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生きているなら…


永遠の様な一瞬が終わった。

そして俺の対空も終わり五点接地で転がり外套を縮めて龍を見据える。


『ほう、避けたか…』


外套は煤け、光線から目を背けようと背を向けたのが仇となったか焦げ飛んでいる所もある。だがその収納力と変化機能は健在だ。

問題があるとすれば非常に精神的に疲労が出ており、それを癒す為に精神の水薬を飲む隙を晒すには些か距離も、そもそも力の差が大きすぎる為に何も測れない。

だがいいニュースもある。


『それに反撃も…か。こそばゆいが…まぁいいだろう。』


彼奴の背中、特に翼の皮膜が破れ左翼に丸太が刺さり骨が飛び出るほどの損傷を与えている。

まぁ、相手が少し力めば治るレベルらしいし、実際次の瞬間には何事もなかったかの様に全てが戻っているが、傷をつけられ、血が出るのならば…


殺せる。


短剣を持つ手に力が篭る。

希望的観測では無く確かに相手は生物だ。

丸太は残り19本、毒薬は龍相手には心許ないが一リットル。棘丸太は五本…短剣を当てにしていないわけではないが、些か的がでかすぎる。それこそ文字通り蚊の一刺し、質量と速度の生み出す破壊力、大雑把な力でしかあれに対抗するすべはない、俺は駆け出す。

肉体の一片までも、そのない才能の一つ残らず燃やし尽くしてもいい、とりあえず…


「1秒先の生存を、いつか来る敵の死を!」

『ふむ…なかなか良い啖呵だ…覇気もいい、せいぜい死ぬな?』


肉体の負荷を考慮していられる敵ではない、死なない程度に死にかけるしかないだろう。


『ま、それに我はどこかの異界、そこにあるであろう本体の分身、強さはそれの爪の垢ほどだ。なんとかなるだろう。』

「…すごいやる気が削がれるな、それは…」


というかよく考えなくてもこいつを倒したところで世界の危機は止められないし、そもそも別次元に飛ばされたくさいのであのダンジョンのエネルギーが減るわけでもない…だが…目の前の困難は確かに俺の前にある。

故に超えなければならない、せいぜい卑怯に…卑屈に行くかな!


音を越えて突撃し、丸太を撃ち込んで仕舞い剣を振るう。

勿論相手は推定百階層の怪物、音速だとかそういうレベルの動きは見切られている。見切られているが…当たる。

再生能力があるからといってここまで露骨に避けないか?いや、何か種があるはずだ。


『ふぅむ…成る程、気力を高速移動させて最低限を障壁に回しながら脚部を基軸に全身を強化しているのか…面白い。』


そう言うと彼奴は尻尾を振るう。視界の告げる数瞬先の未来が凄まじい速度で分岐しながら危機を伝える。地面から壁へ、壁から天井へと多少広くなっても残った部分を足場に回避、すると尻尾の先端が生み出した風圧が俺がいた場所や壁に切り傷を刻みこむ。


『こんなものかな?では、次は…こうだ。』


こうだ、といった次の瞬間俺は咄嗟に全身を外套で覆っていた。その後に凄まじい破壊音と風圧が俺を襲う。一回転して着地すると黒龍は既に俺の方に顔を向けていた。

いや、顔ではない、その巨体に搭載された筋肉と俺を観察して手に入れたなにがしかの仕組みを使って俺以上の速度で動いているのだ。


「まじかよっ!」

『ほぉーれ、遅い遅い』


爪を避けるも装甲が吹き飛び、更に牙が迫ってきたので丸太を射出し強制停止、マトモに黒龍の顎を跳ね上げたが世界樹の加護に似た何かを使用し丸太を逆にへし折った。

丸太は残り18本、だが俺に頼れるのは速度と質量によって生まれる質量攻撃のみ、短剣は振るってはいるがどうにかデチューンにデチューンを重ねられた神話級、それこそ神に近い怪物の攻撃を縫って放つ攻撃にさほど効果は見られない、というかいつのまにか盾が吹っ飛んでいる。最悪だ。


『耐えろ、耐えろ、足搔けあがけ、貴様に必要なのはそれで我に必要なのは永久に紛う様な暇をつぶす余興よ』


というか身体強化が左腕に効かなくなっている。どうやら加護ごと吹っ飛ばされたらしい、というか加護を超えた損害を受けなくて運が良かった。骨が折れたりするだけで人間は十分に動けなくなる。一応それ以外に大きな損害はない、クソみたいな状態なのは加速するが…問題ない、一応な。


瞬間的な加速、それと同時に丸太を射出することで龍に打撃を当てようとするが、龍はそれ以上の加速で回避する。そして相手の攻撃は速く、重いが目や脳が悲鳴をあげるほどの視覚拡張で未来を幻視し避け切れる。

大丈夫、避けれなくはない…


『とろい…』

「っ!!」


龍の瞳はその深い知性と高い存在強度で簡単に未来を観ることができる。いや、おそらく予測出来る。俺のそれとは違いそもそも存在するだけでその瞳は魔眼としても最高レベルである。だが、魔眼ではない、正確には魔眼足り得ない、その力は絶大でひと睨みで人を塩の柱にできるし過去未来を見据えることは出来てもその存在は世界のあり方を歪めない、魔眼の恐ろしいところは…


「どんなに弱かろうがそれは世界のあり方を歪めるんだよ!」


振るわれた爪は俺に当たらず。あらゆる攻撃が出る前にキャンセルされる。


『なに…?』


血涙が出る。目がチカチカするし、頭も痛い、残念ながら俺の低級に低級を重ねたようなクソ弱魔眼くんにこんな力はない、だが、無いのならば振り絞ればいい、これまでこれを使う場面は指で数えられるほどしかなかったし、そもそもこんなところで、なにも解決しないような場面で使うには代償が重すぎるが、ここで死なないためには使うしか無い!


「未来確定…簡単な手品みたいなもんだよ」

『ふむ…なかなか面白いな、よい、もっと我を楽しませせよ!』


左目がほぼ見えない、だが右目がある。乱用はできないが後一回は使用できる。それより先に異能の方を切るべきだがこの龍の攻撃をあの異能でどこまで防げるかわからん…いや、よく考えるとキツイなぁ…

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