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ヤクザと勇者


俺は、ヘビモスさんが起こした地震で荒れた草原を踏みしめて町に向っていた。町の名前はグロードという大きな町らしい。後ろから付いてくる勇者が教えてくれた。


背後に突き刺さる視線を感じながらヘビモスさんの影響で歪んだ道を進んでいくと目の前に壁が広がっていた。遠くから見ていたときはなんとも思わなかったが近くで見ると圧倒される。地球では、なかなか見られない光景だろう。




「広い壁だな…」


「この辺は巨獣の森が近い影響で強力な魔物が出ますからね。このぐらいは当然です。グロードは魔物の素材を使った武具やアクセサリーが特産物です。その格好だと魔物に襲われたらあっさり食われると思うのでここで揃えることをお勧めしますよ?」


「はぁ、助言ありがとうございます勇者様…もしかして、ずっとついてくるんですか?」


「いえ、私のことはおきにならさず。貴方が通る道がたまたま私の目的の道だっただけです」


「たまたまという割にはやたらと俺に話しかけてるきがしますが」


「…それは、貴方の気のせいですね」


「…ソッスカ」




表情を変えずに淡々と話すので相変わらず感情が読めない。だが、ここまで露骨だと流石に分かりやすい。


俺は、たぶん勇者に疑われている。疑われている理由は分かるがやましいことなど一切していないので勘弁して欲しい。


いや、可愛い子が話しかけてくれるのは嬉しいよ?だって、この目つきで前世では女どころか男すら話しかけてくれなかったんだから。外を歩いて、話しかけてくるのは職質のお巡りさんばかりだったなぁ。


そう思っていると門が見えた。おそらくあそこから町に入れるだろう。チラッと後ろの勇者を見ると目元を覆う怪しげなマスクと麦藁帽子をどこからもなく取り出して装着していた。




「何をしているんですか?勇者様」


「このまま入ると煩いので変装しています。あと、街中では勇者と呼ばないでください。目立ちますので」


「…別の意味で目立つと思いますけど?」


「勇者だと分からなければいいんです」


「そりゃ、そんな変な仮面つけている人が勇者様だとは思わないですが…じゃあ、なんとお呼びすればいいんですか?」


「へ…変な仮面!?お気に入りなのに…ゴホン。そうですね…クレアと呼んでください」


その仮面お気に入りなんだ…勇者の感性はどうやら特殊らしい。


「分かりました、クレアさま」


「敬称はいりません。目立ちますので。そういえば、貴方の名前を聞いていませんでしたね」




いや、その仮面つけている時点で目立つからと心の中で突っ込みながら、名前を名乗るか決めかねた。ここで名乗ると俺の情報を勇者に与えるわけで…悪の子としては都合が悪いだろう。


偽名を使うか?たぶん勇者も偽名だろうし。隠すならそれもありかもしれない。


チラッと勇者の顔をうかがうと仮面から覗く紫色の瞳がこちらをじっと見つめていた。


「…や…ヤクザ」


「ヤクザ?それが貴方の名前ですか?」




結局俺は、視線に押し負けてそのまま名乗ることにした。




「変な名前ですよねー」


「…変わった名前ですが別に可笑しくは無いですよ。私は響きが良くていい名前だと思います。ヤクザさん」




自分の名前をなじっていたらまさかの返答が返ってきた。ヤクザっていい名前なのか?


やっぱり、勇者は感性が変わっているなと思いながらも悪い気はしない。




「じゃあ、クレアさん。俺は町に入るけど…付いてくるの?」


「その言い方だとまるで私がヤクザさんに付いてきてるようじゃないですか。あくまで道が同じだっただけです。さぁ、先にいっててください」




そういいつつ一定の距離を保ちながら付いてくる勇者。


どうやら、そのスタンスは崩さないらしい。


もう流石にそれは無理があるんじゃないかと思いつつ俺は、変わり者の勇者と門をくぐった。



◆◇◆◇




門を潜ると、思ったよりも広かった。しかし、あちこち物が散らばっており人々が慌ただしく動きまわっていた。




「なんかすげー活発っていうか混乱しているなこれ…なぁおっさん俺は中に入りたいんだがどういう状況だ」




俺はカウンターらしきところに向かい忙しそうに作業している従業員らしき中年の男性に声を掛けた。




「なんだ…見れば分かるだろ!さっきほど、巨大な地震が発生して町に甚大な被害が出ているんだ!さわいなことに死人が出たという報告はないが、けが人が続出でその救助に追われている!…ここだけの話だが監視の報告だと巨大な魔物がここに向かっているらしい。それが、冬眠しているはずのヘビモスかも知れないと聞いている。だから、ここの門は通っていいから王都の方向に逃げたほうがいいぞ」


「あっ…なるほど」




俺は、それで状況を理解した。あちこちに散らばったものは地震によって荒らされたものだろう。



「そういえば、ヤクザさんが転がっていたところの近くに巨大な亀裂が出ていましたね。恐らくそれが原因でしょう。なぜにあんな亀裂が出来たのか不明ですが…。まったく、新しい悪の子はとんでもないことをしてくれたものです。まぁ、被害者のヤクザさんならそこあたり何が起こったのか詳しいでしょうし、後でお願いしますよ」




と勇者。


俺は、嫌な汗が出てくるを感じた。


その地震というのにものすごく心当たりがあった。

あれである。俺の背負い投げで思いっきり地面にたたきつけたのが原因だろう。


いや、言い訳させてもらうと、あのままだと俺はヘビモスさんに潰されていたわけで…無我夢中でやってしまったというか…

ついでに言うとあのまま走り続けたらこの街に衝突していたわけで…巻き込むのを避けたわけなんですよ。


だが、言える訳が無い。勇者が後ろに控えているのだ。もし、俺が原因だって言ってしまえば悪の子だってばれる可能性が高い。そうなって、勇者が敵対したら俺はあっという間に天に召されることになるだろう。




「…その巨大な魔獣なら先ほど勇者様が倒したぞ」




俺は、話題を逸らすようにその危険が去ったことをおっさんに報告する。




「なにっ!それは本当か。おい!お前らすぐに魔獣の様子をみてこい!勇者様が撃退成されたようだ!」




おっさんが大きな声でその場にいた人に聞こえるようにいうと歓声が沸きあがった。中には泣いて喜び人までいる。その直接な原因は俺じゃないとはいえ、引き連れたのは俺なわけで…いたたまれないきもちになってきた…。




「流石勇者様だ!」

「おぉ、女神の使徒よ…感謝いたします」

「なにっ!勇者様がこの町の近くにいらっしゃるのか!一目見ておかなければ!」




ワイワイと騒ぎ出して勇者を褒め称える声がそこかしこに広がった。


さっきほどの余裕が無い表情とはうって変わって笑顔である。




「目つきの悪いあんちゃん報告ありがとよ!俺は警備隊長のモーガンだ。なんで、そんな情報を知っているのかは知らないがさっきほど慌てて戻ってきた監視から魔物が倒れている姿が確認できた。ここの処理に回されたときは俺の運命もここまでかと思ったが、危険手当でガッポガッポだぜ!勇者様に感謝だな!」


「目付きが悪いのはほっとけ」




俺の背中をバシバシと叩きながら豪快に笑うおっさん。




「じゃあそういうことで、町に入らせてもらうぞ」




とにかくいたたまれない俺はこの場を離れようとそそくさと門を潜ろうとすると俺の肩を掴んで引き止めるおっさん。




「…おい、おっさん。初めに門を通っていいといわなかったか?俺は、町に入ってゆっくりしたいんだが。こっちはいろいろあったせいで休みたいんだよ」


「あーそれなんだが…あくまで緊急事態だから開放していただけで、重要な情報を提供してもらったあんちゃんには悪いんだが危険が去ったいま検問しなきゃなんねーんだ。これが俺の仕事でな。俺としてはそのまま通してやりたいんだが不正になっちまうんだ」




少し不機嫌な俺に対して、おっさんは申し訳なさそうにいった。




「わかったよ。その検問とやらをうければいいんだろ」




仕事ならしかたないと割り切っておっさんの目の前に座る。俺としては、異世界生活初日だというのに酷い目にあって精神的に疲れている。おまけに後ろに勇者がついてきているので気が気でならないのである。


まだ、前世のほうが平穏な日常をおくれていたなーと遠い目をしながら異世界に来たことを後悔していた。




「なんだ、あんちゃん。そんな顔していると幸せが逃げるぞ?すぐに終わるからまっていろ」




おっさんはそういうなり机の下から水晶と用紙を取り出した。




「早速だが、名前と町に来た用件を教えてくれ」


「名前はヤクザ。用件は…平穏な生活を求めてきました」


「変わった名前だなぁ。用件もヘンテコだし。色々と変わったやつだな。ともかくこの町の移住希望という解釈でいいか?」




変わってるって連呼するのは止めてくれ勇者に余計怪しまれるじゃないかと思いつつ、実際異世界人からすると俺は変わっているように見られるのは仕方ない。




「この町で暮らすかどうかは分からんが平穏なら暮らしたいとおもっています」


「ふむ、移住を検討中とな…で後ろの変な仮面を被ったお譲ちゃんはあんちゃんの連れか?」


「へ…変な…」



変なよばりされて仮面に触る勇者。やっぱり変なんだよそれ。



「…いや。知り合いではあるけど連れではない。勝手についてきているだけだ」


「…付いて来てません」




おっさんから質問されるということはそう見えるということで…そろそろ無理があるんじゃないかな。



「まぁいいか…じゃあ、最後にこの水晶に触れてくれ」


「なんで、触れる必要があるんだ?まぁいいけど」



そういって水晶に触れる。俺の後ろから勇者が水晶を覗き込んできた。


ちょ…近いって。

まぁ、綺麗だしじっくり見たい気持ちは分からんでもない。こういうところは女の子らしいな。


俺は水晶をじっくり見つめる勇者にこういうものが好きなのかなと俺は解釈した。



「うん…問題ないな。町の滞在を許可する。じゃあ通行税銅貨5枚だ」


「金取るの!?」


「なんだ、住民と冒険者以外は町に入るのに通行税取るのは当たり前だろ?どこの田舎者だ?」



おぉう。まさか町に入るだけで金を取られるとは思わなかった。だが、そんなもの異世界に来たばかりの俺が持っているはずが無い。



「…どうした?もしかして金ないのか」


「…実はそうなんだ」


「なら、銅貨5枚程度の品物でもいいぞ?俺が交換してやる」



おぉ、このおっさん俺に気を使ってくれるのか。いいおっさんだ…。でも、ポケットをまさぐったが何も無いんだ…。せめて、最低限の装備を持たせてくれよ邪神…。



「…あるのは今着ている服だけなんだが…もしかして、入るのに脱げとかいわないよね?」


「そんなことは俺がさせないが、裸で公衆の面前を歩いたら速攻檻にぶち込まれるぞ」


「それは勘弁して欲しいですね…」



それにしても困った。町に入ればどうにかなると思っていたがその前に躓くとは…



「この方の通行税は私が持ちますので入れてあげられませんか?」



困っている俺を見かねたのか勇者が前に出てカウンターにすっと硬貨をおく。


…女神か?いや、勇者だった。



「いやいや、勇者さ…クレアさん。流石にそこまでしてもらうわけには…」


「遠慮するのは結構ですが、このままだと町に入れませんよ?因みに、町の外で野宿することは夜になったら魔物が活発に動きまわりますのでお勧めしません。魔物におわれていたヤクザさんならその危険性を理解していると思いますが」





勇者の正論にぐぅのねも出ない。なんでこんなときは正論なんだろう。さっきまで付いてきた時の苦しい言い訳はどうした。



「あんちゃん、ここは嬢ちゃんのご好意に甘えとけ。…ってこれ大金貨じゃないか」


「私の手元にはそれしかないのでそれでお願いします、おつりは不要ですよ」



流石勇者ブルジョアである。一文無しの俺との差よ…



「どこぞのお貴族様だよ…普通ならありたがく受け取って喜ぶところだが…おつりは受け取れないな。俺は、この仕事に誇りを持っているんだ。受け取っちまったら部下に示しがつかねぇ」



おっさんが困ったように頭を掻きなら断る。



「それでしたら、ヤクザさんに渡してあげてください。町に入って一文無しのままですと何かと不都合だと思いますので」


「えっ?」



いまなんと?



「おぉ、そりやいい。お譲さんに足を向けて眠れないな。よかったなあんちゃん。小金貨4枚、大銀貨4枚、銅貨95枚っと…ほれ、小金貨と大銀貨は小袋に分けといてやったぞ。皮袋は俺からのサービスだ。俺のお古だからボロッちいがないよりはましだろ。確認してくれ」



おっさんが手際よく皮袋に素早くぶち込むと俺にポンと渡してくる。一見雑に見えるが小袋に分けるなどいがいと丁寧である。仕事に誇りを持っているという話は本当なんだろう。


それよりも…


俺は手元の袋を確認するように揺するとジャラジャラと音が鳴る。


大金貨1枚がどれほどの価値があるか分からないが、手から伝わる袋の重みからして決して安くないだろう。



「ヤクザさん。後ろに人が控えていますので町にはいったほうがいいですよ」


「あ…はい」



突然のことに立ち尽くしている俺に相変わらず読めない表情で注意してきた。



「おつり確認しなくていいのか?後から足りないといちゃもんつけてきても知らんぞー?」



俺は、おっさんの忠告を受けながらも、そのまま町に入っていく。


こうして俺は、勇者の借りがやばいことになってることに冷や汗を掻きながらも無事町に入ることが出来た。


まぁ、平穏に暮らすという願いがかないそうだとこのとき俺は思っていた。



Q勇者いい人過ぎませんか?

A「困っていたら助けて当然です」


Q勇者は主人公をどのぐらい疑っているの。疑っている割には助けすぎじゃない?

Aヘビモスに追い掛け回されていた主人公が怪しくないわけが無い。でも、それならリタのヘビモスさんをけしかけた話と合わない。こういう認識です。勇者視点で後で書こうと思います。

助けているのは、少しの打算はありますが勇者がお人よしだからです。


Q勇者いい人なのになんでリタちゃんは怖がっているの?

Aヒント リタの悪戯


Q勇者ってもしかして変わっている?

A「ちょっと変わったものが好きなだけです。変わったものが好きだからといって変人扱いするのはいけませんよ」(勇者)

「変人とはいってないでしょ。…もしかして、気にしてます?」(ヤクザ)

「気にしてないです」(勇者)


Qヘビモスさんかわいそうに…。もう出番はないの?

Aヘビモスさんは良く考えたらただの被害者ですね。だすかもしれません


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