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な、なんだってー!(某ミステリーサークル感)


手の甲には57、ボスの死体が消え、丸太を回収すると目の前には一階層のものとは違い物理的な階段があるわけでも、なにがしかの魔法的な仕掛けがあるようにも見えない


「ま、ここはそういうものなんだよね…」


しかし手を出すと半ばから俺の手が消え、手には突き刺すような日差しと反射によって発生する下からの熱波を感じる。

別に目の前に階段があるわけでも、これ見よがしな魔法陣があるわけでもない、そもそもダンジョン内の空間同士は物理的につながっているわけではない、異界から流れ込むエネルギーによって生み出された球状の空間がそれぞれバラバラに配置されており、世界樹の根元、入り口もそうだがその全てはボスを倒した時に放出される異界のエネルギー、それによって発生する空間のゆらぎによって接続されている。

ま、帰るときはまた別の法則が働いている。まあ、体内の様なものだ。俺が病原体で、このダンジョンが体なのだとするとそれを吐き出す、もしくは始末する力が常にかかっている。

…一見文明が滅び、また新たな物を育んでいるように見えるこの世界だが、いかに衰退したとは言え前時代の技術や知識は漫画やアニメなどから逆輸入され、今日も人類の発展を助けている。と言うか、そもそものベース、基礎は同じでまた同じような種を蒔いて育てようとすれば自ずと似るものである。


「っ…」


激しく突き刺さるような痛みが脳に直接来る。薬切れである。…それだけだとなんだかやばい薬がやめられない人みたいだが、処方箋のようなものだ。頭痛どめがなくなったくらいの気持ちでいよう。


「そうは言っても水薬も薬、過度な摂取は依存につながるからなぁ…」


今回は結構ギリギリのラインである。

というか、そもそも薬というのは毒である。体に対して有用な物でも度が過ぎればあっさりと効果を変えると言うが、今も昔も最初に生まれたのは毒である。というか学術的にもあらゆる物は毒であると言われている。


「プハー」


薄青の液体が喉を潤し精神を限りなくフラットにする。

だが、このままの勢いで次の階層に行けば待っているのは環形動物の化け物、いわゆるミミズやゴカイの様な奴らの究極体みたいなデカブツだ。

さらに言えばフィールドは砂漠、ポン子の情報開示よりも先に、この街が滅びる前から知っているのもあって、こんなことになるまでは一階層二階層をウロウロして金策をしようと思っていたものだ。

…まあ、最初の攻略隊に混じって五階層目まで行ったことがあったから知識として目新しかったのはそれより先から現在最終階層であるとポン子がいう十階層の話だ。


「と言うか最初のダンジョンアタックの時三階層で半分くらいにされて五階層の時にはもう数十人くらいだったなぁ…」


そしてそこから先に行った奴らは戻ってこなかった。

ちなみに持ち帰った情報はそれなりの額で売れた。あれが無かったら優雅に宿屋暮らしできなかっただろうし、質量と爆撃のコラボレーションもできなかっただろう。


「そういえば…そのお陰で色々悪名も着いたっけ…」


臆病、卑怯、そんな言葉がついて回る様になったのはその時からって訳じゃなかったが、急速に広まったのはそこら辺だった気がする。お陰で名前よりもそう言う代名詞で呼ばれることが多かった。

…はぁ、なんか精神的に疲れるはあん時のことを思い出すと、なんつーかほんと探索者って言うか、ダンジョンに潜る様なバカはどうしてあそこまで勇気と蛮勇を履き違えられるんだか…あれか人類の知恵の総和がそこそこに収まるのはああ言うマイナスがいるせいか?


ま、なんてこと言っても探索者である以上俺もその愚か者ってやつなんだがな。


「そう考えれば彼らの言い分もわからなくないがねー」


ボスの領域にはその力の残滓が残っており、他の怪物が寄り付いてこない、もし寄り付いてくる様なことがあればボス再生のための養分としてダンジョン側に処理されてしまう。

俺は優雅に世界樹の生み出したぬるい炭酸清涼飲料水と冷めたBLTサンドを取り出し食べる。

ちなみに今回のダンジョンアタック中の食料は基本これ、余裕があれば、もしくはこれに飽きれば其処らの手頃な怪物を狩り、食べることもあるだろうが、六日間、正確には残り五日と半日くらいの間はそんな暇はないだろう。


「それにこの外套にスタック出来んのは同じ物だけ、丸太はダンジョンの力で均一な物だから大丈夫だが、普通の水薬や食いもんは品質や味に多少なりとも違いがあるからなぁ」


例外として爆弾なんかは完璧に調合されていないと持ち歩くのも難しいと言うのもあって、人間とは思えないほどに完璧に同量の薬品配合で作られているので大丈夫だし、世界樹によって生み出されたものは完璧に同じ物であるため重ねられる。あと肉や薬草などは同じ怪物や同じ種類のものであれば一番軽いものに合わせて均一化される様で入れたときと出した時の重さや大きさの差に目を瞑ればスタック可能だ。

…そう考えるとこの外套はこの世界に上手く嵌まった魔導具だ。他の機能はあれどやはり物が沢山持てるのは重要だ。


「…今日は休むか…」


あまりゆっくりは出来ないが、仮眠くらいはしておかないと不味いだろう。なにせこの先は寝る暇なんて無いだろうからな…

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