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2日経ったある日の朝


カチリと何かが起動した。どうやら彼は間に合ったが此方は間に合わなかった様だ。


「いやー人類最高到達点(笑)とか、あの子なら言うのでしょうね」


権限が解除される。


あの頃の記憶が戻ってくる。


世界樹の加護を受け、彼ら、あの子らと同じ様に駆けずり回り、泣き叫び、血を流し、ダンジョンに惹きつけられていた日々を思い出す事を許される。


羽は鎧に、羽衣は刺突剣に、白い髪は赤く染まり、瞳は金から青になる。


人は天使にはなれない、だが、探索者は人ではない、探索者は…世界樹の子となるのだ。


「さぁ…久しぶりだけど頑張ってあげる。元『剣聖』の力を見せてあげるわ」


右手の甲の数字は神聖数字の20、ま、こんなものでしょうね…


私はつい昨日まで戦っていたかの様に鮮明に、克明に経験を思い出す。

その中では目の前の巨大な獣の様な手合いを相手したこともあった。


「全く…この街は、いえ、彼は呪われてでもいるんでしょうかね?」


それは魔獣、ダンジョンの最終形態であり、人類と天上の共通した不倶戴天の敵、だがこれも2回目ともなれば新鮮味は失せる。増してやもう数十と相手にしてきた敵ならば、油断は無いが動きはわかる。

剣を構え、振る。

獣はその凶悪な爪を振り、斬撃を放つ。


数キロメートルにも及ぶ体はそれだけでも脅威だが、私は背を向ける。

魔獣は不思議そうにこちらを攻撃しようとするが突如なくなった半身の感覚に戸惑った様だ。


「はぁ…こんな事なら、こんな事になるんだったら彼氏の一人でも作るべきだったわ」


音も無く獣の体は崩れ落ち、血を吹き出すよりも先に絶命する。

そして世界樹の加護に護られた私に斬撃は届かず。消え失せる。


そしたらまた私は『私』に戻る。

彼の帰りを待ち、その無事を祈るだけの天使に、でもいつか彼の前で私は…


思考が乱れ、意識は途切れ、武器も、鎧も姿形も見た目も変わった。

ひとつ文句があるとすれば、なんでこの体は貧乳なんでしょうね?

楽だけどあの子に鼻で笑われるのは癪だわ






「はぁ、生き返った。」


探索者とは詰まる所改造人間、仮面ナンチャラ、バッタライダー的なアレである。

人体にスペックは生物史上稀に見るレベルで衰えやすく死にやすいが、加護と世界樹による強化、位階、異能、これらの要素によって前人類とは形や生殖能力、思考などは似た別の生命体が出来上がる。

しかしながら神やそれらに類する上位者による手出しと言うのはそれ相応の対価が必要である。強化され新製され神造された初期の人類は今よりもだいぶん弱かったらしい、それが今の今に至るまでには幾度も屍が積み上げられ、その犠牲によって加護や異能の一部、特に身体能力などが引き継がれていき獣人や魔人など種族というものが発生しながらも強化されて生き残ってきた。


で、だ。


「純粋な人類は前人類だけになり、指向性を持って異能を割振れる為に彼らは勇者や英雄になれる」


そして、積み上げられて来た俺たちは俺たちで純粋な人間でない為に治癒力や学習能力、筋力心肺機能思考力などなどなど、全体的なパラメーターで言えば高スペックなのだ。


「今更だが一人なんだったら攻撃じゃ無くて回復とかの異能が欲しかった。」


運がないのはいつも通りだし、邪龍と名乗ったアレがこちらに異能の選択権を委ねるわけもなく。伝承では無く実際に神がいるこの世界、アレが名前の通りの邪龍なのならば持っているのは治癒系の異能では無く不死の異能だろう。そんな厄ネタ勘弁である。

独り言を言ってなんだがしみじみ不死身に変えられなくてよかったと思う。


俺は研いだ事で輝きと斬れ味の半分ほどを取り戻した鉄の棒、もとい短剣をくるくると弄ぶ。

この二日間、上の街は消えたがダンジョンの中の簡易拠点が残っていたので、そこにあった砥石や爆薬(最重要)毒薬(超重要)を丸太を捨ててまで詰め込んで結界内で休んでいた。

と言うか有り体に言えばメシを食うだけ無理に詰め込んで5階層と言う区切りのポイントゆえに次元接続面が強固で大きいこの結界内の間に拠点で寝ていた。

さらに言うならついさっき起きて資材を根こそぎ奪って、短剣を研いでいた。


「順風満帆、だったら街は消えないんだよなぁ」



右目の痛みや加護は回復している。ついでに言えば昨日の内に新たな異能の試運転(実働後)として異能についてもう一度詳しく解析した結果、興味深いことがわかった。

まず、今回の事故は異能の反動、やはりボスの様な強大な存在をワンアクションで倒すのにはそれなりの代償が必要だった様だ。

次に効果、なんだが『原初の罪で精神と肉体を焼き尽くす』とある。原初の罪とか中二病極まっているが問題は精神と肉体両方を焼き尽くすのか、どちらかが燃え尽きれば燃え終わるのか、今回の結果から言えば肉体よりも先に精神が死んだ場合即座に炎は消えるだろう。という事だ。

生憎周りは木や石なんかしかなかった為に検証が不足しているかもしれないが、石は塵になるまで燃え、木は途中で燃え終わったのに木材は塵になったのでほぼ確実だろう。

木は生物で、木材は非生物、木の精神力がいかなものかしらないがほぼ炭になるまで生存を諦めないその精神性はあのだらし無い海蛇よりも強靭だろう。

そして、その時に加護が徐々に弱まる様な感覚があったのでこのあいだののが反動だと気がつけたのだった。


「まぁ、何にしても未来選択とかと同様普段は封印だなぁ…」


さて、じゃあ帰るかな

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