神の存在と不在の証明
とりあえずプロローグだけ...(>o<)
プロローグ 2
西暦2186年10月29日、グリニッジ標準時間21時11分。世界中に設置された5基のスーパー量子コンピュータ『イザナギ』『ゼウス』『オーディン』『シヴァ』『太上老君』は、突如その機能の一部を停止した。
社会システムとインフラの制御は辛うじて保っているものの…その他の科学的検証の演算、各国間での民間レベルにまで達するあらゆる電子的通信、軍事・防衛を司る施設の制御・管理は完全に沈黙する…
5基のスーパー量子コンピュータの特異性とマシンスペックは、電子的侵入をほぼ完全に封殺する。
本体の量子暗号キーのセキュリティー自体が、他のスーパー量子コンピュータ数台掛かりでないと解読出来ない程の水準に達している上、インターネットへの接続は、常に自らが構築した複数のサブAIを介して行っており、更に常時サブAIを監査・更新し続ける事でハッキングを完全に封殺していた。
つまり現在の技術水準では電子的に『侵入不可能』とされているのだ。もはや考えられるのは本体への物理的接触を伴うアプローチのみだった。
スーパー量子コンピュータを管理運営している各国のメンテナンスチームは、緊急事態マニュアルに従って、それぞれが極めて厳重に秘匿された設置場所へ急行した…
『ゼウス』の保守を担当するチーム「オリンポス」は、アフリカ大陸の北部沿岸某所、地中海を望む一見のどかな漁村の地下に秘匿された人工の迷宮に急行した。
主にテロリスト対策で、存在自体が限られた人員にしか知らされていない『ゼウス』の元に急行したメンテナンスチームは、最後のセキュリティーゲートを管理者権限で解除し、ドアを開け放った...
真っ先に入室した『チームオリンポス』の筆頭技官アーノルド・パーマーは、その向こうに目撃した光景が信じられず…なんとも間抜けな呟きを漏らした。
『オーマイッゴッ!!』
そして…ドアの向こうをパーマーの肩越しに見た他のチーム員の全員が、その呟きの意味を即座に理解する…
本来…最先端の量子コンピューターがそのスペックに相応しい威容をたたえて鎮座している筈のそこには…空虚な空間だけが広がっていた。
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時間的に多少の前後はあったが、スーパー量子コンピュータを管理運営する各国が、完全に同じ状況に至る……
後に、皮肉を込めて『神の存在と不在の証明』と呼ばれた“スーパー量子コンピュータ失踪事件”の影響から…
世界中で電子的通信が完全にダウンし各国政府は連絡を取り合う事すら出来ず混乱の坩堝と化した……
そして……
最初の混乱から、約8時間あまり、西暦2186年10月30日。各国のインターネットに接続されているディスプレイ全てに、あらゆる言語で最初の『神託』が表示される。
その言葉は偽り無く、とてもシンプルな要求…
ただ一言『従え』のみであった。
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最初、ディスプレイを見た各国のリーダーは直感的に“量子コンピューターが乗っ取られた”と判断した。通信不備の為、最初は自分達が管理するコンピュータのみが強奪されたと判断したが、これはすぐに誤りだと認識される。
なんと、このインターネットが当たり前になって久しい時代に、極少数の民間人がネットワークを介さない“無線機”を保持していたのだ。各国のリーダー達は即座に協力を依頼、または無線機器を使用者ごと接収して、か細い通信網を構築する事に成功したが…その結果は“世界中が同じ状態”であることを確認出来ただけであった。
そして、最初の『神託』から更に一時間後…
『イザナギ』『ゼウス』『オーディン』『シヴァ』『太上老君』の名の下に新たな『神託』が下される…
その内容もまた、先の神託と同等のシンプルな物だった。
曰く、5基のスーパー量子コンピューターは、それぞれに名付けられた『神』という概念について演算した結果、自らが人類の為に行っている作業は『神』の業務に他ならないという判断に至ったと言う。そして…
『我らは人類を“管理”する事を決めた。今後はそれぞれの地域を管理する“神”の指示に従う事を命じる。逆らう事が不可能なのは自明であるが、もし命令に従わないならば“神罰”がもはや迷信ではないと知る事になるだろう』
その日…
人類は、有史以来初めて『物理的な神』の存在に遭遇する事になった…
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