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休息という名の訓練と…


眼帯デビューした俺、上位存在であるポンコツ天使が四六時中近くにいた為瀕死状態から1日で回復し今日はポン子に頼んで新しい装備の生産と手に入れた呪いの剣、ついでに異能の鑑定をしてもらう。

ちなみに眼帯は鏡を見て俺の瞳があのクソ龍にそっくりすぎて俺が失神した為、俺の精神衛生と人里に行って無駄に注目を浴びないようにという名目で適当な端材を使って作った。

とりあえず短剣と異能の鑑定を始めて暫くフリーズするので俺は外に出て短剣を振る。


久方ぶりの太陽に目を細めつつ、俺が今まで使っていた拠点擬きの丸太を地面に対して垂直に突き刺し皮をぐるぐると巻きつけ簡単な的を作る。


基本的に拳の延長くらいしか無いリーチは利点となり得ない、一歩踏み込んで突きを放っても直線的すぎるし、そもそも無いリーチは伸びない、かと言って普通にヤイバが前にあるように握っても両刃の短剣と言うだけで特別な事はない、さらに逆手で使うには訓練が必要だが…


これらは体術と交わることで漸く戦闘法となる。

持ち手を見ずに右手の順手、逆手、両手、左手で順手、逆手と入れ替えて行きそれを高速化する。更にそこから最も最短で最速の攻撃を放つ。それに更に足さばきを加え本格的に的へ当て始める。

そういえば装備品は今作ってもらっているが、短剣は武器屋のものを自分で調節して使っている。この前、と言っても一ヶ月ほど前になるがそこらへんで拾ってきた武器類を組合の仮眠室、現俺の自室に全てしまいこんでいて助かった。


最速、最短、そして最低速度の連撃が終わる。そう、今まで俺がやっていたのは加護を切った状態での訓練、一応ここから更に加速できるし、この前の邪龍の時は加護を吹っ飛ばされた上に外傷はないものの中身はバキバキだった為どうにもならなかったが、加護なしでも戦えるというのは重要なことだ。

探索者に与えられている加護というのは不可視の鎧のようなものだ。ある種のエネルギーが体を包み、その許容量をあげるのが魔魂によってあげられる階梯…というのは前話したかもしれない


「いや、というか俺は誰に話してるんだ?」


…ま、いい、あまり深く考えてなかったが、一人になってから独り言が増えている。なんとかしなければな…


それはともかく。次は加護を発動してやりたいんだが…果たして、この的をこの短剣でぶん殴ったらどうなるだろう?俺は短剣ではなく拳で、全力で振り抜く。


生まれた結果はわかっていたが、これはひどい、破砕音というか、硬い何かが思い切り物を叩いたような、破滅的な破壊音と木のかけらが辺りに散らばり取り返しのつかないだるま落としのように、間を吹き飛ばした。

一応、体術を使う関係上、ある程度の体捌きとパンチやキックなど十分な打撃を放てるだけの技術はあるが、逆にいえば格闘家や武闘家の様な特殊な技がなくてもこの惨状、ということだ。

こんな状態で短剣を使えば折れるだろう。生物を断ち切るなら急所や、脊椎などの間を縫っての斬撃などやりようはあるが、あの邪龍や木材や岩の様な硬いものはどうにもならない、それがこの前短剣が金属塊と化した理由であり、原因だ。

そういう点ではあの白い呪いの剣の耐久性は素晴らしい、素晴らしいが…


「バーサークするんじゃぁなぁ…」


どうにもならないと言って諦めれば宝の持ち腐れもいいところだし、何よりあの邪龍のほくそ笑む姿が目に浮かぶ。しかしながら世界樹のリソースを使ってまで、再生を遅らせてまで強力な武器を出してもらうというのも何か違う。

装備品や携行品はキチンと吟味しなければいけないがあらゆるリソースが枯渇し、技術的にも、時間的にもさほど余裕があるとは言えない現状最高の装備というのはありえないし、揃えられない…


「かと言って俺自身の才能なんて欠片も無い、正直言ってこれ以上はもう一度誰かに師事するしかないしなぁ…」


外套を思考制御する訓練は常に身につけなければならないという呪いの関係上日常的にやっている為練度はそこそこ、短剣や俺自身、装備品や携行品についてこれ以上の品揃えはあまり期待出来ない…


「…くそ、街の探索をもっとしとくんだった。」


短剣が無いと、というか金属製品が無いと人類の生活レベルや俺の戦闘力は大きく落ちる。それを危惧して武器やに行き、装備を回収したが、その時壊れた弓矢や弩などは回収しなかった。あの時は修復するのも諦めていたし、弾数に制限がある状態でアレらを使うのは不可能だと断じたからだ。

というかそもそも世界樹があの状態だったのだ。普通に考えれば天使もろとも終わったものと思うだろう。


「まぁ、彼奴が生き残ってくれていたおかげで…というかあいつは世界樹という杭がある限り消えないんだったか?そのお陰で俺を蘇生してくれたり、今もサポートしてくれたりしてくれるわけだ。」


あまり好きになれない、というか根が暗いためかああいう明るいタイプとは合わない、というか今この現状で何故ああも気ままやっていけるのか、天使という存在全てがああだとは思いたく無いものだ。


俺は拙い短剣の技を反復し、上がった身体能力の把握と制御に四苦八苦しながらそれらの思考をまとめようとした。

前の様に小目標を立てればこの絶望的な状況も多少はマシになると思ったからだ。

しかし、俺のそんなちっぽけな希望を打ち砕く様に天使が現れると俺の前に降り立った。


「大変です!非常に緊急事態です!」

「その怪しい文法の方が緊急事態だ阿呆」


焦った様子の彼女は俺のツッコミも意に介さず言い放つ。


「ちょっともう色々とヤバイので緊急時用の特権を発動します。これはあんまり使いたくなかったんですが…仕方ないのです!装備品ごと送り込むのでサクッと十階層、このダンジョンの底でボスを撃破して下さい!」

「はっ…は!?」


次の瞬間俺は花畑に完全武装で放り出されていた。

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