144話 美少女エルフと依頼場所に行ったよ
依頼人の美少女エルフもついてきた。道案内ね。
居るはずの場所に当たりはついてるそうで。
「でも、ボク、攻撃魔術はあんまり得意じゃなくて……。弓矢も下手くそで、エルフの森では、足手纏いだったんです。それで、せめて作る方だけでも役に立とうと思ったんですけど、作るだけじゃ、仲間って認めてもらえなくて……」
唯一自分を認めてくれた親が亡くなり、遺言で、お前はこの森より外で見聞を広めた方がいい、きっと仲間が見つかる、そう言われて出てきたそうだ。
……というか、その森じゃ、未来は暗いと思ったんでしょう。そんなに酷かったのか。
「あー、わかる。俺もそうだったから」
って、ソードがさりげなく同意した。
マジか。
って、待てよ。
「私もそのようなものだったか」
伯爵家にいたら未来は絶望的だと思ったから出てきたんだった!
「うむ! そういうことなら、歓待するぞ! ただ、話したとおり、まずは私が魔術でやっていることの魔導具の製作を手伝ってもらう。
あとは、思いついたら依頼する。そもそもその魔導具製作に時間がかかると思うからな。出来上がったら、酒造りチームが号泣するだろう。そうなればほぼ自分達の手で作りあげられるからな!」
何せ、原料を育てるところから始めてるくらいに熱を入れてるものね。
プラナは大人しめで性格も良い。ソードも彼女を気遣ってるようで、さりげなく手を貸したりしている。
ふむ? これはソードのお相手としてどうだ? と一瞬考えたが、彼女、エルフだったわ。交わったら死ぬわ。
「残念無念……」
呟いたら怪訝な顔をされた。
「なんだ? あ、また変なこと考えてただろ?」
グリグリされた。理不尽だなー。
彼氏さん……ではないか、ドワーフだそうなので、交わったら死ぬわ、のお友達は、石工というか細工師というか、と言葉を濁してる。
粘土を取りに来たらしい。
どこでも採れるけど、何も生えてない剥き出しの地面からじゃないと魔術が使えないそうで。
ふーん。粘土? ってことは、陶器職人かな?
そんなんこの町で見かけなかったけど……。
陶器でアクセを作るのかな?
出来なくはないけど、金属の方が持て囃されるだろうな。
とか考えてたら現場到着。
……すっごいことになってる。
地面は抉られ、岩は砕け、なんか、物凄い何かが暴れたような気配。
プラナ、真っ青になった。
「サハド……」
「血の痕跡はないな。少なくとも怪我はしていない」
私が見たところ、一滴の血の跡も見受けられない。
「つーか、何が出たんだ? これ、確実にギルド案件だろ。それともドワーフって、こんなんを簡単にいなす腕前の連中ばっかなのか?」
まぁ、私達なら単体でも簡単にいなせる腕前の連中ばっかりだが。
「とりあえず、辺りを探るか」
って、遠くから吠える声が聞こえてきた。
私は瞬時にプラナを土左衛門抱っこしてダッシュ。
ソードもリョークも同時にダッシュ。
「あの吠え声に聞き覚えは?」
ソードに聞いたら
「お前ご要望だった、サイクロプス」
ワーオ!
「ウッヒョー! テンション上がってきたぁ!」
「うわー、お前ってホント変態」
ソードが笑った。
「サイクロプスは目玉に価値があるというが、本当か?」
「本当。ま、いつも通り首を刎ねて、その首を傷つけないようにすりゃいいよ」
「わかった!」
首刎ねちゃダメ、って場合は真空パック攻撃だったんだけど、暴れられて万が一目を自傷したら困るからね。
「見えてきたぞ!」
って、でっかー!
二階建? いや三階建? くらいの二足歩行の魔物だ。全裸で丸見えだったが、無性別でした。つるんつるん。
引っこ抜いたらしき大木を振り回して大暴れしてる。
いやはや、ここの方が辺りに血が飛び散ってるぞ。
プラナの彼氏はドコ行った?
「……プラナ!」
って声がして、そっちを向いたら少年ドワーフがコッチを見て驚愕してた。
「サハド! 無事だったんだね! 良かった!」
おぉ、麗しい友情だー!
「Sランク冒険者【オールラウンダーズ】だ! 俺達の巻き添えにならないように逃げろ!」
ソードが叫ぶと、その場にいたドワーフ達が一斉に走って避難した。
あ、一人、足を傷めてるのか走れない。
それに目を付けたサイクロプスが、拳でプチッとしようとした。
「……チッ!」
ソード、瞬間的に爆走して、怪我人を担ぎ上げて逃げる。
拳は地面を打つだけになったが、地面が揺れた。
さらに追うサイクロプス。
ソード、地面の形状と岩が邪魔して速度が出ないらしい。
「リョーク! 姫を守れ! 魔素障壁展開! だが撃つなよ!」
「あいさー!」
リョークに向けてプラナを放ると、ソードの援護に向かう。
ソードを掴もうとしたサイクロプスの手首を蹴り上げた。折れた。
おぉう、しまった、手加減したつもりが……いやまだだ! 折れたくらいなら大丈夫! 千切れてないもん!
手首を抱えて吠えるサイクロプス。
お誂え向きに首を斬って下さい、って差し出す格好だ。しめしめ、とうなじに跳び乗った。
気付いて慌てて身体を起こそうとしたが
「遅い」
木刀で、一閃。
頭はなんとか鷲掴み。
血が勢いよく噴き出し、胴体が倒れた。
「よ……っと。よーし、頭は無事だぞー。胴体どうしようか。こんな汚いの、リョークに乗せるのは嫌だなぁ。捨てるか」
「捨てるなよ。お前はスパスパ斬ってるけど、普通、サイクロプスの皮は簡単に刃が通らないってんで有名なんだよ」
うん、私の木刀、刃がないからね!
そもそも刃がないんだから、通る通らないの問題関係ないもんね!
「えーでもー。こんな汚いの、私のかわいいリョークに乗せられないしー」
「水で洗って乾燥! お前、それくらい朝飯前にできるだろうが!」
ぶっすー!
出来るけどさぁ、なんか包む物ないの?