ヤクザ死す!?
やめて!ヘビモスの力で、町ごと薙ぎ払われたら、この作品のプロットまで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないでヤクザ!あんたが今ここで倒れたら、麗しい女神の思惑とこの作品はどうなっちゃうの? 希望はまだ残ってる。ここを耐えれば、ヘビモスに勝てるんだから!
次回、「ヤクザ死す」。次回作スタンバイ!
よし新しい悪の子を呼び込まないとな (女神)
町を背にヘビモス相手に向きなおる。いわゆる背水の陣の構えで迎え撃つ感じになった。
「ようやく諦めたか…その体喰らってやるわ!」
足を止めた俺にヘビモスはその巨大な口を開けて俺を飲み込もうと襲い掛かってきた。
巨大な口は容易く俺を飲み込めるだろう。だが、このまま飲み込まれるわけにはいかない。
俺は、ヘビモスさんに向って構えた。
迫り来る地鳴りは俺とヘビモスの距離が縮むほど増していき砂ぼこりとともに巨体が迫る。
そして、ヘビモスが俺を飲み込もうとする刹那俺は横に跳んだ。
横にガチンと巨大な音を立てて閉じる口。間一髪である。しかし、飲み込まれるのを回避しても胴体の脅威は健在である。このままだと潰されて死ぬことは目に見えていた。
だが、俺の狙いは回避ではない。
口を閉じた頭部の下に跳ぶ。
そうしてヘビモスさんの頭部の下に潜りこんだ俺は、その下あごを掴み取った。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺は押しつぶそうとする推進力を利用してヘビモスの頭部を下に引き込むように引っ張った。ヘビモスの頭部の重みが全身に乗っかる。
「グゥ!?」
ヘビモスは、不意に顎に加わった俺の力にうめき声を上げて頭を地面に叩きつけられる。
すると、胴体は俺を襲い掛かった推進力で頭からひっくり返るようにその巨体を空に浮かせた。
「くらえぇぇぇぇ、背負い投げぇぇぇ!」
ヘビモスの巨体が前転するように背中からたたきつけられる。
「ヌゥゥ!!」
ヘビモスのうめき声とともに巨大な亀裂がヘビモスの背中から発生する。そして、巨体から生まれる衝撃が大地を揺らした。その衝撃は遠くの町まで及んでいるだろう。
投げた体制で宙に放り出された俺は、まともに受身を取れずに地面にたたきつけられた。
「ぐぅ…どうだ…やってやったぞ…」
起き上がろうとすると起き上がれないことに気付く。
全身が動かないどころか、動かそうとすると痛みが走った。どうやら、ヘビモスの背負い投げは無茶だったらしい。それも当然である。邪神の力で身体能力が人間を止めていたとしてもヘビモスという化け物の攻撃を受けきれるはずが無い。加えて、ヘビモスに追いかけられて体力も限界に近かった。むしろ、生きているのが不思議なぐらいである。
ヘビモスの巨体を投げるという偉業を成した俺は、その代償として限界を迎えたということだろう。
やりきったと思っていると地鳴りが響き振動が全身をゆらした。
「少しばかり驚いたぞ…よもや、諦めたと思ったらこれを狙っていたとはな。だが、二度目はくらわんぞ」
「…別に狙ったわけじゃないんですけどね」
どうやら、ヘビモスさんが起き上がったらしい。仰向けに倒れている俺の視界にはヘビモスさんの顔が映っていた。
まぁ、あんなもので倒せるとは思っていなかったが頭から落としたんだから少しぐらい効いても良いのに…
すぐに殺すつもりは無いらしい。
心なしかさっきほどの怒りの声は静まっている気がした。
「あのー、もしかしてこのまま見逃してくれたり?」
「なわけ無かろう。このまま殺しても良かったのだがな。仮にもワシを投げた人間だ。最後の言葉ぐらいは聞いてやろうと思ってな。言い残すことはあるか?」
「そうっすか…平穏に暮らしたかったなぁただそれだけです。あとは、邪神くたばれ」
「…悪の子とは思えん発言だな」
ヘビモスさんがそういってゆっくりと前足を振り上げた。
その足で潰してくれるのか…痛みを感じるまもなく死ぬだろうなぁ
パラパラと顔に土を浴び、目を閉じてそんなことを考える。
どうか、来世は平穏に暮らせるようにと願った。
ドゥン!と地面を砕く音が響いた。
―あぁ、死んだ
…死ぬときって音が聞こえるんだなぁ
そんな疑問を持っていると澄んだ声が聞こえる。
「その足を退けなさい。私の前で国民を殺させるわけには行きません」
目を開け、声が聞こえたほうをむくと―俺は呼吸を忘れた。
女神。そんな単語が頭によぎった。
決してクソ邪神のような紛い女神ではない本物の女神がそこに光臨していた。
美しいという言葉だけではいい表せないほど整いすぎた顔立ち、どこかミステリアスな雰囲気を醸し出す紫色の瞳は見たものを引き寄せる魅力を放ち、肩の後ろでゆらゆらと靡く金髪からは、淡い光がオーラのようにかすかに漏れあがめたくなるほど神聖な気配を感じた。加えて、鎧の上からも分かるほど胸元は優美な曲線を描き、鎧の隙間からかすかに覗く陶器のように滑らかな美脚がエロイ。つまり、スタイルがよすぎるというより完成されている。彼女の身にまとう鎧も美しい装飾がほどごされているが彼女の美貌の前には装飾としての役割をなさないだろう。
そんな女神の発言をヘビモスはあっさりと飲み、振り上げた前足をのけた。
「き、貴様人間か?」
ヘビモスさんがさっきまでの怒りは鳴りを潜めて、声を震わしていた。
あれ…?
「…数年前、貴方がこうして暴れまわったときも一度お会いしているのですがね。勇者…と名乗れば分かりますか?」
ヘビモスさんがびびっている…俺には、女神の如き超絶美しい少女にしか見えないが。
この子が勇者なのか。もっとこう歴戦の漢みたいなのを予想していたが…でも、リタとヘビモスさんの反応で強いのだろう。
どうやら、リタがうまく勇者を連れてきて来てくれたようだ。
これで勝てる!
俺は、姿が見えないリタに感謝した。
「ぐぬぅ…貴様この化け物を誘い込むのが狙いだったか」
「ははっ、ヘビモスさん」
「ふむ、どうやら大精霊リタが言っていたことは本当のようですね。では申し訳ありませんがここで眠っていただきましょうか」
「ま…まて、我はこやつと邪神の眷属に用があっておぬしは関係ないはずだ。」
「…?意味が分からないことを。その大精霊リタが言ったのですよ。『私の主人がヘビモスを目覚めさせ、王都にけしかけた。止めたければヘビモスのところに向かい打ち倒すがいい。ついでに、ヘビモスと戦い終えたら次は主人が向かう、精々後ろに気を付けるんだな』と」
「「は?」」
俺とヘビモスさんが同時に疑問の声をあげた。
いやいや、リタなんで勇者さんに喧嘩売っているの?お前誰構わず喧嘩売らないときがすまないの?しかも、その説明だと俺がヘビモスさんを勇者にけしかけた悪者じゃん!いや、その通りだけども!?あくまで、もっとこう穏便に助けを求められなかったのかーい!
「悪名高い大精霊の言葉に乗るのは癪でしたが、巨大な地鳴りを感じ跳んでみたらその通りでしたので…もういいでしょう。あなたをけしかけた、凶悪な悪の子を逃がすのは困ります―いざ参ります。安心してください殺しはしません」
そういって勇者は腰にある剣を鞘に収めたまま構えたかと思うと消えた。
「何か勘違いしているぞ!?目の前にいるそやつがのが悪の…グベラッ!」
何かを言いかけたベビモスさんが突然ぶっ飛んだ。
「ふむ…、殺さずに倒すのは少々骨が折れそうですね」
ヘビモスさんが居た場所には消えた勇者がいたと思うとまた消えた。
「ちょっとまてぇ!ワシは都なんて…グボォ」
「クロードの町に向って進行していた貴方に弁明はありません」
また、何かを言いかけ、同様に吹き飛ぶ。
もうそれは、蹂躙だった。リタが勇者はやばいといった意味が良くわかる。ヘビモスさんがやばいことは、殺されかけた俺が良く知っている。それを、まるで子ども扱いをするように次々と転がしているのだから。
俺は殺されかけた相手だというのにヘビモスさんに同情した。
「いい加減にしろぉ!!」
話を聞かない勇者に転がされたヘビモスさんが激しく怒り出し、それに呼応するようにこれまで以上に地面が激しく揺れる。ヘビモスさんの怒りを表すように皮膚がみるみる赤く染まっていく。
これあれか?ピンチになったら変身して真に姿を現す的なあれか?
これは流石に勇者でもやばいんじゃない―
「これ以上私の国を荒らさないでください」
「グボォ!」
ヘビモスさんの頭に勇者の剣がめり込み、そのままあっけなく地面に突伏した。
砂埃をあげ沈黙するヘビモスさん。
俺は、理不尽な勇者の圧倒的な力にあんぐりと口を開け、驚くしかなかった。
…リタお前なんで本当に勇者に喧嘩売ったし。
ともあれ俺は、ヘビモスさんという脅威から勇者に命を救われたのである。
…
「勇者様…そのー剣先でツンツンするのは止めてくれませんか。俺、あの巨大な魔獣に襲われて動かすだけでも痛いんです」
「…いえ、動いていなかったので、てっきり死んでいるのかと」
「そっすか…」
「…」
「…」
沈黙したまま、俺の顔を凝視する勇者様。
もしかして、俺疑われている?
勇者の眩しい美貌にどきまぎしながら表情を伺うがミステリアスな瞳からは読めなかった。とりあえずこの微妙な空気を変えないと…
「勇者様、助けてくれてありがとうございます。危うく死ぬところでした。このご恩は忘れません」
「…いえ、人々の平和を守るのが勇者の務めですから」
俺が感謝の言葉を述べると勇者はしばしば目を瞬かせその剣を腰に戻した。どうやら少しは警戒を解いたらしい。
「どうして、ヘビモスに追われていたのですか?」
あー、やっぱそこ突っ込むよね。
「巻き込まれました」
俺は素直に答えた。
「…そうでしたか。良く生き残れましたね」
「俺もそう思います」
俺のあっさりとした返答に勇者は長いまつげを瞬かせる。
「動かないでください。…少し動悸が早いですね。…なんで目を逸らすのですか?」
「いや、誰でもそうなると思います…」
勇者がしゃがんでおれの胸に手が触れる。
こんな可愛い子に突然ボディタッチされると女の子とまともに話したことがない俺は当然緊張するわけで…恥ずかしくて目を逸らしてしまう。ついでに女の子特有の匂いが鼻をくすぐっていたたまれない気持ちになる。
「『回復』」
「おぉ?」
勇者が何かいうと全身に暖かいものが流れてきた。凄く気持ちいい…例えるなら温泉につかったような感覚だ。
「どうですか?これで痛みは引いたと思いますが」
言われて体をゆっくり起こすと本当に先ほどの痛みが嘘の様に引いていた。体のだるさはあるがほぼ全快といっていい。
「…すげぇー!」
俺は、思わず声をあげてしまう。これが魔法というやつだろうか?ファンタジー的な世界だからあるとは思っていたがこうして目の当りにすると興奮せずにはいられなかった。
マジ凄い。俺ももしかしたら使えるのか?おらワクワクするぞ!
「…ただの『回復』でこんな興奮する人始めてみました」
はっ!いかん
勇者の不思議なものを見るような視線で俺は我に帰る。すこし、変なやつだと思われたかもしれない。…ヘビモスにおわれていた時点でいまさらか。
取り合えず動けるようになったならこの場を上手く離れるのが得策だろう。
目の前の勇者様には助けてくれたし、回復してくれた恩があるが俺は悪の子で本来ならば敵だ。これ以上の関わりは不要だろう。
「勇者様ありがとうございます。助けていただいたうえに、体を直していただいてなんといっていいか…本当にありがとうございます!」
とにかく、感謝の気持ちは伝える。感謝は大事だ。
「気にしないでください」
勇者は、変わらず読めない表情でそういった。
「それでは、勇者様もあの魔物の件で忙しくなると存じますので。ここで失礼します」
そうして俺は、勇者と別れ遠くに見える町を目指した。
…
「あのーなんで付いてくるんですか?」
「気にしないでください」
この場を去ろうとする俺の後ろをなぜか済まし顔で勇者が付いてきた。
「…あの魔物ほっといていいんですか?」
俺がヘビモスを指して言うと。
「ヘビモスは一度眠るとしばらく起きませんので大丈夫です。それよりも気になることがありますので」
と意味ありげにヘビモスを一瞥した後俺のほうを見ていった。
…これあれですね。完全に疑われていますね。ハイ…
Qヘビモスさんは魔法とか使えないの?使えるならなんで使わなかったの?
Aヘビモスさんは、脳筋タイプです。圧倒的な巨体から繰り出される物理で潰します。ヘビモスさんは膨大な魔力を持っていますが勇者にあっさり倒されましたが怒らせると国を滅ぼすほどの化け物です。
Q勇者のお気に入りポイントは?
A鎧の隙間から覗く足(チラリズムってロマンがあるよね?)
Qヘビモスを背負い投げってヘビモスの大きさ次第では物理的に無理じゃね?
Aしゅ…主人公だから(震え声)
一応、様々な条件がかみ合っていたとだけ。前世で体得した柔術、主人公の『超幸運』、邪神の加護、ヘビモスさんの油断、主人公に襲い掛かった勢いの利用など。