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229話 イワナとの再会〈ソード視点〉

ソード視点、続きます。

 イワナに久しぶりに会ったので話したいと言われて拒めなかった。

 でも本当は拒みたかった。

 だって、彼女が死んだ理由なんて、俺だって知りたいんだ。


 ――イワナは孤児院を出て自活しているということだ。

 神職ではなく、普通に町の宿屋で働いているらしい。

 なので、その宿屋に泊まることになった。

 …………俺だけ。

 イワナに誘われた途端にインドラが怖がり震えて泣く一歩手前になったので、慌てて「お前はシャールに泊まれ」って言ってなだめた。

 ……本当に、こういうときだけかわいくなりやがって!

 巻き込もうかと思ったのに出来ねーだろうが!

 だけど、話は一緒に聞いて、って頼んだ。


 案内され、一番いい部屋を頼んだ。

 インドラがそれで一緒に泊まれるなら泊まってもらおう、って思ったけど、やっぱダメらしく、イワナが案内して笑顔でドアを開けた途端に俺の後ろに隠れてプルプル震えながら泣いた。

「……悪い、いったん閉めてくれるか?」

「え?」

 俺が頼むとイワナが疑問の声をあげた。

 うん。不思議だろうな、よくわかる。

 イワナにドアを閉めてもらった後、インドラが魔術で何かやったらしく物すごい音が聞こえてきて、()んだ。

「え!?」

 イワナがドアを見つめ、目を見開いて驚く。だよな。俺はイワナをなだめた。

「気にするな。……インドラ、中には……」

 高速で首を横に振った。

 それはもう、肉眼で捉えられるかってくらいの激しさで。

 なだめるために髪をなでた。

「うんそっか、わかった。じゃあ……」

「私は町の外にいる」

 インドラが言い出したので俺は慌てた。

「待て、待て待て。シャールが停められるトコ探すから待て」

 体裁は繕うが、インドラに外に出られたらお前の作った夕飯が食えないだろうが!

 泊まりはするよ?

 でも、何もかも宿で過ごすなんて言ってないからね?

「悪い、大きめのゴーレムを置ける場所って、どっかにないか?」

「ゴーレム!?」

「そうなんだ。コイツはこんな見かけだが大魔導師で、ゴーレムを作ったんだ。割と大きめなんで、停めておきたいんだ」

 ちょっと苦しい弁解だが、とにかくインドラの野宿を阻止しないと、俺の食事事情がヤバい。


 イワナが宿の主人に聞き、さらに主人が別の人に聞き……といろんな連中を巻き込んで、なんだかんだやって広場の一角を借りることになった。

 噂が広まったのか、皆が見に来てる。

 シャールを出すと、悲鳴半分歓声半分。

「魔虫みたいだけど、ゴーレムだ」

「はじめまして! ボクはシャール! ボクは、Sランク冒険者のソードさんの輸送ゴーレムなんだよ! 中にソードさんを入れて走るんだ!」

 しゃべらせたら、悲鳴が()んだ。

「随分かわいい声でしゃべるんだな」

 いつの間にやらギルドマスターも来てた。

「声は、コイツの声だから」

「はじめまして! ボクは、インドラ! こうみえて、Sランク冒険者ソードさんのパートナーなんだよ! エッヘン!」

 って、リョークの真似してしゃべってる。

「あー! お母さん、僕たちの真似してるー!」

「著作権侵害だー!」

 って、光学迷彩を解いたリョークから抗議の声があがる。

「……もしかして」

「そう、コッチ作ったのもインドラ。こう見えて天才魔導師で天才魔術師」

「はぁ~っ! 噂に聞いていたが、確かに若いな!」

 ギルドマスターが感心してインドラを見た。

 噂か……。

 ギルドには無線通信があるから、素晴らしく早く噂が広まるんだろうな。

「じゃあ、滞在中は場所を借りるから。……インドラ、だから、ココから動くなよ? 外に出るなよ?」

 念を押した。

「わかった」

 インドラは素直にうなずいた。


 その後宿屋に戻り、食堂の一角を借りて話すことになった。

 インドラも引っ張ってきた。

 まず、イワナが目を離した隙に辺りを魔術で素早く殺菌掃除を施すインドラ。

 そして、いつの間にか自分だけクッションを出して尻に敷いてる。

 ……ずるい。

 イワナはインドラが居座った(つーか俺がつかんで離さない)のに何か思ったらしいが、特に二人だけになりたいとは言われなかった。

 ま、言われても離さないけどな!

 俺、メンタル弱いもん。

 インドラにいてもらわないとダメ。


 ってことで、居座らせる。

 混んでなければ大丈夫、とイワナが笑顔で言い、料理を持ってきた。

「私が作ったの。良かったらどうぞ」

 ……笑顔で言われると断りづらい。

 料理が出てきて、チラッとインドラを見たが、特に表情は変えてない。

 大人しく座ってる。

 ……そうなんだよなぁ、コイツってば俺よか大人で女に弱い。

 俺としては、インドラの料理が食べたいんだけど……インドラは特にそんなことは言わずに、出された料理を大人しく食べている。

「エールでも飲む?」

 イワナが気を利かせて尋ねてきたが、俺は首を横に振る。

「いや、水でいいわ。明日からダンジョンに潜るから」

 つーか、このクラスの宿屋のエールなんて飲めない。

 インドラの言う『過発酵』とやらで、ものすげー味のが出てくるからよ。


まだまだソード視点が続きます。

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2021年9月10日 カドカワBOOKSより発売

オールラウンダーズ!! 2 転生したら幼女でした。家に居づらいのでおっさんと冒険に出ます


著者: サエトミユウ / イラスト:又市マタロー


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