140話 土の妖精参上!
お待たせ致しました! 前回海岸線ぶっ飛ばしてたソードと主人公が戻ってきました。
キーハを出て、次に向かったのが、山。
向かう道中で、ソードに説教した。
「お前って、結構浮気性だよな。リョークに飽きられないように気をつけろよ?」
「え! ……ちょっと待ってよ、俺、浮気してないから。リョークはリョークで、ブロンコはブロンコだから」
言い訳しだしたけど、その言い訳がもうダメ。
「その間に入っていた筈のシャールの名前が出ない時点で、浮気性決定打だよな」
「そうですよー!」
「新しい子が来たら、そっちばっかり構ってー!」
ヤイヤイ言われてる。
急激にソワソワするソード。自覚してるらしい。
「……違うって。俺、ちゃんと区別してるって」
ジローッと三人で見た。
「やめて。責め立てないで。ホントに、ブロンコは乗り物だから! シャールも乗り物! つーか宿泊所! そしてリョークは、パーティ仲間! 相棒!」
で、リョークは機嫌を直したらしい。
「わーい!」
「相棒相棒~」
踊ってる。超ラブリー!
「あかん、鼻血出そうだ」
「……………………。お前って、ホント、変態だよね」
呆れて言われた。
さて。今向かっているソーブは鉱山の町とのこと。
ここに来たのはスカウトだ。蒸留する機械を作れる人を探し、イースの屋敷に招こうとソードは考えてるそうで。
「種族が違うから、まぁ、ダメ元で行こうかなーってな」
え、え? 〝種族〟と言ったか? それってもしや……。
検問所でもうわかった。
「おぉ! ファンタジー定番!」
土の妖精ドワーフ参上だ‼
いかにもな、身長は私よりもあるけれど、全体的にずんぐりむっくりの、立派なお髭を蓄えた、とっても濃い顔の男性らしき人が検問所に立っている。絶対アレはドワーフ役人!
そのドワーフ役人、私達を見るなり……いや違うね、ブロンコを見るなり、固まった。
で、走り寄ってきた。
「なんと⁉ これは……素晴らしい‼」
ブロンコを褒めてくれる。
「うむ! そうか、見る目があるな!」
「いやちょっと待って、中に入れてよ」
盛り上がろうとするとソードがツッコんできた。
「……はっ! 失礼した。では、こちらにどうぞ」
冒険者カードを魔石にかざす。
「……冒険者? 職人ではなく?」
役人さん、怪訝……というよりも不満そう……それも違うか? 不服そうが一番近いかな、って顔をした。
「ものもつくるがメインは冒険だ。私達は多芸なのでな、生き方を一つには決めない。他人の物差しで測れないほど、自由に生きている。それがつまり、冒険者という者だ」
「……それは、失礼した。どうぞ、良き旅路を」
って言われて通された。ソードは無言で肩を竦めたが。
「もちろん、私達の進む道は良き旅路しかあり得ないな。では、さらば」
私は鷹揚に頷いて、通った。
「……まぁ、比較的穏便に通して貰ったかな」
「ん?」
なんかソードが言い出した。
「鍛冶職人が集まった町だ。人間もいるけど、ドワーフが大多数。そして、ほぼ全員が鍛冶関係者。まぁ、細工師やら石工もいるけどさ。
だから、お前の作ったブロンコも注目されただろ?」
なぜブロンコだけなのだ。リョークだって作ったぞ。ちょっと虫っぽいけど。
「だから、鍛冶関係者以外は低く見られるんだ。あの役人も、当番制さ。じゃないとなり手がいないから」
わぁ。徹底してるなー、いかにも頑固者の集まり! って感じ。
「ブロンコをわざわざ見せたのは、連中にこの凄さをアピールしたかったから。まぁ、どーせ買ったんだろうとか思われるかなと思ったけど、お前の一言が効いたな」
ソードが私を見て笑った。
「プライド高いこの町の連中も、お前ほどの腕を持った奴はそうはいないよ。まず、これを作る発想が出来ないだろうな」
まぁ……私も別世界の知識からパクってるけどさぁ。
でも、それにしたってこの世界の人達って頭が固いよね。魔術で何でも出来ちゃう世界なんだから、もっといろいろなもの作りなよ。
「これは、こう!」しか使えない! って思い込んだらそれしか使わないこの世界の人達は、冒険者がいるのに冒険してないと思う。
ふーむ、と腕を組んだ。
「そうなると、正直、拠点に来てくれる者を探すのは難儀だな。私の作った物に敬意は表するだろうが、頼んで作って貰うには、柔軟な思考が必要だ。プライドが高いとなると、それを一度へし折ることになるぞ」
高いのなら高いままでいいと思う。無関係な人間……じゃなくて妖精だもの、わざわざ恨みを買うことは無い。
「お前がへし折るなら止めないけど?」
「わざわざこちらから恨みを買うことは無い。そのプライドの高さも、ものづくりに対する熱意の表れならば、むしろ私も敬意を表するに値するものだ」
ソードが、超意外! みたいな顔をしてるけど。
「私だって職人の一人ではある。だから、自分が作った物に対してのプライドはあるぞ!」
「あ、そゆこと」
納得したらしい。
「……それならそれで、いいけどよ。でも、この町は『そういう』町だから、嫌な思いをするかもしれないぜ?」
「買う気が無いから仕方ないだろう。私も理解出来る感情だ。自分の作った物は素晴らしいと思うし、それを大切に使ってほしいと願う気持ちもわかる」
「………………」
ソードが頭を撫でてきた。
「ま、それなら仕方ねーか。端から見て行こうぜ?」
「うむ」
頷いて、歩き出した。