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悲しみは僕の名前を…


曰く。ダンジョン内の怪物は攻撃性や単純な防御力というのは非常に高いが、モデルとなった怪物の多くと同じ様に弱点があったり、既存生物の巨大化や凶暴化されたものであっても毒や強烈な光、爆音など通常よりも強化されている肉体の多くと比べてそういうものに対する耐性は低い…らしい。


「おそらく既存生物の場合は、元の生物に毒などの耐性がない為、肉体や機能の強化がされてもそれ相応にしか伸びないからなんだっけ。」


俺はまんまと焼肉にくくりつけられた大量の麻痺毒キノコを飲み込みものの2分くらいで動けなくなったカエルの背中から様々なキノコや治癒の水薬などに使用される霊芝を集めていた。


「…うん、ちょっと詰めが甘かったな、久しぶり過ぎてコイツの生態とか、そういうのが吹っ飛んでたわ。」


ギガントカエル、丘の様な体をもつコイツの背には小規模ながら独自の生態系が存在している。

表面に乗った土はボスとしてコイツが現れてから放置されている間に沼に入ったり、周囲への擬態のために背中に乗った物である。

そこは草が生えるには少し薄く。栄養も少なかったが、苔や菌類が増えるにはそれなりに最適だったのだろう。少し毒性のある粘液を分泌する関係上湿原帯であるこのダンジョンの一層で多く見られる草や木が生えず。遮るものも競合相手もいない背中はダンジョン産の上質な菌類や苔のむす畑になったのだ。


「けどまあ、単純に背中に登るなんて普通しないし、最近はコイツにチャレンジする人も多かったからそんな機会無かったんだがなぁ?」


そう、本来コイツの背中にこんなものが生えるのはもう少し先の話なのだ。

と言うかここ最近もコイツ討伐されてたはずなんだが…ていうかこんな事になる前、三層まで行って入口らへんで怪物の調査したり、二層で泊まったりするためにボスであるコイツを俺が爆殺したんだが、その時もまだ綺麗な背中だった。


「これも世界樹がやられかけてダンジョンの力が増しているからなんだろうか?」


まぁ、いい、とりあえず採取物は消えないので採れるだけとって…と、少しずつ動きが出て来た所で…


「ヌン!ヌン!…ンンヌ!!」

「グゲゴ!?」


戦鎚を振り下ろす。一撃で足りないなら二度、三度、ようやく頭蓋が割れたならば戦鎚をぶち込んで内側からかき回す!


「ぐ!ぐえがうっがげ!?」


袋の中にキノコ類を入れたのでもう要らないツノとかもぶち込む。

死ね、疾く死ね、ほかの探索者と違ってまともに怪物をぶち殺せる様な超人じゃないのだ。サッサと!


「死ねぇ!」


腰の入ったツノ投擲、ぐちゃぐちゃになった脳がトロリと飛び出し、目まぐるしく動いていた目が一点を見て…止まる。生命活動の停止と同時にその肉体は消え失せ宝箱が現れた。


…宝箱が現れた?


「ほぁ?」


え?ここで引く?もっと深い層…そう、三層目とかじゃなく此処で?まじ?確率低いから喜ばしいけど一層で出るものとかたかが知れてるよね?この前先輩が心なしか素早くなるマントとか出してたけど、身体能力強化が一段上がるよりも効果が低い強化だった筈…

そう思うと非常にテンションを上げていいのか怪しい所である。



とりあえず、開けるまでは消えないと噂の宝箱が本当に消えないのか手の甲の数字が60になっているのを見たり、霊芝や麻痺キノコの数を数を数えて心を落ち着けたり、高ぶる感情のままに残ったウサギのツノを地面に置き戦鎚で吹っ飛ばしたりして取り敢えず落ち着いた。


「ふぅ…よし、開けるか。」


確率にして1%以下、そこから望みのものが出てくるのが更に低い可能性として微粒子レベルに存在している。

…というか運気云々を考えると苦戦していたカエル野郎の背中に都合よく毒キノコが生えていたとかそういう所で消費されている気がする。

しかもピンポイントで麻痺、キノコの毒に即死やら速攻で麻痺したりするものは少ない、大体が遅効毒だ。稀に即死するものもあるが…


「祈れ!祈れ俺!」


即座に状態異常を引き起こすレベル、特に耐性が薄いと行ってもこの巨体、ボス級の怪物にほぼ即効性を示す様な強力な麻痺毒など…そうそう無い、というか全然無い、生えてたらなーって言って結構ガチ目にこの湿原を探したことがあったが、二、三本見つかったレベルだった物がこんだけあるなど…


「うぉぉぉぉ、考えるなぁ!」


取り敢えず滅多に抜かない直剣で箱の隙間に刃を入れる。

突起物に当たったり、何かが作動する様な音はしない、そのままゆっくりとスライドさせ、側面にまで来た時ヤイバを縦方向にしてから引き抜くが、罠や箱に化ける怪物の気配はない、魔法的な仕掛けだったらちょっとあれだが、それならば開けられた瞬間発動する筈なので、側面で直剣を立てた時点で前面はそれなりに開いていた為、何か起きた筈だ。


「…はぁ、開けよう。」


ついでに確定したのはこの中に入っているのが、確実に箱よりも小さなものであるという事、煌びやかな赤と金の宝箱の大きさは俺の胴体、所謂男の胴体が二つ分くらい、よって何が入っているのか全然わからない。


「ご開帳ー!」


開ける。

見る。

布!


「布!?」


いや、よく見れば布ではない、と言うか幾何学模様が浮き出て…


「あっ…」


俺はそれを見たことがあった。

うん、どこで、とか相応野暮なことは言わないでくれ、フードまでついたこの布は外套、ちょっと力的な、視覚的にその場の雰囲気、空気の様なものを感じられる俺をして雰囲気のある外套だが…期待しないでおこう。

…ダンジョンを出ると日はとっぷりと暮れており、作りかけのベッド擬きにもなっていない毛布の塊が虚しい…


「寝るか…」


まぁ、キノコと霊芝はいい儲けである。それ以上を期待してはいけない…折りたたんだ毛布を木の板で作ったベンチ風な物に敷き、外套を掛け布団にして寝た。

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