圧倒的火力によって粉砕すると気持ち良さと切なさがドッコドッコイだと思う
「というわけで帰ってきた。」
「意味不明かつ相変わらずおかしな勝ち方ですね、なんですかあなた、前時代の創作にあったナニカサレテル系ロボットですか?」
そんな過剰武装を装着しながら燃え上がる人型だったら幾分かこの状況もマシだっただろうが、今回のは事故である。普段から染み付いていたクセが不意に現れた敵を前にフルバーストしてしまっただけなのだ。
しかし、収穫はあった。一つはやはりボスも強化されており、フィールドも全体的にうざくなっている。というのが一番だが…もう一つある。そのもう一つというのが多分…というかかなりやばい、やばいって何が?そりゃあもちろん…
「なぁ、もしかしてお前武器防具の修理とか、ある程度の食料品や日用品作り出せるだろ。」
「はい、そうですね、世界樹に汲み出されてきたエネルギーをなんやかんやして人類の繁栄を助けるのが我々の役目ですから。」
俺の今までの苦労さんが超絶無駄だったという事実が、である。
なんで、こんなことを思ったのか、一つに迷宮から生み出されるもの、怪物やその死体、フィールドの素材など様々だが、その産出物の中に世界樹がダンジョンを抑え付けているために生まれる『エネルギー』というのがある。
これ、これが今回や前のお家に関係する曲者であり、迷宮とそれを抑える世界樹が人類の生命線となった一因である。
このエネルギーは天使によってあらゆる物質に変換され完全に中立であり、ほぼ無政府状態といって過言ではないこの世界を統治している探索者ギルドからあらゆる物資となって人々に与えられる。
畑で野菜を育ててそれが売られるのと同じように、その街のダンジョンから産出されないものを補うのがその物資であり根源的に言えばエネルギーなのだ。
「かなしぃ…かなしぃぜ…」
「…あまり落ち込まないでください、現在はあなたが気が狂ったように一階層の怪物を狩りまくったおかげで使えるというだけで初日や最初の数日までは使えませんでした。ついでに言えば今も不安定なので部屋以外の機能は第二階層をどうにかして第三階層くらいでもう二、三度第一階層でやったような虐殺をしてもらわないといけません。」
それは、まあ、そうなのだろうが、やれるならいって欲しかった。と言うか気がつくまで放置とかお前ほんとに人類の味方かよ…
「ええ、私は最高神の忠実な僕にして世界樹の管理者、人類の庇護者であり味方ですよ?」
「はぁ…」
まあ、嘘クセェのは最初からだし、そもそも過去の大戦って神様方が無秩序にぶつかり合った結果がこのザマらしいというのが知られている以上彼等にとって俺たちの価値とはそこまで高くないのだ。
それに今までもいくつかの都市が突如として壊滅するなんてことはあったのだ。この都市がつぶれようと被害を受けるのは俺とこの天使、ついでに天上におわしましやがる神に多少の手間が増えるだけだ。
「はぁあ…」
ため息が深くなる。
この世界の構造というのは思いのほか単純で、残酷だ。俺がそれを誤認していたのは恵まれた環境下にあったからか、それとも知識が思考を凌駕して歯止めをかけていたのか、もしくは俺にも多少混乱するような人情があったという事なのだろうか?
ま、どちらのせよ思い出せたのならそれでいい…のか?いや、何かがおかしい、俺はちゃんと思考できているのか?戦闘時は異様なまでに鋭く特化する思考の持ち主であると自覚はしているが今までこんな忘れっぽかったか?
「…ポン子、身体機能のチェック、探索者ギルドであった状態異常回復用のチェックをしてくれないか?」
「わかりました。世界樹の子であり眷属である探索者、その異常を取り除くのは我々の役目です。」
彼女の手が俺の額に触れる。
祝福の生み出す力場の様なものをすり抜けて容易に俺の頭を撫でる様にさする彼女の手は、死人の様に冷たかった。
数瞬の後、探索者ギルドでやるなら申請から十分だが、やはり俺しかいないのと天使という多目的端末が目の前にいる関係からか早く終わった。
「異常を検知、病状は精神値の低下による一時的な視野狭窄と健忘症、いわゆる狂気状態の一つです。」
「なるほど、やっぱりか…」
「原因は…申し訳ないです。わたしの不手際ですね、これは…」
はて、病状はなんとなく察していたが、一体何が彼女のせいなのか?
「私の蘇生が雑だった様ですね、ダンジョンの中ではなく襲撃の終わりぎわ、異星の神の権能を簒奪した魔獣によって一度…れた貴方は「おい、一体何を…」買うsねなygdべksなk…」
視界が歪む。
頭痛がする。吐き気と寒気と震えがくる。口元から意図せず狂った様な笑みがこぼれ、消える。
「バイうsんわjdn不安定かいxねすあ大丈)@:yw?」
「っぐ…ああうう?」
聴覚が、脳が、事実をうけいれられないのでは無く。知っていて押し込めていた事実を自ら開けてしまった。
落ち度は俺にある。
いや、と言うかあれだ。
人間、過度なストレスがかかると記憶を失ったりするのってほんとうだったらしい、なにせ…なにせ…
「そうか、俺は…」
一度死んでいるのか




