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色音  作者: 鈴ほっぽ
13/27

第十一話 偶然

まさかの日付変わると同時に投稿ごめんなさい



「ただいま」

「おかえり」

八坂と帰路に着いてから、数十分後。

俺は家に帰ってきた。

玄関を開けながらただいまと言うと、妹がリビングに続く扉からニョキっと顔を出して出迎えてくれた。


部屋に戻って、着替える。

今日描いた絵を机に置いて、眺める。

「・・・さすがに雑だなぁ」

勢いだけで描いていたせいか、線は所々ふにゃふにゃしているし、色も所々はみ出している。

薄い灰色と濃い灰色が合わさって変な灰色になっている・・・

というか俺、ここなに色を塗ったんだ・・・?

ノリだけで描くと、その時の記憶が全くないのが俺だ。

描いている時はあんなにも色鮮やかな世界が見えていたはずなのに、今はいつもの灰色の世界。

不思議なもんだなあほんと・・・

コンコン

「ん?」

と、扉を軽く叩かれる。

「ごはんだよー」

詩葉が呼びに来てくれたらしい。

「おう、今行くよ」

ぱぱっと荷物をまとめて部屋の端っこに追いやる。

今日の夕飯はなんだろうな。

そんな思いを胸に、扉に手をかける。

とその時

ぴりりりりり

「あん?」

部屋着のポケットに突っ込んだ携帯から、着信音。

ポケットから取り出して画面を見ると、知らない番号からだった。

・・・間違え電話か?

それなら無視してもいいんだけど・・・

たまに何回もかけてくる人いるからなぁ・・・

そう思ったので、応答ボタンを押して携帯を耳にあてる。

「もしもし」

『・・・・・・』

だが、その電話をかけてきた主は、何も言わない。

「・・・もしもし?」

もう一度、確認をするが、

『・・・・・・』

あーこれ、あれか、いたずら電話ってやつだな。

まだこんなことするヤツいたんだなぁ。

「あの、切りますよ」

こういうのはさっさと退散するに限る。

さ、通話終了ボタンをおし・・・

『ガタッ・・・ゴソゴソ・・・とんっとんっ』

・・・物音?

なんか慌ててる感じだけど・・・

「えっと・・・」

どうしたらいいのか分からなくなる。

なんなんだ?

『・・・とんっ・・・とんっとんっ・・・とんっ・・・』

それから、何かをトンっと叩く音が、細かに聞こえる。

なんだこれ・・・

「あ、あの、なんなんですか?」

本当に訳が分からず、少し強めに言う。

すると、

『ぶつっ』

「あっ」

電話を切られた。

「なんなんだよ・・・」

今の気持ちを口に出しつつ、携帯をしまう。

って、こんなことしてる場合じゃない。飯だ。飯。

部屋から出て、階段をおりる。

ふわーっと夕飯の匂いが鼻腔をくすぐり、食欲が湧いてくる。

そしてリビングに入る頃には、俺の頭の中は夕飯に占拠され、さっきの電話のことは綺麗さっぱり忘れていた。



翌朝


土曜日だ。

学校は休み。最高だな。

つまり、今を生きる男子高校生な俺は、休日という最高の日を怠惰にまみれた生活をしても誰にも責められないわけで。

つまり、ガッツリと昼まで惰眠を謳歌していた。

「あー・・・よく寝たわ」

自然と目が覚め、ぐーっと伸びをして満足気な独り言。

いやぁ、やっぱり惰眠はいいねぇ、気持ちがいい。

スマホを手に取って、画面を見る。

すると、

「ん?」

誰かからメッセージが来ていた。

・・・八坂か?

そう思ったけど、違った。

八坂なら、メッセージアプリで送られてくるはずだ。

このメッセージは電話番号でのショートメッセージ。

一体誰からだ?

【桜木です。あれから、調子はどう?もし、絵を描いたのなら、一度見せて欲しいです】

桜木さんからのメッセージだった。

ふーむ、そうだな。

「昼飯も兼ねて行ってみるか」

そう思い立ち、俺は服を着替えて家を出た。



「いらっしゃいませ。あら、詩苑くんじゃない。よく来てくれたわ」

「どうも」

自転車で十数分。

駅の近くにある桜木さんのカフェは、オープンしてから大きく転ける。なんてことは無く、そこそこ繁盛しているようだ。よかった。

「ごめんねー、少し忙しいから、お話は落ち着いてからでもいい?」

そう言う今日もインパクトの塊な桜木さんは、首筋に汗を浮かべて、本当に忙しそうだった。

「ええ、もちろん。俺も昼飯を食べに来ましたから」

「あら、そうなの?嬉しいわ」

「とりあえずコーヒーをお願いします」

席に案内されて、俺はまずコーヒーを頼む。

ここのコーヒーはほんとに美味しい。

何度でも飲みたくなる。

「はぁい。ランチメニューはコチラよ」

「ありがとうございます」

ランチメニューを受け取って、一息つく。

周りを見回すと、店内は中々賑わっていて、中には既に常連客になっているような人もいた。

さて、昼飯はー・・・っと・・・

ふと目に止まったのは、ゴンザレススペシャルサンドと書かれたサンドイッチ。

・・・気になる。インパクトの強さでめちゃくちゃ気になる。

写真が付いていないのがこんなに悔やまれるなんて・・・メニュー名だけで気にならせて、頼ませるという策略か・・・?

一体どんなスペシャルなサンドイッチなんだ・・・うごご・・・

「おまたせ、ラブマックスコーヒーです」

悩んでいると、桜木さんがコーヒーを持ってきてくれた。

「ランチはお決まり?」

「あ、えーと・・・」

「ふふっ、アタシのおすすめはゴンザレススペシャルサンドかしらねぇ・・・当店の人気ナンバーワン商品よ」

え、そうなのかよ。

「なら、それで」

人気なら悩む理由はない。

どんなものが来ても、今は腹が減ってるからな。

「はぁい。少し待っててね」



それから、30分ほどだろうか。

俺は桜木さんのカフェでのんびり過ごし、ある程度店内が落ち着くまで待った。

桜木さんが作ったゴンザレススペシャルサンドは、素材にこだわっているらしく、パンからレタス、ハムやチーズにトマトまで、全てが桜木さんが自分で様々な農家を訪れて頂いたものだそうだ。

ボリュームがたっぷりで、ランチにしては少し腹が膨れすぎたと思うほど、サンドイッチのサイズが大きく、女子高生なんかは食べ切るの辛いんじゃないんだろうか。などと思っていると、隣の席にいた女子高生二人組はペロリとこれを平らげていた。

その光景に少し驚きつつも、なにか時間を潰すものは無いかと、スマホを開いた時。

「詩苑くんちょっといいかしら」

と、桜木さんが突然耳打ちしてきた。

「ぅおっうっ・・・なんですか急に・・・あと耳打ちやめてくださいびっくりする・・・!」

「あら、ごめんなさい。それでね、相席のお願いなんだけど、いいかしら?」

なに?相席?

ちらりと周りを見る。

他にも席は空いているようだけど・・・

「わざわざ?」

「ごめんなさいね。実はこれから予約が入ってて、空いてる席も埋まっちゃうのよ」

「あぁ、そういうことなら」

「ありがとうね。じゃ、お願いね」

「ん?」

お願いね。と言った時の桜木さんは妙に笑顔だったような気がした。

変な違和感を抱きつつも、コーヒーを口に含む。

うん、美味い。

やっぱりここのコーヒーは最高だぜ。

なんと言ってもこの香りと苦味がマッチしてそりゃもう最高以外の言葉がでないな。

「こちらになります」

桜木さんが相席する客を連れてきたようだ。

コーヒーを堪能しつつ、ちらりとその客を見る。

【き、奇遇。ですね。】

「・・・・・・」

あれ、夢でも見てるのかな?

八坂がいるように見えるんだけど。

「お願いね」

あー・・・なるほど、さっきのお願いね。はそういう事ね。ハイハイ。理解した。

ゴクリとコーヒーを飲みこんで、カップを置く。

そして、八坂に向かって。

「奇遇・・・だな」

と、返した。




【まさかシオンさんがいるなんて、思ってませんでした】

「俺もまさか八坂が来るとは思ってなかったよ」

俺の向かいの席に座る八坂は、私服姿で、とても可愛らしかった。

色がわからなくても可愛く見えるとはな・・・さすが八坂と言ったところか。

【何か用事でもあったんですか?】

「ん?あー、昨日描いた絵を桜木さんに見せようと思ってさ」

【なるほど、それなら、私もです】

「・・・え?」

【私も、桜木さんに曲を聞かせてあげようかと思って】

何をどうしたらそうなるんだ・・・?

【驚いてます?】

「まあ、そこそこ・・・」

【理由はちゃんとありますよ】

理由はあるだろうねそりゃ。

【シオンさんは、私の曲を聴くと色がわかるんですよね?】

「え、うーん・・・わかるというよりも」

感じる。

と言った方が正しいような・・・

「感じる・・・っていう感じかなぁ・・・」

【感じる・・・?】

八坂は首をかしげていた。

「えーっと・・・あんまりハッキリと覚えてないってのもあるんだけど・・・しっかりと見えるって言うわけじゃないんだ。ただ、何もないってわけじゃないのはわかる」

【んー・・・じゃあ桜木さんにも聞かせてみないと分からないってことですね・・・】

「多分な」

って、なんで八坂は桜木さんに曲を聞かせようとしてんだ?

「なんで桜木さんに聞かせたいんだ?」

【桜木さんもシオンさんと同じように色が分からないって聞いたので、もしかしたらって思って】

・・・いつ聞いたのそれ?

「そ、そうなのか」

【あ、桜木さんとID交換したので、よくお話するんです。それで、昨日色がわからないことを聞きました】

なーるほどそういうことね。

「おまたせ」

と、話していると桜木さんが来た。

「もういいんですか?」

「ええ。お客さんも落ち着いたし。バイトの子に任せるわ」

「え、バイト?」

バイトいたのか。

カウンターの方に目をやると、エプロンを着た美人なお姉さんが接客していた。

「ね?」

「そういうことなら」

「じゃ、奥に行きましょ」

【私も、いいですか?】

「ええ、もちろんよ」

そういうわけで、俺達は桜木さんの店の奥の部屋に通された。



「それで、お話って?」

「昨日、学校で絵を描いたんです。ちょっと見て欲しくて」

「へぇ、本当にやる気出たのね?」

「ええ、お陰様で」

そう言いながら、俺はカバンから昨日描いた絵を取り出した。

「楽しみね」

【私も、ちゃんと仕上げまでした絵はまだ見たことないので、楽しみです】

二人ともウキウキしながら、こっちを見ている。

「勢いで描いたから少し汚いんだけどな・・・」

「いいのよ。絵は気持ちが大事なのよ?」

桜木さんがそう言うなら・・・

「じゃあ、はい」

心を決め、裏返していた絵をひっくり返す。

「・・・へぇ」

桜木さんはじっくりと、舐めまわすように絵を見る。

八坂も、目を見開いて見入っている。

十数秒ほどたっただろうか。

桜木さんは顔を上げて、

「凄いじゃない。長い間描いていなかったのに、こんな絵を描くなんて」

と、笑顔で絶賛してくれた。

【昨日見たものよりも、線が綺麗になってますね】

八坂も笑顔で褒めてくれた。

「よかったです。それで、ですね。まだちゃんと踏ん切りがついていなくて・・・」

「あら?そうなの?」

実は、まだ絵を描く事に少し抵抗がある。

だからこそ、この絵を持ってきた。

最後のひと押しになるかと思って。

「大丈夫よ?アタシもそんな感じだったから」

「え?」

そうなの?

「聞きたい?アタシの昔のお話」

「いいんですか?」

「いいわよ。もう過ぎたことだからね。朱音ちゃんも聞きたい?」

こくこく。と八坂も気になるのか、直ぐに頷いた。

「そうねぇ・・・どこから話そうかしらねぇ・・・」

そう言いながら、桜木さんはゆっくりと過去のことを話し始めた。



鈴ほっぽですこんばんは。

今回は遅れてしまって申し訳ないです。

次回はしっかりと投稿します。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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