表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/54

殺意高めな砂の海


ぶへぇ!ブハァ!(迫真)

目を開けることもできない、入った先は砂嵐の支配する無明の砂漠、以前来た時はこんな感じでは無かったんだが…


(どういう事だ!何もかもが違いすぎる!)


口を開けることすらままならない、俺はゆっくりと後退し、未だ残っている空間のゆらぎを通ってジャングルへと戻る。と言うか半身ぐらいしか出してなかったのでセーフだっただけで勢いのままに飛び出していれば普通にアウトだった。


とりあえず全身についた砂を払い落とし、外套の形状を変化させ口元を隠し、フードを深くかぶって固定、あまりこの強力な魔道具に頼り切りにはなりたく無いが、今回のダンジョンアタックは急ぎだ。緊急事態には早急かつ迅速に対応しなければならない、ぶっちゃけダンジョンの強化や激化は前情報として出た後に変化することもある。今回の場合は運悪くそれに当たり、謂わゆる高度な柔軟性を維持しながらなんちゃらみたいなノープランにして無計画にして無防備に障害にぶち当たったわけだ。


「こんなときには水がうまい」


とりあえずさっき飲んだ薬をもう一回飲み乾きと平静さを潤す。

さて、クールになったトコでどうしようか、というかどうすればいいだろうか?


……


「俺の三割当たる直感が言うには脳みそまで筋肉で出来てそうな作戦でも問題ない筈だ。」


理由は多々あるが、環境自体の変革にエネルギーを使えばボスに対する強化は手薄になるだろうと言う希望的観測と、どの様に強化されても相手は環形動物、殺し切るのは難しいが動きを止めるまでは簡単で、多少固くなろうとも構造的な弱点はある筈だ。それ故に突っ込んで丸太で頭をブチ抜き、理科の解剖めいたお作法で腹を割いて中を出して重要器官を破壊する。

まさにシンプルイズベスト、パワーイズストレングスである。


…もちろん、行動不能にならない様に逃げ果せる準備は必要だが、そんなことを考えているよりはもっとまともな案を出すしか無い、例えば…


「久方ぶりに、というか試運転から使ってない回避を使う時が来たなぁ…」


敵は巨大だ。少なく見積もっても体長は数千メートルはある。ひょっとしなくても最悪の場合強化ガン積みなので装甲もガチガチで速力も上とか、それどころか分裂して襲いかかってくるとかもあり得る。

だが、幾ら常識が通用しないダンジョンでもある程度の法則はある。


それは例えば階層ごとのエネルギー量、それは例えば質量保存の法則、そしてあるいは…生物として、その関節や筋肉の付き方動き方、とかである。


「相手は絶対に下から来て頂点に達するか俺を仕留めきれなければ頭を垂れて急速に潜行しもう一度致命の一撃を狙ってくるだろう。」


だが、俺は二撃目が出る前に仕留め切る。

相手は確実にこっちを食いに来る。ならばそれを回避して頭を抑えるのも簡単なはずだ。…うん、まぁ、例の如く無茶に入る行動だが、確実そうなのがこれしか無い、それこそ以前から言っている剣士君たちの様なパーティーなら、魔魂を貯めて位階をあげ、斬撃延長で頭から真っ二つにしたり、いろいろ手があるが、俺にはちっぽけな対人用の片手剣と怪物には心もとない市販の短剣しかない、異能も回避の様な補助型で、攻撃力は万に一つも期待できない…


「ま、なる様になるしかないな…」


ここはまだ二階層、三階層目を突破しても四と本命の五、そして帰り道が残っている。時間的に考えて残り五日位で五階層に行かなければならず、無理なら街ごとドカンである。

覚悟を決めて砂漠に入った。



改めて見るとそこは砂漠ではなく砂嵐の支配する荒野、正確には砂漠の砂を砂岩と砂に分け砂を全部空中にぶちまけた様な世界だった。


(口を開けるのはアウト、もっと言えば動きたくもないな…)


おそらくボスを殺してもこの環境は変わらないだろう。いや、万に一つこれが強化されたボスの持つ能力ならば、それはそれでいいのだが、この様な大規模な異能を使う生物を生み出すのにはそれこそダンジョンの持つリソースのほとんどを注がなければならず。未だ十階層しかない若いダンジョンにそんなエネルギーがあるとは思えない、おそらくかなり強めの天候をセットしただけだろう。


砂塵と風の吹き荒れる世界、生物の気配は存在し得ない、いや、たった一つだけを除いて、と言うべきか?砂塵でよく見えないが、ぼんやりと巨大な影が天に昇り、地に落ちては動き回っている様子がうかがえる。速さは予想通り以前より上がっており、その運動性能も段違いらしい、ぼんやりとした影しか見えないが、以前見たのよりも大きい…か?


俺はもっとよく観察したいと思い目を凝らし少しだけ動いてしまう。


「オオオオォォォォォォォ!!!」

(っ!?)


次の瞬間、俺の背後から地響きの様な叫びが聞こえ、突風が吹き荒れ、何かが高速で持って俺の頭上を走る。

見ればその皮膚は砂岩の中に潜り砂嵐を浴びた為か硬化しており、俺は内心舌打ちを打つ。俺はそもそもの可能性として、怪物が強化される時の方法を絞ってしまっていた。その思考の固さを突かれた。


(成る程、環境を過酷にすることで、怪物を進化させたかっ!)


怪物もベースは生物、生物とは遺伝レベルの変異は遅いが、個体レベルの特異性が成長するのは凄まじく早い…まさしく突然変異、一世代しか続かなくとも今目の前にあるのは現実的に脅威であり、倒すのが難しそうな怪物だ。

俺は丸太を取りだし、構える。

そして息を整えた瞬間、認識外から襲ってきた彼奴めがけて丸太を向け…別方向から別のワームにのみ込まれた。


「なっ!?」


凄まじい衝撃とともに俺は一時意識を断つこととなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ