110話 昔の仲間<ソード視点>
ソード視点、続きます。
久しぶりだから話がしたいと言われて、断る理由がなかった。
いや、前の俺なら断っただろう。
話すことなどない、と。
……だけど、『今』なら話が出来る。…………はずだ。
でもやっぱ、インドラと一緒がいいなぁ。
アイツって、煽りスキルが半端ないけど、悪意を聞き流して逆手に取って相手にダメージ与えられるからさー。
俺って、ちょっとの悪意でも敏感に反応しちゃうから、卑屈になっちゃうんだよね。
まぁ、でも、確かに俺は成功した人間と言われているし、『今』は、成功している。
妬まれてもしょうがない、『今』はな。
だって、リョーク持ってるし、シャールも持ってるし、ブロンコも持ってるし。
ついでに、格好いい時計も持ってるし、すげー機能の眼鏡も持ってるし。
さらに、なんでも斬れちゃう剣も、なんでも貫通しちゃう遠距離武器まで持ってるし。
ついでに、オークションで金貨積まないと買えない酒まで持ってるし。
妬まれても仕方が無いな、うん。
*
インドラに作ってもらった服を着て出かけた。
虫が大好きなアイツは、虫の糸から織った布を俺が買ってやったら喜び、いろんなものを作ってた。
俺にはシャツを作ってくれた。
……確かに、肌触りがいい。
他にも、細身の格好いいジャケットやパンツやらを作った。
ウエストが紐じゃなくてボタンで、貴族の服みたいだけど、貴族の服よか動きやすい。
ポケットがあちこちについてて、ちょっとしたものなら入るから、手ぶらでもいけそうだ。
――ホント、虫に拘らなきゃ、格好いいのが作れるのにな。
なんで虫に拘るかね?
ホンットーにブロンコを飛蝗にしてくれなくて良かったと思うぜ?
……って考えながら歩いてたら待ち合わせ場所到着。
カレンもちょうど来たようだった。
…………。
老けたよなー。
いや、俺もそうだけど。
インドラのピチピチのきめ細やかなお肌を見慣れてると、こう…………あ、ブーメランだ。
帰ったら、インドラ直伝のパックとやらを念入りにやろう。
――老けたけど、背が高くなり、インドラもこれくらいは成長したいであろう、胸も多少育った、ようだ。
…………。
なんだろ? インドラの影響かな?
おっさん臭い発想が浮かんできたので、思考を止めた。
「ちょうどか?」
「えぇ。……相変わらず、時間に正確ね」
ん?
昔からだっけかな?
俺、時計持ってなかったから、時間に正確かどうかはわからなかったけどな?
カレンおすすめのパブに行った。
確かに、暗いし、恋人同士が多いのか俺に注意を向けられずに済んだのでありがたい。
エールを注文した。
……あー、いっそ「俺の驕りだ」とか言ってエールを出したい。
けど、前にソレやったら、「借金奴隷になった奴の金で酒を奢った」とか言われたし。
だから、もうやらない。
だけど、これくらいは、やる。
エールが来たので、カレンがグラスを取ろうとするのを止め、小声で詠唱。
「……え?」
グラスが凍り、エールが冷える。
「冷やすとうまいんだ。最近ハマっててな」
カレンが戸惑った後、笑った。
「攻撃魔術を、こんなふうに使うなんて、貴男らしい」
って言われたけど、ソレ、俺の発想じゃないから。
俺、そんな非常識な男じゃないから。
まだソード視点です。そして次もソード視点です。