第六話 ジョブ詐欺
「いや~あなたのおかげでカクタスの本拠地が分かったよ。感謝する」
「あ、そっすか」
盗賊を売り渡し、二人から信頼を何故か得ることが出来たロアークは二人と行動を共にすることになった。
この二人はバカなのだろうか?
カクタスというのは盗賊団の名前だったようだ。
「紹介が遅れた、俺はガルーディア、ジョブは《ナイト》だ。こっちの超絶カワイイ子は妹のライリー、《ファイター》だ」
「よ、よろしくお願いします…」
この世界にはジョブというものがあり、生まれながらにして決まっているものだ。
ジョブの種類は
・《ファイター》
・《ナイト》
・《アーチャー》
・《マジシャン》
の四つがある。
ジョブによって強くなるものが違うが、ガルーディアのようにナイトなのに魔法が得意な人もいる。
そして、後天的に変更することは不可能。
が、例外もある。
「俺はロアーク…《ファイター》だ、よろしく」
その例外のロアークはもちろんのことながらファイターではない。
あの四つのジョブに属さない特殊なジョブ、ユニークジョブ。
このユニークジョブと言うのはある条件により、誰でも獲得できるが、その条件は知られていない。
ロアークは知っているが。
そのユニークジョブをバラす訳にはいかないので、適当なジョブを答える。
簡単な自己紹介を済ませ、ガルーディアから話を聞く。
「…盗られたぁ?」
「そうなんだよ…」
二人はもともとゼノン砂漠に入る予定ではなかったらしい。ゼノン砂王国の南にあるガイウス渓王国に向かう途中で盗賊に襲われて、金色の懐中時計を盗られたそうだ。なぜ返り討ちにしなかったのかを聞くと…
「その時はライリーから目を離していて…俺としたことが…クソッ!」
だとさ。
「なるほどな…それで奴らを…ハハッ」
「なに笑ってんだよ」
「いやさ…死体に気づかずに話しかけてるの思い出して」
あれは傑作だったな〜…と思う。数年後に聞かせてやろう。
「あ?切り裂いてやろうか?」
「で?本拠地に乗り込むんだろ?」
「…そうだ」
「二人で?」
「もちろん」
「足手まといと一緒にか?」
「?…ライリーのことか」
二人の話からライリーが一度も戦ったことがないのは分かった。
「ライロリまで危険に晒すのか?」
「ライロリ?…ライリーが自分から志願したんだ。『自分も行く』ってな」
「!」
それは予想外だった。
ライロリが自分から言ったとは思わなんだ。
どちらかと言うと戦いを避けているように見えた。
(これも縁ってやつかもな…)
「…なるほどね、よし!決めた!」
膝を叩き立ち上がるロアーク。やる気は十分。
「?何をだ?」
「俺も行こう」
「ん?どこにだ?」
「む…察しが悪いな、カクタスの本拠地だよ。俺も一緒にやってやろう。カクタス崩壊大作戦」
いい笑顔でサムズアップするロアーク。その裏で
(途中まで放置しとけば面白い展開になりそうだ…フフフッ)
などと思っていた。
「そんな名前付けた覚えはないけど…いいのか?死ぬかもしれないんだぞ?」
「心配無用、俺は死なん。オラさっさと準備しろ。いくぞ」
「え?今から?」
「昼は暑いだろ、なあライロリ」
「えっ…と…私はいつでも…」
慌てるライロリ。見ていて面白い。
「ホラ、決まりだな。案内しろ。なあにトドメはくれてやるよ、感謝しろ」
「くっそ…上から目線が腹立つ…」
「その言葉そっくりそのまま返すぞ」
「あ?なんだ?」
「目つき悪いなぁ…おっかないおっかない」
「お前が悪くしてるんだろ!」
急に怒鳴るガルーディア。俺は耳が良いからめっちゃうるさく聞こえるんだよね。
「もう!二人ともケンカしないの!」
優秀な仲介役。ライロリ。
「うお~俺じゃないんだよライリー、すべてロアークが悪いんだよ~」
「…キモ」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、なにも」
そんな感じで砂漠の盗賊団「カクタス」の壊滅が決定した。