういたしまして!」


「…あ〜疲れた~!今日はすぐに温泉に入ってからすぐに寝よう」

一人、のれんをくぐり脱衣所で服を脱いでいざ浴場に入ってみると……


「はぁー!」


「でやぁー!」

ある二人の掛け声とともに、どこから持ち出して来たのだろうか木剣と棍棒(どちらも俺が前回作ったやつ)のかち合う音が聞こえてきた。


その二人とは、ヴォルスとエリオルである


「へぇ、エリオルやるじゃねぇか!まさかそんなに上達してたとはな」


「ヴォルスこそ!あの決闘の時よりも動きが良いじゃないか!」

 なんだ?この胸熱展開…って言うか⁉︎


「「浴場で騒ぐなー!」」

あり?俺以外にもう一人の声が重なったぞ。


「全く!お主らはせっかく皆で作ったこの温泉浴場を台無しにする気か‼︎」


「ライさん⁉︎」


「「ごめんなさい‼︎」」


「やれやれ…おお、ナルガス殿も入りに来られていたか!気づくのが遅れて申し訳ない」


「ああいや、うん…温泉に浸かって今日はすぐに寝たかったから!早めに入りに来ただけだよ」


「そうだナルガス!ちょうど良いや、頼みたい事があるんだがよ?」


「ん?どうしたのヴォルス」

俺は近づいて風呂桶で体を軽く洗い流してから入る格好で、改めてヴォルスに尋ねてみた。


「俺達が今使ってた木の武器なんだけどだいぶ痛んできちまって……新しいのを作ってくれねぇか?」


「僕もお願いするよナルガス」


「ああなるほど…こりゃだいぶん使ってきたね?

分かった!じゃあ明日の朝早くから起きて木を切るついでに作っておくよ

他の木製の武器を作っておきたかったし!」


「おう頼むぜ!」


「ナルガス殿…でしたらついでに我にも一つ、木製の武器を下さらんか?」


「うん良いよ、何が欲しいの?ライさん」


「うむ…木刀を希望したい」


「「木刀!」」


「ああ、二人は確かに木刀を見たことがないだろうから、知らなくて当然だよね?…分かった!とりあえず明日まとめて作っておくよ!」


「かたじけない!日頃の務めばかりではさすがに体がなまりきって仕方がなくてな…少しは体を動かしておきたかったのだ」


「それもそうだね?ライさん」


「なあなあ!俺もその木刀ってやつ使ってみてぇ!」


「僕も僕も!」


「ええ⁉︎お、俺一人で3人分を作るとなると、空間操作を使っても時間が結構かかりそうだなぁ…」


「そこをなんとか‼︎頼む!」


「お願いナルガス!」


「……分かった!なんとか作ってはみるけれど、多少出来が悪くても文句言わないでね?」


「「大丈夫!」」

決心は固い…か。それじゃまあ、明日の朝は気合いいれてやりますか!


「ふむ…それでしたら明日の我の講習は延期にしておきましょう

後程、ずれた日数を補えるよう補習を用意しておきますので」


「う”⁉︎わ、分かった…」


「おいおい、しっかりしてくれよな校長!」


「まだまだやることがあるんだから、もっともっと頑張ってよね?ナルガス校長!」


「あぅ~⁉︎誰か、俺と校長代わって~‼︎」


「「「無理」」」

風呂場で俺の悲痛な叫びが、澄んだ空気に響き渡っていく。


その後、みんなと解散した俺は帰宅して夕飯を済ませてから、速攻で寝てしまうのであった。

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