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再びダンジョン


さて、肉を塩揉みしよく晴れていたのでとりあえず切り身にしてほとんどを干し、中で食う様に加熱して背嚢に戻して再びのダンジョン、入り口と出口をまたぐたびいつのまにか景色が変わっているのがいつも奇妙だが、それがダンジョンというものだ。この謎の空間の隔離は世界樹によるものらしい。


「やっぱり多いな…」


そして、その世界樹があのザマだからか、先ほどのカエルの時も思ったが少し数が多い様に思う。

ちなみに、ダンジョンを絞め殺すための縄の様な物である世界樹の苗が朽ち果てればダンジョンどころかその下にあ膨大なエネルギーが吹き出る。その結果として外の世界に魔獣という強大な怪物が解き放たれたり、爆発してその辺が更地になったりと俺からすればどれも死に直結する様な出来事ばかりが起きるので、あのポンコツ天使様には頑張ってもらわないといけない…


「…つうか、魔魂捧げねえと。」


手の甲のカウンターは203、まあ、カエル三匹なので当たり前だ。一階層ではボスは10魂、雑魚は1魂、2階層では二倍、三階層では三倍になるのだが、それ以上に怪物の強さが倍増するので超危険である。


まあ、二階層やら先の話をしても仕方がない、この階層の地理はほとんど頭に入っているのでいつも通りの道を辿ってウサギの領域手前の茂みに隠れる。

そして背嚢に手を突っ込むが…此処で気がつく。


「そういえば宿屋も吹っ飛んだから道具がねえや…」


いつも忘れ物が多いが、意外と未だに街が更地になったノア振り切れず、気が動転しているらしい、あのおっそろしいツノの生えたウサギ相手にバックラーと短剣はちょっとキツイ…いつもなら範囲外からのパチンコ狙撃からの全力逃走の繰り返しで1匹ずつ片付けるが…


「っち、明日用意するか…」


今から帰ってもう一度入るのはめんど…危険である。

いや、まあ、モチベーションとか集中力とか色々大切なのだ。うん!そうなんだ!


俺はさっと立ち上がると小石を投擲、今回の群れは5匹、ちょっと少なめであるが…どうやら俺の知っているいつもの個体よりも少し大きい、何時は抱えられる程度だが、今回の奴らは大型の犬くらいある。


最初は様子見するが…大きくスペックが変わっているわけでもない様だ。


「じゃあ、やりますか。」


俺の罠や範囲外への引っ張り出しなどの小技は階層をおうごとに効き目がなくなっていく。そんなやり方は下では通じないと言う奴らにあったことがあるが、俺は意にも介さなかった。効き目がなくなったならもっと別の方法で、弱点や生態を理解して正面から正々堂々不意を打つ。それが俺のやり方だ。

…ついでに、何を勘違いしたのか、俺を探索者引退に追い込もうとしてきた其奴らが、本当に何をトチ狂ったのか俺に決闘を挑んできたので、ボコボコにした結果金を巻き上げたのは悪いことではないと思う!


危険を知らせる赤が体に五ヶ所、ぼんやりと、少しずつはっきりと収束していくのが見える。俺はそれを見るまでもなく地を蹴ると未だ勢い付いていない2匹を片方は短剣で首を飛ばし、もう片方は側面からバックラーで頭を叩く。

探索者の身体能力強化は2程度じゃあこんな風にはならない、これは毎日の鍛錬、つまり地力の積み重ねである。


「楽をしたいから頑張るのであって、怪物相手に真面目に戦う必要なんて、無いんだよなぁ…」


華々しい怪物退治の英雄譚、その多くが知恵と経験を生かし、敵の弱点を突いて勝利する。だが多くの人はその過程である戦いというものに誇りというものがあるのだと勘違いしている。


勇気や誇りでは敵は倒せない、知識と実行力がモノを言うのだ。

意志力の大切さはよく知っているが、それは本当に最後、追い詰められた時にとっておけばいい、重要なのは追い詰められずに追い詰め、勝つ事、それが卑怯だと言うのならば、世の英雄は大概卑怯者だ。

考えても見ろ、ドラゴンを殺すなら逆鱗を突くし、おとぎ話の魔王とやらを殺したいのなら聖なる剣を持ち出してくる。そうで無いと勝てないからそうするのだ。

それならば別にウサギだろうがカエルだろうがを倒す時もその弱点を突けばいいでは無いか?


「全く…非効率だ。」


2匹仕留めた後残り3匹が跳ねてくるが一度跳ねればその方向は変わらないし、起動は基本的に弓なりである。ならば近づいたところで跳ねさせ、そこから距離を置き…


着地したウサギの首を順番に刈り取る。


「戦闘終了…警戒に移行する。」


前、ひょんな事から妹とその友達が成人した時の狩りを手伝ったが、その時も用意が出来ないほど直ぐにダンジョンに放り込まれたため、こうして剣を振るったが、あの時の表情は非常に面白かった。

ま、兄妹仲が良いとは言えなかったのが、少しはマシになったと言うだけで、それ以上のことはなかったがな。


「さぁて…剥ぎ剥ぎしますかね…っと、此処じゃあまずいか。」


とりあえず首から血が吹き出ているうちに体を逆さにし上から下に絞る様に血を出させる。近接戦をするのは、ウサギ肉が食いたくなった時くらいだ。若しくは剥製用の死体を作る時くらいか?だいたい用事といえば、皮を剥ぐ事くらいしかないのでちょっと大きめの鉄球を撃ってやれば小動物らしく。ある意味怪物らしからぬ勢いで死んでくれるので、皮が目当ての時は打撃安定だ。

…ズタズタにして持ってくるやつは只の馬鹿か余程の狩り下手かである。


とりあえず五羽のウサギの死体の後ろ足を縄で結ぼうとして、拠点で肉を干すために使っているのを思い出し、結局袋に詰めて、詰められなかった分は手に持ってダンジョンを後にした。

まあ、大きめなのでキチンとなめせば…


「あ…」


…道具も薬品もねえや…とりあえず肉と脂を取り除いて木の板に打ち付けとこう。ダンジョン内の怪物は動物と違って蚤とか付いてないので、天日干しにしとけばある程度持つ。昨日までの様子からするに上手くすれば薬品や、代用品が転がってるかもしれないし、明日も地上散策である。

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