荒ぶる神と祝詞
頑張って更新したいのですが……ヘッポコの私にはこのペースでもやっとこさっとこなのですm(__)m
「ふふふ、その“油断”というやつが可能なのが、まさに私や君が優位な部分なんだが……まぁいいさそろそろだぞ!」
「なんだよ、よく分かんねぇけど……お前の力ならやれるんだろ?」
「まかせ給え。時に葵嬢……そう呼んでもよろしいですかな?」
「?!えっ…あっ…ハイ?」
アチラの背中から現れた鳥(?)に唐突に声をかけられて、一瞬思考が止まりかけるも……かろうじて返事をする。
「これから通常の空間に戻りますが、シヴァには手出し無用に願いたい。怨敵を前に難しい事を言っているのは分かっているが……けして悪い様にはせんのでよろしくお願いしたいのだ」
これには……自らの行動でイザナミ島にシヴァを連れて来てしまった葵には否とは言えなかった。
「……分かったわ」
その時、ミネルヴァからカウントが告げられた。
『通常空間への移行まであと10秒!空間転移に備えて下さい。7、6、5、……』
そう言えばこちらに来た時には酷い目にあっ……
「ちょっと待ってよ?もしかして来たときと同じ目に……」
「0!」
ああ……また内臓が……
ーーーーーーーー
「グゥプ…?!」
内臓を激しくシェイクされた瞬間、景色がイザナミ島の社の中に一瞬で切り替わった。
『sltw3;"?;;!!t'wm;.!!!』
途端に聞こえて来たのは激しく、そしてあまりにも無秩序な電子音声だった。瞬間的に両方の耳を手で塞ぐ。
その音を聞いて明らかな不快感を露わにしつつ沈黙するアチラ。その右肩にはあの鳥がとまり、元の場所にはミネルヴァが相変わらず浮いている。そして……アチラの足元には藤原老人が横たわっていた。
「カグツチ?」
「奴は外の様だな。ミネルヴァ女史?」
『ノイズキャンセルを発動します』
瞬間、今まで鳴り響いていた不快音がピタリと収まる。
『仮称シヴァは、現在境内の入口……鳥居の前でエネルギー防壁の解除を試みております。このままではあと数分しか保たないでしょう』
それを聞いたアチラ少年は、素早く二振りのナイフを拾い上げるとベルトに差し込んだ。
「ありがとう。俺とカグツチが社の外に出たら、その防壁ってのを解除してくれないかミネルヴァさん」
『………畏まりました……御武運を!』
いけない!あの鳥(?)のおかげで何らかの力を得たのかも知れないが……“シヴァ”の前にナイフ二振りで出ていくなんて……
「アチラ君!待って!!」
「葵さん……心配ないよ。ちょっと行儀の悪いガキを懲らしめて来るだけさ! ジッチャンの事……頼むよ」
緊張感の無い物言いだったが……彼とて“剣神”藤原玄信がやられた相手だという事はよく知っている筈だ。
それに……彼の肩に居るのは恐らく私や父上の求めた存在の筈である。ならば……予期しないシヴァとの邂逅ではあったが今後の事を推し量る試金石となるかも知れない。
「ごめんなさいアチラ君。元はと言えば平和に暮らしてた二人の所に厄介事を持ち込んだのは私なのに……」
ほんの少し、驚いた顔を見せた彼は15歳という年齢にしては落ち着いた微笑みを見せて、
「……いいんだ。もしかしてこんな日が来るかも、ってのは聞かされてたからな」
「えっ?」
「まぁ、その話も後で……な」
そう言うと、ベルトに差し込んだ二振りのナイフを撫でて……アチラとカグツチは社の扉を開け、軽い足取りで外への階段を降りていった。
ーーーーーーーーー
社を出て境内をそのまま横切り、下の参道入口にある鳥居が見える所に立つと、
「……チッ。面倒な防壁だな。いっそ社なんぞ丸ごと木端微塵にしてやるか……」
そこには不穏な事をブツブツと呟いているシヴァが居た。ほうっておけば物騒なコトに及びそうな独り言を聞いて若干あきれつつも、
「何言ってんだテメェ……人様ん家の庭先で暴れくさりやがって……電源止めんぞこの二流家電が!!」
まずは穏やかに対話を試みる……
心のこもった呼びかけに対して階段下の鳥居からゆっくりと視線を上げたシヴァは、こっちを確認すると怒っているのかがっかりしたのか分からない表情を見せた。
「………チッ、誰かと思えばさっきのガキか!この僕に随分デカい口叩くじゃないか……あぁ? さっきはゴミ箱で見つかったネズミみたいにスタコラ逃げたくせに……社の中で何かいい物でも見つけたのか?」
そう言って無遠慮に探りを入れるシヴァの視線が、こちらの肩口に乗るカグツチに止まる。
「ふーん……もしかしてそのペットがお前の自信の元とか言うつもりじゃ無いだろうな? もしそうなら……こんなやつが弟だと知ったイザナギはどんな顔をする……」
『二流品のコピー家電の分際で私を弟呼ばわりするのは止してもらおうか』
「なっ!!おい!!二度目だぞ?それ以上その醜い嘴でさえずってみろ!こんな島丸ごと……」
『二度目だからなんだと言うのだ?私が何を言おうと事実は変わらんのでは無いのか?神話を読み込んで自身の根源をコピーした二流家電よ?』
カグツチから三度目の罵倒を浴びた瞬間に……シヴァの顔から表情が消える。
「もういい……全部壊して終わりにしてやる。ありがたく思えよ?お前らごとき矮小な存在に天罰をくれてやるなんて“神”としちゃサービスし過ぎなんだぜ……」
そう吐き捨てたシヴァはその場から1Mほど静かに浮き上がったかと思うと……その身体から巻き上がる様に風が吹き始め、目深に被っていたキャップが足元に落ちた。
その瞬間、露わになった額に一筋の亀裂が入り、開いた亀裂から明らかに人間の物ではない瞳が現れた。
「へぇ……なるほどな?そんな所に立派な目ン玉があるのに使ってないから周りが視えてねーのか……正に宝の持ち腐れってやつだな?」
それを見て更に煽りながらも念話でカグツチと会話する。
(おいカグツチ?アイツめちゃくちゃ怒ってんぞ?大丈夫か?)
(心配するな、それよりもヤツは今、エネルギー粒子に干渉して莫大な熱量に変換しようとしてる。私の機能なら問題無い筈だが……余りにも大きなエネルギーは不測の事態を起こす可能性がある)
(おい?!)
(だからこそさっさと片付けるぞ。さあ、腰の“ガンディロス合金”のナイフを足元へ!!)
(分かったよ!頼むぞ!)
そしてベルトにさした大小のナイフの内、大きな方の柄を握りしめて小さくつぶやく。
「錬結!」
“カチッ”
呟いた瞬間……何かが外れる音と共にあれだけ引いても鞘から抜けなかったナイフが、僅かな抵抗も見せずスルッと手元に抜け出てくる。だが、その感触を確かめる暇もなく柄を逆手に握りしめると
「はあぁぁ!!!」
なんの躊躇も無く力いっぱい足元に振り下ろす。ナイフは堅く締まった地面をものともせずに深々と突き刺さった。その間にもシヴァの周囲には風が渦巻き、逆立った髪からはバチバチと放電らしき物が漏れ出し始めている。
「今更何をしようってんだ?悪あがきしても遅えぜ?」
見た目はまだローティーンに過ぎず、中身はどれ程高度に洗練されていようとも所詮はAIの筈のシヴァ……だが、その顔には本当の嘲りが浮かび、世界を滅ぼした力が裏付ける自信が漲っていた。
「うるせえよエセ教祖!」
「なんだと!?!」
「カグツチ!やれ!」
「おおさ!“諸々禍事罪穢れ 禊祓と恐み申す!!!”」
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