124話 さらば王都よ
「今日は、ありがとうな」
ソードにまた言われた。
「好きでやったから構わない。 けど、大丈夫か?」
途端にげんなりした顔になった。
「まぁ…………。とりあえず、事情を話すわ」
斯く斯く然々。
「ふーむ。ま、見るくらいなら見てやってもいいが、無料でとは言わせんな」
「ワオ。王からも依頼料取る気か」
「当たり前だ。なんで私が奴隷奉仕しなくてはならん。別に金でなくても構わんが、見返りをよこさない限りは動くことはない」
「あ、お前ってそうだよな」
「誰しもがだろう! 役人さんだって、労って余り物を差し入れたからこそ、ここに駐めたらどうだと言って来たんじゃないか!」
ソードがポンと手を打った。
「そういやそうだな」
まぁ、それは置いといて。
「勇者は、建物の有り様と噂とその話を聞く限りだと、出会ったら私は拷問するだろうが」
「大丈夫。俺も『出会ったら殺すかもよ? ヨロシク』って言っといた」
わーい。それなら気兼ねなく!
「でも、拷問はかわいそうだから、瞬殺してあげて?」
って、殺してもいいけど拷問はダメって言われたー。
翌日。役人さんに挨拶した後、出立することにした。
そもそも、昨日までに大体のことを済ませておいたので(ダンジョンコア様にも精神界の者にも、王城がうるさいから殲滅してこの国出るかもーと前以て挨拶したし)昨日飲んだ連中とはちゃんと挨拶してないけど、ま、冒険者とはそういうものだ! さらば! 全部勇者が悪い! と、全てのヘイトを勇者に集めるようにして、王都を出立。
ちょっと会ってみたかったけど……。ソードが一緒だからね。昨日すっごいストレスを溜めたソードに、またストレスを抱え込むような真似はさすがにしない。私一人なら喜んでお相手した。
……というか、私、本来はエンカウントしてたはずなんだよね。ソードのお出迎えを思いついて飛び出さなければ……!
なんというか、トラブル運がない。巻き込まれ体質は欠片も持ち合わせていないらしい。
ちくそう。ヒロインにはなれないタイプかよ! 不幸が避けていくぞ! ばっちこい!
「どうした?」
って考えてたらソードに声かけられた。
「んー……。昨日、本来なら勇者と見えていたはずなのに、なぜすれ違ってしまったのか、と考えていた」
ソードが呆れた顔をした後、すっごい無表情に!
「わかってる。疲れたお前をさらに疲れさせる真似は控える」
ソードを手で制す。
「あっそ。労ってくれてありがと」
ソードが棒読みで言った後、急に表情を緩めてクスリと笑った。
「……確かに。お前ってトラブルを自ら招こうとしてるくせに、トラブルはお前を避けてくよな? 思えば運がないのかね」
ショボーン。
「そうなんだ……。これが、物語の主人公ともなれば、絶対に、絶対に巻き込まれたであろう定番のイベントが、避けて通っていく。なぜだろうな?」
「日頃の行いだろ」
って言い捨てたんだけど、それは、どういうことかな?
「私の常日頃の善行が、トラブルを招かないのか?」
「違うよバカ。日頃、お前に絡んで来たやつをどう拷問してやろうか、なんて楽しげに語ってるから、トラブルが避けてくんだよバカ。誰だってそんな目に遭いたくねーよ、バカ」
散々バカって言われたー。
勇者ざまぁもしくは王宮破壊を期待していた方すみません! フラグぶん投げて先に進みます!
インドラも作者もソードを気遣いました。じゃないとストレスでソードがハゲそうなので!
王都編はこれで終わり、別の町に移動します。
次話は三人称視点での話になります。
本来は、なかったストーリーなので読まなくてもわかりますが、先に出てくる話の補完のようなストーリーにしたのでぜひ読んで頂けたらと思います。




