エキサイト怪物ハンティング
事実、地力を積み重ねても俺は弱い身長160センチ体重60キロ、凡そ戦闘者として恵まれているとは言えない、俺のよく知る最強である大樹市の15階梯は身長190センチ体重120キロ、広い肩幅、太い骨、その恵まれた骨格に筋肉と少量の脂肪を積載し人の身に余りある大剣を振りかざしながら、智謀と実力で英雄譚を作ってきた。
飛んできたウサギの首を落としツノだけをもらう。周りには12匹のウサギの死骸、その全てがツノを奪われている。
殺すのが目的ならば首だけでなく腹を割き、蹴り飛ばすだけでいい、油濡れになり切れ味の落ちたヤイバから血肉を拭き取り、袋から取り出した携行用の簡易砥石で研いでしまう。
「ここのボスはギガントカエル…5回は倒したが相変わらず…って感じか。」
でかい、空間が歪んでできたと言われるこのダンジョン、世界樹の根に押しつぶされながらも拡張された空間は更地になった都市と同程度、その中にあってまるで丘のような大きさなのがボスである。
俺は鋼鉄製の短剣と小型の火薬玉を持つ。が目測を誤った。どうやら相手はまだ先の方…どうやら世界樹の締め付けが甘い所為か空間も拡張しているようだ。火薬玉をしまい込み進みながら再びダンジョンによって補填されたウサギどもに刃を振るう。
火薬玉は武器や跡地と道具や跡地で合わせて5つだけ拾えた。以前なら買い足せばいいだけだったのだが、今はそうはいかない…
「お前の倒し方は頭おかしい…だっけか?」
初心者講習の最初、大樹市にいた頃一度だけ15階梯の探索者オスカーに見てもらったことがあったが、その時も否定はされなかったが妙な戦い方をするなぁ、と言われた。
まぁ、実際あの時は妙な戦い方だった。なにせ身体強化込みとは言え、ウサギを掴んで別のウサギにぶつけたり、用意して置いた丸太でカエルをツラヌイタリ…まあ、実用化できそうだったのは丸太式戦闘法くらいだったが、あの時はいい実験だった。
「さて、っと…」
手の甲のカウンターは50を示す。普段なら他のルーキーや探索者がいたためこんなに独占して狩ることはできなかった。
それに今は世界樹の力が弱まっているのもあって怪物の出現速度も速くツノ集めは捗った。
で、このツノ、実は微量だが金属を含んでいる。ほとんどが骨だが、血液内にある鉄分などの微量の金属元素が関係しているらしいが、一度滅んだ文明の、いびつな科学ではこんな微量の金属を取り出すような技術は失伝している。
流石に少しくたびれた。あのデカガエルにも順調に近づけているし、ここはおそらく奴と戦う前の最後の安全地帯だろう。余り好ましくはないが、休むことにする。俺は火の用意をしてから一羽確保していたウサギを解体し、焼く。
こういう時、勇者様やらその子孫やらが持ってる特別なギフトが羨ましくなる。
空間魔法とか、アイテムボックスとか、とかとかとかとか…
「ま、けど調子乗って男はタネ撒くだけ撒いてダンジョンで死んでるんだよなぁ…」
悲しきかな、男の子はいつまでたっても男の子、馬鹿でロマンを追い求めておにゃのこに弱いのだ。
飯を食ったら目を少し閉じる。
周りの音が強調され、薪の爆ぜる音がほんのりと聞こえる。この階層はウサギとカエルと巨大ガエル、そして徘徊型の中ボスである狼の群れがいる。今のところ周囲に生物の気配はない、あったとしてもそこらへんに散乱させておいた死体に食いつくだろう。
体感一時間ほどの休憩は湿原地帯では珍しい、しかしそこを選んで歩いている俺にとっては当たり前の草原地帯ならではの草布団の上で行われ、まあまあの成果を挙げた。
さて、今回のカエル野郎討伐作戦だが…前一人でやった時は杭の様に加工した丸太の先端に火薬玉をつけて爆散させたんだったかな?まあ、イライラしてやったことに意味なんてないんだが、今回はそのダウングレード版、と言う名のもっと恐ろしい攻撃だ。
とりあえず今日の装備を確認する。
鋼鉄製の戦鎚、トンカチ、ウサギのツノ50本、短剣、直剣である。
火薬玉は腰につけるが、もしもの時用なので、使いたくはない。
で、だ。やることはとっても単純、よくあるおとぎ話の巨人やら竜やらを殺す時の常套手段…さぁ、クライミングを始めようか!
この階層のジャイアントカエルたちはアマガエルの様な、ちょっとぬるっとした外観をしているが、ボスであるギガントカエルはヒキガエルや、砂漠的な気候に多い水分を溜め込むための分厚い皮膚を持つタイプ、正面から戦うのが無理な質量の関係上どうにかして命に届く一撃を見舞わないといけないのだが、それを皮膚に阻まれ多くの探索者がmgmgされる。
…うん、まあけどね、この作戦結構ガバガバなんだよね、そもそも俺いつも道具で爆発させたりとか、コツコツお金を貯めてそれを消費して儲けるみたいなタイプだったからこう言う地力が必要になる様な事態は結構ヤバいんだよね…
「ま、最悪戦鎚の鋭利な方で撲殺するしかないか…」
とりあえずゆっくり動いて背後に回りコケやらなんやらが生えた彼の背を登っていこう。