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神様だって…殺せねえよ、バカ


そういえば、というかそもそも、というか…短剣という物、大まかにいえば剣というものは人間相手を想定されて設計された対人兵器だ。

突き詰めるとあらゆる武器が人に対して向けられ、そのために造られた全ての武器は怪物を相手にするには些か辛い、それが前面に出るのが短剣という武器であり、俺の愛用せざる得ない武器である。

短いリーチ、ひ弱な攻撃力、暗器としての携行性や日常的に使うための利便性それらを高次元で実現しながらもやはり弱い、それが短剣だ。

だが、一応強み…と、いえなくも無いような利点もあるにはある。

それは速さだ。


破裂音と加速に伴う衝撃波が断続的に響く中、俺は未だ龍の腹の中でぐっすりと寝れてはいなかった。まぁ、そんな風になる気はないんだがね?


『追い詰められて漸く…か、随分と悠長だな?』


相変わらず龍はフランクに話しかけてくるが現在の俺にそれに答えるほどの余裕はない、右手右足を残して身体強化は使えず。加護も剥がれている。更に付け加えるなら短剣は尖っているだけの鉄の塊に近くなりつつあり、加護が弾けているので察したかもしれないが防具もほとんど無い、回避と未来確定は残っているが回避はともかく未来確定はもう一回使えば失明ものだしそうでなくてもこの戦いにおいてしばらくの間目が見えなくなるのは致命傷すぎる。

だが、それでもなお舞えているのは短剣の取り回しの良さと装備が減ったことによる重量低下、外套内の物をほぼ使い尽くしたが故に産まれた制御ギリギリ範囲外の加速のお陰だ。


『だがその戦い方ではもうそろそろ限界だろう…それはこちらもそうなのだがな?』


そして何より、何よりなのはこいつの傷の再生が止まったからである。

正確には怪物として貶められているこいつの今の存在強度が耐えられない量の毒をブチ込めたという事だ。お陰で俺の丸太ストックは残り二本、十本は消失し、五本相手の体にぶち込まれている。

まぁ、スペックの差で丸太のほとんどが拘束具としての役割を消滅させられているが、傷を塞げ無くしたりするには十分な程度に体に食い込んでいる。


「…」


口を動かすほどの元気もない、というかそもそも全力での行動、それも全神経を注ぎ込んだ動きをここまで続けられているのだけでも十分に奇跡的なのだ。頼むからそろそろ死んで欲しい…


『さて、ではそろそろ我もこの体の許容量を超える一撃で持ってこの楽しき時間の幕を引くことしよう…』


刹那、彼奴の身体が頭を残してほとんどすべてがボスを倒した直後に発生する光の粒へと変換され始める。


『詠唱開始…我が焔は罪、すなわち黒炎』


右足で踏み込み外套で左半身を守りながら加速、天井や壁を跳ねまわりながら頭を殴る。短剣がその鋭さを失おうと、短剣を握る手に血が滲もうと、身体強化の恩恵を失い加護の防御がない左から血が吹き出ようと、加速する。

殴る。殴る。殴る殴る殴る…だが、止まらない、世界を歪める力の奔流が口内に圧縮され、ほぼ消えかけている肉体に赤い紋様が見える。


『我、罪喰らうもの、我、罪背負うもの、我、悪逆をなすもの』


「…!」


声が出ない、が、叫ぶ。

本能が、視界が訴える。あれを撃たせてはならない、あの黒炎は、焔は、例え世界を歪めて回避しようと死ぬまで相手を追い詰め殺すだろう。そのような直感がある。


バキリ、短剣が、正確にはその芯が砕けるような、そんな手応えとともに奴の目を潰し、そこから脳があるであろう部位を粉砕するが、詠唱は完了した。


『我が名は悪龍ファーブニール、我が血は不死身を、我が心臓は智慧を、そして黄金は破滅をもたらす。』


瞬間、俺の視界は暗転した。

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