1_Meeting
『Magic』始まります。
転生ものではなく、現代に魔法が付加され再編された世界を描いていきます。
私はこういったものを”世界再編系”と呼ぶことにします。
折角のご縁です。私は皆さんを全力で引き込みたいと思っています。
どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
まずはプロローグでもあります『Meeting』から。
僕は、この世界が好きだ。
漫画にゲーム、音楽。ハマれば時間はあっという間に過ぎていく。
漫画は少年ジュンプを読んでいて、ゲームはモンエゴ。来月には最新ソフト”魔法世界アスカ”が出る。
でも将来があるし、勉強はしないといけない。
小さいころから暗記は得意だったから、図鑑の内容はすぐに覚えて暗唱できたりした。
数学も解法を丸暗記して、試験はやり過ごしていた。
高校受験も第一志望に受かった。
だから、成績はみんなが思っているほど悪くない。むしろいい方だと自負している。
部活は写真部に入っている。
写真を撮っていると自覚する。僕が撮っているのは、ほんの一瞬で、替えの効かない宝なのだと。
だから、撮る写真は必要最低限にして、全部現像するのが僕のスタイルだ。
最近撮った中でお気に入りなのは、『シャボン玉』。シャボン玉はすぐに消えてしまうけど、この写真では永遠だ。だから、最近はシャボン玉のことをずっと考えている。
夏休みに写真部全員で旅行に行くことになった。
目的地を決める議論が展開され、部室はいつもに増して盛んだった。
「俺は、夏だから自然が多いところがいいな。」
開口一番にそう言ったのは、同級生の岡田玄だった。
幼稚園からの仲で、ガキ大将という言葉がとても似あう。偶にケンカはするが、最後にはきちんと仲直りする。いい奴だ。
「嫌よ、海がいいわ。夏の山は虫がすごいもの。私、虫は嫌いなの。しかも、海の方がきっと涼しいわ。」
すっと割ったのは、東堂麗華。
彼女は、学校創立以来トップの才女と言われている。天は二物を与え、写真の才能もあり、グランプリを総舐めにしている化け物でもある。
議論は続いた。
しかし、困ったものだ。人数的にも十対十で、山派と海派で割れてしまった。
お互いに引く気配がない。硬直した空気が部室に漂う。
ガラガラッ
その空気を外へ逃がしたのは、副顧問の田中だった。
「先生、山と海どっちが好きですか。」
と後輩が元気よく聞いた。圧倒された田中は、
「うむ、、、。どちらかと言えば、海だな。」
議論はここに終結した。
東堂らはガッツポーズ。岡田や僕は無念だった。
状況が掴めない田中は不思議そうに部員を眺め、入り口に立ち尽くしていた。
夏休み本番。顧問の花松先生と副顧問の田中が引率し、僕たちは海へ向かった。
ただ、今日は魔法世界アスカの発売日。わずかに僕のテンションは下降していた。
次回、Bubble_Magic_2
乞うご期待。
感想等ご自由にどうぞ。お待ちしております。