狼の瞳に映る自分の影
「今からウッズウルフの巣を爆破する、奴らは巣を破壊されると近くの村を襲撃する習性がある、破壊してすぐに村に戻って狼どもを返り討ちにする。呉島は俺について来い」
ケインの策を聞きながら手榴弾を3つ作る。携帯兵器と侮るなかれこれだけでもかなりの威力がある
「俺はどうすれば?」
「エリックは村に伝えに行け、染料とバリケードを作って村の奴らといつでも攻撃できるようにしてろ」
ケインは染料の作り方を一通り教えると俺のポーチからつぼみをつかみリックのポーチに移した
「呉島、俺が敵の注意を引くそのうちに銃で倒せ。遠距離武器なんだろ?」
「了解」
呼吸を整えM4A1を軽く点検する、リックは剣を抜きいつでも動ける様に準備したそれを見たケインは叫んだ
「行くぞ!!シールドアイ!!」
シールドアイ、敵のヘイトを一時的に自分に移すスキルガーディアン専用スキル。ケインの盾が光り一斉にエメラルドの様な緑が現れていく、姿を現したウッズウルフは1、2、3…近くに軽く15はいる。
目に映る狼に狙いを定め引き金を引いていく、血しぶきをあげ倒れる仲間に気づいたのか先ほどよりも低い咆哮をあげた
「巣はどっちにあるかわかるのか?」
「ああ、お前はまっすぐ森を進め俺はここで食い止める爆破したら速攻撤退だ、何匹いるかわかったもんじゃないからな__________
リックは村につき村長にケインの策を話し村人総出でバリケードの制作に勤しんでいた
女子供は村から材料をかき集め染料を作っている、エルザや桐生レイナは村人の元だが冒険者達と一緒におって来たウッズウルフを討伐している、リックもある程度染料を作り終えたら加勢するつもりだがある疑問が頭を離れない
ウッズウルフとは本来森の中にいる動物を狩り森に入って迷った者を殺し貪る、そんなモンスターが村を襲うのはなかなかない、考えられる点としては動物がいないから村を襲うと言う簡単なことだが今は冬季を前にし越冬の準備している動物達がいる
「勇者の召喚に気づいた帝国のせいか?」
だが戦争相手にこんな小さな村を襲わせるのはありえない、聖杯の宴が近づいているせいで魔素の異常か?
今はそんな事を考えている時間じゃないと頭を振り桐生達の元へ向かった
ケインの言う通り森の奥へと走る、ウッズウルフはケインに相手しているので数はいない
「こっちくんなクソ狼!!」
M4A1を連射しながら追ってくるウッズウルフを倒していく、すると山の中に洞窟があった
これが巣か、と思いながら手榴弾を1つずつピンを抜きゆっくりと地面に置く3つ揃ったところで投げ込みその場から走る
木の根に足を持っていかれそうになるもなんとか体制を立て直す後ろを見ると木の根を物ともせず追ってくるウッズウルフ
あとはケインを連れて村に着くだけだ、山を照らす光はいつしか黄昏色になりそして山を暗くしていく
爆音を背に山を走ってケインの元に着いたのだが。ケインは満身創痍、ウッズウルフの数も最初より減っていない、いや逆に増えている
「大丈夫か!」
M4A1でケインの周りを一掃していく、サプレッサーを外したグロッグで威嚇するそれに怖気づいた狼は周りを囲うだけだった
ポーチにしまっていた回復薬をケインに渡し森を駈ける
「あいつらは逃げたられたと直感したら巣に帰る習性がある、その間に形成を立て直す。バリケードも完成しただろうし」
「わかった…がどうやって村まで戻るんだ?囲まれちまったし」
「安心しろ、ブラックアウト!」
ケインのスキルにより狼達からの追跡は逃れ村へと着いたのだった…
「しっかし染料をつけたらわかりやすくなったな」
篝火に照らされた狼の体は黄色や緑に染まっている、村人数人が染料を投げ俺たちがバリケード越しに倒していく
辺りは血が飛びそのせいで地面は血を吸い泥の様になる、すると一際目を引く巨大な狼が姿を現した
剣を連想させる爪を振りバリケードを破壊していくその姿はまるで前線基地に乗り込む戦車の様だ
「呉島達はウッズウルフの相手を!!ケイン!レイナ、エルザ!俺たちはこいつを倒すぞ!!」
「わかった」
「わかったー!」
「わかってるわ、リックはケインの攻撃の後に攻撃!エルザは相手が攻撃しようとしたらナイフで阻止して!!」
ケインに従いウッズウルフ達を倒していく、マズルフラッシュが俺の影を照らしていたが…弾が切れた
M4を適当なウッズウルフに投げつけナイフを構える、それに気づいた橘が俺にエンチャントをかけた
その場から飛び出しナイフで切りつけていく、1匹の狼が飛び出し腕に噛み付いてきた
「離せおら!!死ねやカスボケ!!」
必死に狼の顔にナイフを突き立てる、だがより一層牙が腕に食い込む。その上他の狼共が俺の体に食らいついてくる
「アリサ!!なんとかしろ!!」
『良いのか?お主の記憶をみたがわしは途中で裏切る奴とアニメとやらにあるぞ?』
「いいから!!」
『しょうがないのぉ、ドラゴニックハート』
黒い炎が周りの狼を焼く立ち上がった俺の腕には前と同じく黒いガントレットの様な物があるそこから生える爪で他の狼を切り倒していくが…やばい、止まらない。
切り裂く腕が止まらない、このままだと仲間や村の人間に攻撃してしまう
「桐生!!やばい!止まんない!!」
「安心しろ後で睡眠魔法で止める!今は攻撃してろ!!」
5分ほど経っただろうか、辺りは地にまみれ俺のマントも血に染まった
「やっと止まった、くそ痛え」
身体中に空いた牙の穴に当たる突き刺さる様な夜風、桐生の回復魔法でそれなりに癒えたがまだ痛みは消えない
「お疲れ、向こうも終わったらしいぞ」
橘が指したのは狼の巨体が横たわり剣についた血を払ったリックだった。え、もしかして僕様あいつらより弱い?
ナイフは使ったことないしあんま銃当たらないし弾切れもあるし
桐生はバフ掛けれるし、橘はエンチャント掛けれる。俺がいる意味は、シーカーのスキルだけか?
せめて何かできる様になればな…
と考えながらもケインに促され村長の家へ向かった
「冒険者殿、この度はありがとうございます!これで村の被害がなくなります!」
「いや、気にするな。ところで」
ケインはちらっと村長の顔を見るとそれに気づいた村長はどこからか布の袋を出しケインに渡した
中を確認し報酬金と同じか確認したケインはポーチにしまった
「あまり村の人間を森の奥に行かせるな、森に残った匂いにモンスターが住み着くからな」
「はい!ありがとうございました、どうぞ宿でゆっくりとお休みください」
村長の家から宿に戻り食堂の椅子に腰掛けると、ありえない程の量の料理を宿の女主人が持ってきた
運動の後に飯はあまり食えないと聞いていたが本当だった、吐き気を覚えるほどの匂いを嗅ぐだけで胃が痛い
「あ、あの、こんなに要らないんですけど…」
「遠慮しなくていいよ!この村を救ってくれたんだ!あたしなりのお礼さ!」
いや、遠慮じゃなくて…リック達も吐き気を抑えながら口運んでいる。今夜はゆっくり休めないな______