卑劣な罠だ…
何故に俺が卑怯だと言われるのか、それは大体魔物の倒し方に由来するところが大きい、まあ、他にもいろいろあるらしいが、俺的には当たり前なだけで自分の常識が他人の非常識なんていうのは人間誰しもあることだ。
因みにおそらく。というか、卑怯者という名の頭のおかしい奴認定がされたのは、この街に来て最速でこの第一層のボスを倒した時である。
死ぬ様な思いをして親元の大都市をでて、片田舎の生まれたてのダンジョンに来たと言うのに、そうだと言うのに、狩り尽くされウサギ1匹いない平原をただ散策するだけではつまらなくなった俺の暴挙、もといフラストレーションの捌け口であるこのデカガエル君を丸太と火薬で爆散させた。
この丸太と火薬で爆殺したのがいけなかったらしい、そもそも馬鹿正直に戦える様な大きさじゃないんだが、恵まれた奴らというのは恵まれており、高身長に筋肉を積んだ大斧使いが正面からあれを真っ二つにし、そういう探索者と言うのを夢見る新人や探索者であると言うことに謎の誇りを持つ奴らから『爆弾魔』とか、『意味不明』などと言う不名誉なのかそれともかっこいいと思ってつけてるのかわからない二つ名を貰ったことが原因だ。
…まあ、中堅どころのくたびれた探索者や、俺と似た様な短剣使いや今は亡き道具使い君など賛同してくれる奴も居たが、そのあとふっかけられた喧嘩を利用して金をむしったり、煽って金をむしったり、俺の目の届かないところで死んでくれる分には何の問題もないので、装備を毟って質に出したりと色々やった結果ボッチとなったが、公開はして居ないし反省もして居ない…だって、カモがネギしょってたら鍋にするだろ?つまりそう言うことだ。
「はぁ…デカイ…」
さて、それでだ。今俺はほぼ垂直に近いカエルの尻の部分をウサギのツノを深く差し込んで足場にすることで進んでいる。
どうやら皮膚の感覚が鋭敏ではある様だが、この程度の損傷は損傷に入らないレベルであるためにこちらに敵愾心を向けて来ては居ない様だ。
ま。それ以前に皮膚の上に土やら苔やらが乗って皮膚までが遠いんだよね…
「ツラみ〜」
あー、人恋しくは無いが探索者ギルドのエロ可愛いお姉さんが見れないのは残念だ…あの天使を目の保養にし始めたらいろいろと終わってしまう様な気がするのでアレは気にしない方向で行くが…はぁ…
「女の子…降って来ねえかなぁ…」
サバイバルで一週間待たずして煩悩大爆発である。ま!健全な男子だし!当たり前だよなぁ?
はぁ…バカ言ってないで進むか…多分今回の作戦は決まれば一瞬、決まらなければコイツとのガチンコバトルとか言う超面倒臭い事態が起こる。
…まあ、作戦というか、コイツの脳天向けて戦鎚を振り下ろしてこ山ほどあるコイツの体を支配する脳味噌くんをシェイクにしてやろうと、そう言う魂胆だ。
本当は電撃を発生させる仕掛けでも使って鋼鉄製の棒を突っ込んで電気を流すと言う案にしようかと思っていたのだが、思いのほか材料集めが芳しく無いし、そもそも電撃を発生させる様な道具、もしくは魔法の道具はダンジョンで拾う以外に入手方法がないので諦めた。
「ドロップするかどうかがまず運ゲーすぎんだよなぁ!」
「グゴゲ!」
突然の浮遊感、咄嗟に出た手がカエルの背中にある苔を掴むが引きちぎれる。続いて背中の戦鎚の鋭利な方を振り下ろしとっかかりを得ようとするが、流石に遅い、取っ掛かるとかそれ以前にカスリもせず体が浮き上がる。
どうやらカエルが動いたらしい、浮き上がった後に苔に叩きつけられ落ちなかったことに安堵する。
しかし、悪い知らせもある。どうやら相手が俺を認識した様だ。おそらく先程跳ねあげられた時、尻から背中に上がった為俺は、奴の視界がギリギリ届く範囲に入ってしまったのだろう。背中を揺らす様に、上の物をはたき落とす様な動きを見せ始める。
とりあえず戦鎚を硬化した背中の土や苔に掛け、堪えるが、キリがない、先に尽きるのは俺の体力だろう。
早速予定が狂いまくってピンチだが、当初の作戦は文字通りの必殺、奴の脳天付近、頭蓋の少しでも薄いところに一度でも思い切りこの鋼鉄の塊をぶつけられれば、どんな風になってもコイツの不利益しか生まない…
「少しづつでも…進んでやるさ。」
「ゴゲゲゲゲゲゲゲ!」
四肢に力を入れて全身でしがみつく様に、鋼鉄の戦鎚を手放さない様に、様々なことに注意しながら、危険と思われる空気を見て、安全そうなところを進んで行く。
泥だらけでも、何が何でも五体満足で勝って生き残る。
基本戦術命大事に、である。
「はぁ…っふ!」
「グゴゲゲゲ!」
ダンジョンにもすでに攻略され、資源を採取する鉱山とかしているものがある。
ここら辺で代表的なのが大樹市の三番目のダンジョン、中は荒地と高い山が広がる全階層一体型の広いダンジョン、そこの怪物は刺激しなければ襲って来ない鉱石や石、土などでできたゴーレムなのだが…そこでは鉱石採掘などの理由以外で山を登る変人が多数見受けられる。
彼らが口を揃えて言うのが、そこに山があるから…登るんだ、とかそういう感じの事、俺もこのカエルを登って少しはその気持ちがわかると思ったのだが…
「辛すぎる…こんな苦行よくやるぜ!」
「ググゴゲゲゲ!!」
揺れは最高レベルで激しく。時折舌が叩きつけられる様なこともあったが、なんとかここまできた。
だが同時に問題が発生した。揺れが激しすぎる為戦鎚を叩きつけるのが難しいのだ。数回叩きつけて見たが、並みの攻撃では皮膚に到達することすら難しい程にコイツの皮膚の上にある土の層は厚い、正直言って装甲貫通は難しい、やはり腹から爆殺したのは戦術的に正しかったのだ。
「さて…どうしよ…」
そう思って顔を上げた先には強力な麻痺毒を持つキノコが群生しているのだった。