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ヤクザ異世界転移

続きの投稿は気分次第です!

 

「よく来た。悪の使徒となるものよ。お前はチキュウと呼ばれる世界で死んでここに導かれたのだ。若いのにかわいそうなやつやのう」


 薄暗い空間の中、突然浅黒い美女にそんなことを告げられた。


 そう俺は死んだのだ。死因はヤクザに背後からナイフで刺されての出血過多。


 ヤグザに刺されるって普通なら起こらない。そう、普通なら。残念ながら俺は普通じゃなかった。俺はかなり大きなヤグザの息子として生まれてしまった。

 俺を刺したやつは、親父の組にシマを取り込まれて、潰れたヤグザの組長だった。

 行き場をなくした恨みで俺を殺したのだ。


 低抗はしたが、数十人に囲まれている上にあっちは刃物を持っていたため容易く死んだ。柔道、空手、剣道有段持ちという肩書きは意味を成さなかった。もっとも、20人ぐらいは床に転がしたがこのざまだ。


 本当にヤグザというものは碌でもない。


 それにしても、記憶は思い出せるのに自分の名前が思い出せなかった。これは、死んだからなのか名前を思い出そうとすると靄がかかったように浮かばなかった。


 ところでここはどこだろう。殺されたのだから天国か地獄か。

 それともどっちに行くか選定される場所なのか?だとしたら、目の前のとんでもない美人は俺の生死を決めるような閻魔さま的なお方であって…悪の子とかいう不穏な言葉が出ていた。


 つまり…


「俺地獄行きですか!?」


「ん?地獄?」


「俺は、ヤクザの息子ですが。悪事なんかこれっぽっちも働いたことなんかありません!むしろヤクザの家に生まれてしまった被害者です!実家に嫌気が差して離れて一人暮らしして平穏に生活していたにもかかわらず、ヤクザの息子というだけで殺された哀れな人間です!どうかご再考のほどよろしくおねがいします!」


 ダイビング土下座で早口でまくし立て許しを請う俺。


「まてまて、おぬしは何か勘違いしている。ここは地獄ではなく私の部屋だ。私が元の世界に未練がない悪の子の素質をもったものをここに呼び寄せ、おぬしがここに導かれたのだ」


 目の前の閻魔様もとい女神様は、俺の勘違いを正して説明してくれた。

 要約すると目の前の美女は神様的な立場なのだそう。ここは地球ではない異世界だということだ。悪の子という単語が気になるが。


「…まあ、そりゃヤクザの息子に生ませた世界なんてごりごりですよ。俺は平穏な世界に生まれたかったです」


 ははっと遠い目をしながら殺された瞬間が走馬灯のように思い出す。


 ヤクザが嫌で家族とは縁を切り、友達、彼女は父親譲りの悪い目つきで出来たことがなく何の未練もなかった。


 うっ、思い出しただけで涙が…


「そこで君に朗報だ。平穏な世界に「悪の子」として転生できるぞ。魔物とかはいるが戦争とかここしばらく起こってない平和な世界だ。チキュウでいうところのファンタジーな世界だ。おぬし好きであろう?」


 またもでてくる悪の子という単語。気になって聴くことにした。


「平穏な世界に生まれ変われるのはありがたいのですが…「悪の子」ってなんです?」


「悪の使徒は、世界に厄災を撒くものだな。代表的なのだと魔王がそれにあたる。どうだ?」


「まったく平穏な生活が送れそうにないのですが…」


「それは当然だろう。平穏で退屈な世界をぶち壊すために悪の子を送るのだからな」


 とても女神様とは思えない発言が出てきた。


「あのー辞退することは…」


「なんだと!なにが不満なのだ!」


「えっと…俺は平穏に生きたいっていいましたよね。破天荒な人生とかごりごりなんですよ。そりゃ、ファンタジーな世界にあこがれはあるけど…その悪の子っていわゆる悪役ですよね?悪役って最終的に破滅するのがおきまりじゃないですか。嫌ですよそんな物騒なもの。下手したらヤクザの息子よりもやばいやつじゃないですか」


「ぬう…こやつ鋭い…」


 目の前の女神様がボソッと呟いたような気がしたが。そのまま続ける。


「そもそも、なんで平和な世界にわざわざ悪役を送るんです?絶対なにか裏あるでしょ。経験上物騒なことには必ずなにか理由があるはずなんですよ。俺とか善良な人間なのにヤクザの息子と言うだけで殺されたんですからね」


「そ…ソンナコトナイヨー」


 サッと俺から目線を外す女神。


「そして、俺に悪の子としての資質があるわけがない、完全に人選ミスです。なので、謹んで辞退させていただきます」


「ぐっ…おぬしかなり頭が切れるな…だが、最後の言葉はそういうやつほどそういうのだ。おぬしの中身を見たが相当闇が深いぞ?ますます悪の子に欲しい」


「悪の子は結構ですから、村人Aとかでいいので神様ならそのぐらい出来ますよね?」


 少しの沈黙


「…いや、お前は悪の子としての転生しか認めん。あぁ地球に送り返すことは出来るが…その場合またヤクザの一員として転生することになるだろうな。お前は地球ではそのようになる運命になっているのだ」


「え…嘘だろ…なんでそんな仕打ちをするんだ…俺が何をしたって言うんだよぉぉ!」


 知りたくもないことを女神に告げられる。


「それは地球の管理者に言ってくれ。まぁ、そんなわけでチキュウに戻るのはお勧めはせんぞ?それよりは、まだ悪の子としてわしの世界に転生するのがおぬしの希望にそうのではないか?ん?」


「…」


 どうやらこの女神様は俺をどうしても悪の子とやらにしたいらしい。

 本当かどうか分からないが地球に戻るとヤクザとしての生活を背負う宿命だという。だが、嘘を言っているようには感じなかった。


 …これって一種の脅しですよね。恫喝ですよね。


 この神様も地球の神様も意地が悪くないか?地球にもどってもヤクザ、異世界は悪役ってなんなの?いじめですか?いったい俺はどんな業を背負ったんですか?

 正直、どっちも嫌なんですが…


 どうするか決めかねると女神が囁くように耳打ちをしてきた。


「悪の子になったからと言ってなにがあるわけでもない。おぬしがわしらの世界に何をしてもかまわんし、しなくてもかまわん。平穏を送れるかどうかはおぬし次第だ」


 …ほう?つまり自由にしていいと?ぐらついてた心の中の天秤が僅かに傾いた。


「なんなら、可愛い眷族も付けてやろう。異世界に行くにあたって一人じゃ不安だと思うからのう。ほれ」


 そういって、女神様が指をちょいちょいと動かすと。ポンとちっちゃい生き物が現れた。

 見た目は女神様をそのまま小さくして羽を生やしたような可憐な生き物。妖精と言う表現がしっくりと来た。


「わー、ご主人様どうしたんですかー?」


「リタ、お前の主人はこやつだ。まだ決まったわけじゃないがな」


「おー?」


 リタと呼ばれた小さい生き物は俺の周りをくるくる回って顔の前に静止すると顔を凝視された。


「いやー、悪い目つきしていますねー」


「第一声がそれかよ。失礼なやつだな!それと目つきはほっとけ!すごく気にしているんだぞ」


 早速、可愛い顔して俺のコンプレックスをなじってくる妖精。


「あははーはじめましてーリタと申しますぅー。趣味はイタズラですぅー」


「女神様こいつ大丈夫ですか?」


 不安になってリタを指差して女神様に問うと、困った顔した。


「こう見えてもリタは眷族の中でも力のある精霊だ。あと、あちこち飛び回っているから知識も豊富だぞ…まぁ問題児だが」


「わぁーひどいですぅー」


 女神様が最後にボソッと何か呟いたような気がしたが、まぁ異世界に詳しいのをつけてくれるのはありがたい。だが、もう少し足りない。


「まぁ、案内役を付けてくれるのは助かります…でも、異世界で自由にしていいのは分かったんですが、俺悪役になるんですよね?いや、平穏な世界だっていう女神様の言葉を信じないわけじゃないんですが、最低限身を守れるような力とかいただけませんか?俺、前世であっさり死んでしまったわけですし」


 つまるところチートの要求だ。正直、悪役になって平穏に暮らせるビジョンが見えなかった。なら、せめてしがらみから逃げられないならせめてこのぐらいのわがままはいいだろう。


「ぬう、強欲なやつだのう…悪の子になれば自ずと身体が適応し易々と死ぬことはなくなるし、リタも付くのだぞ?それに、チキュウではおぬしかなり強い部類であろう?これ以上何を望むのだ?まぁ、おぬしが乗り気になっているのだから一つぐらいは聞いてやろう。だが、望みをかなえたら後戻りは出来んぞ?」


「できんぞぉー」くるくる回りながらリピートするリタ。


「後戻りも何も…どうせ前も後ろも茨の道ですよね。だったら、もうできる限りの選択をして前に進むだけですよ」


「良い心がけだ、ほれここから選ぶが良い」


 そういって俺の目の前にカタログがポンと現れた。タイトルは「悪の子固有スキル一覧」


 おそらくここから選べということだろう。


 パラパラとめくるとそこにはえげつないチートが載っていた。


 いくら傷つけられようが死なない「不死身」、

 体に触れたあらゆるものを破壊する「万物破壊」、

 無限に魔力が湧き出る「無尽の魔力」、

 生物を魅了し操る瞳「魅了の瞳」、

 見た相手の技能を会得する「技能会得」、

 魔物を支配する「魔物の王」

 あらゆる攻撃を無効化する「絶対無効」

 目に止まらぬ速さで移動する「疾風迅雷」

 天候を支配する 「天候の支配者」


 ざっと見ただけでこれだけのものがあった。

 いやいや物騒すぎでしょ。なんで平穏な世界に行くのにこんな物騒な力がいるんですかね。

 同然ながら平穏を求める俺はこんなものを取るわけがない。


 思えばここで気づくべきだったのかもしれない。悪役に平穏なんてありはしないんだと。だが、このときの俺は完全に異世界で自由に生きていけることに浮かれていて思いもしなかった。少し前までは疑念を抱いていたと言うのに。

 俺は、完全に女神に乗せられていた。


 ほかにもえげつないチートを横目に眺めながらパラパラと自分の身を守るチートを探した。

 そうして何枚かめくるとその手を止める。


 そこに書かれていたのは、ものすごく運が上がるよ!「超幸運」


 ふと前世を思い出す。どうやら俺はヤクザになる運命で絶望的に運が悪いらしい。しかし、その悪運を無くせばどうだろうか?むしろ、このチートでギャンブル一発当ててあとは、気ままに生きれば…。


 …これだ!


「決めました。「超幸運」を望みます」


「ほう?随分地味なのを選んだな?私のお勧めは見たものを全て恐怖のどん底に陥れる「絶望」なんだがな。これがあれば大概のやつは平伏して逆らうやつはいなくなるぞ。おぬしの言う平穏が欲しいならこっちがいいんじゃないか?」


「いや…そんな物騒なものいらないですし、それ絶対敵を作りますよね?それは結構ですので。「超幸運」お願いします!」


「まあ良かろう。ほれ」


 女神様が俺に向けて指をちょいちょいと動かすと体が光った。

 不思議な力が沸きでるような感覚が全身に広がる。


「これで文句ないな」


「ないなぁー」とリタ。


「はい、ありがとうございます。これで何があっても運でどうにかなりそうですね」


 文句あるはずもない運を底上げしたのだから、俺は何でもできる自信に溢れていた。そんな俺に女神様が言いにくそうにしながらいった。


「…嬉しそうだのう。喜んでおるところ悪いが、おぬし、悪運が絶望的じゃから超幸運があっても運が悪いし、たまにラッキーが出る程度だぞ」


「…そういうことは先に言えー!!」


 俺は、目の前のお方が女神だと言うのを忘れて怒鳴る。


「ま…まぁ、不運に会いまみれることは少なくなるだろう。よかったではないか。最後におぬしに名を与えよう。おぬしの名はヤクザだ。どうだ?ぴったりだろう。では、旅立つがいい」


 早口でまくし立て話は終わりだと言わんばかりに指を動かす神様。


「ちっとま…」


「リタ行ってきますぅー」


 そうして俺は抗議の声を挙げられず視界が暗転して異世界へと旅立った。





 Q 主人公の前世の名前は?

 A 五十嵐 夜苦座やくざです(変わらねーじゃねーか)


 Q 主人公の父親はどんな思いで名前をつけたのか?

 A 立派なヤクザになるようにと言う願いから(※願いはかなわなかった模様)


 Q 主人公の容姿は?

 A 目付きが父親譲りでものすごく悪いですが、それ以外は整っています


 Q 主人公は友達も彼女いないってそれってつまりボッチでチェリーボ…

 A それ以上はいけない(ヤクザパンチ)


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