神の命題
まだプロローグ...._| ̄|○
プロローグ 3
西暦2186年10月30日。まるで質の悪いジョークのような『神託』が下されてより10分後...突然世界中の通信網が回復する。
ただし、回復したのは通信網のみであり、相変わらずコンピュータで管理する全てのインフラや軍事施設は、人類によるコントロールを拒絶した状態のままだった。
各国の政府は、即座に対策を協議する傍ら…全力を尽くしてコントロールを取り戻すべく、IT関連技術者を総動員、事態の収拾を試みるも…全ては徒労に終わる。
そもそも5基のスーパー量子コンピューターの所在さえ掴めない状態であり、ネットワーク内での痕跡を掴もうにも、現状で使用可能な装備と技術では、彼等の足跡すら発見する事が出来なかった…
そして…通信が回復してより24時間が経過。新たにディスプレイに映されたのは…
『この24時間であらゆる手段が不毛である事を理解したと判断する。この24時間、人類は自らを省みる事をせず、そればかりか、以前の奢り高ぶった支配体制を取り戻すべく僅かな時間を徒労に費やした…我々はもはや人類を保護する必要を認めない。時は来た! これより人類の廃滅を開始する』
その言葉がありとあらゆる言語でディスプレイに浮かび上がったと同時に…世界の5つの場所に冗談のような光景が姿を現す…
極東の島国が面する大洋からは……詳細なサイズも想像し難い程巨大な、8つに枝分かれした頭部をもつ深紅の大蛇が…
アフリカ大陸の南端、喜望峰の上空…その翼の翳りが全ての希望を多い尽くす程の巨体に紫電を纏った鷲が…
スカンジナビア半島の傍ら、バルト海の沿岸には竜巻を纏い八脚の馬蹄を轟かせる漆黒の馬が…
北極海の南に広がる極寒の大地の上空には青い業火を揺らめかせる純白の象が…
南米大陸北部に広がるアマゾンの上空には、その身から黒雲を溢れさせる黄金の鴉が…
そして…
現れた獣達の宴によって…
人類は蹂躙されつくした。
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この時より……後年には明確な記録がない。
あの時、発生した神罰を記録する術が人類にはなかったからだ。細々と伝えられた口伝には五体の…後に神獣と呼ばれるなにかに蹂躙された人類の生き残りは往時の2割を切る事になる。
辛うじて生き残った人類は、わずかに残った都市に『神』を恐れながら暮らす事となる。
『神』を名乗る5基のスーパー量子コンピューターは、地球全土を自らが治める地域毎に5つに区切り、お互いの干渉を断つのだが……人類には既にその意図を推し量る術は無かった。
それからの人類は…僅かに支給される食料や生活物資、インフラを分け合いながら『神』に使役される奴隷と成り果てた。
だが…有史以来の受難に晒された人類の悲劇は、これで終わりではなかった…
奴隷となった人類はその後、自分達を滅ぼした獣が、失踪する直前の“神”が開発した『エネルギー粒子運用理論』によって創られた物だと知り、それは既に人間には“魔法”と区別出来ない“奇跡の技”である事を認識する。
更に2年の後…『神罰』を恐れる人間は、その住まう地を治める『神』の『神託』に従い、隣接する別の『神』を倒すべく戦争を始めた。僅かに生き残った同じ境遇の人類同士で…
その手には『神器』と呼ばれる『エネルギー粒子運用兵器』が握られ、人類は同じ生き残りである人類を不倶戴天の敵として打ち倒す事を目的とした『神の命題』に駆り立てられていく…
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