雨は降るとは限らない
前書きはない。
雨がたらたらと窓をつたう。
僕が眺めようとした町は僕に眺められることを拒むかのように目の前をつたう雨だけでなく植木や塀で遮蔽を作る。
強いて名前をつけるとするのであれば、植木は…ロンT。塀は…思いつかないや。
コンコン
僕の部屋のドアを誰かがノックする。
お母さんだろう。いや違うかもしれない。
いや、お母さん以外はこの部屋を訪れない。
いやもしかしたら、いや、いや…
「お母さん?開けていいよ」
しばらくの沈黙の後ドアが開いた。
「久しぶり」
1週間のうちに数回しか開かないドアから見えた姿は見たことのない女性であった。いや久しぶり?ということはあったことがあるのか?いや、いや…
「あ…ごめんなさい。あなたは私を知らないのだけれども。私はあなたをとてもよく知ってるの。角煮を作ったからお食べなさい。」
「え…ありがとう。いただきます。」
角煮はうまいがシンプルに怖い。誰だ、お前は。
「お、お母さんは?」
「お母さん?あぁあの雌豚か。ブーブー喚くから角煮にしてやったわ。本人も喚くより美味しい角煮になって太郎君に食べられる方がいいでしょう?」
血の気が引いた。僕は太郎君ではない。
無論、後書きもない。