お家を建てよう?
人間にとって、人類にとって必要なものとは何か、生きると言う至上命題の上で重視すべき点は何か…勿論、ひとつだけ、と言うわけではない、物事は複雑に絡み合って存在する。故に…俺は…
「家を作る。」
「なんでさ。」
いつの間にか隣でカエル肉を食うポンコツ天使がどこぞのセイギノミカタめいた返しをしてくるが、しかし!俺は家を作る!正確には建てる!
「流石にこのままで過ごしてるのは耐えられん!耐えられんわけではないかもしれないが、ダンジョンと安全地帯でのメリハリが付けたい!」
一週間、久しぶりとはいえ外で、命の危険とともに過ごしてわかった。
とりあえず、家が要る。と…
とりあえず木材はいい、製材されたものは貴重なので自分にとって重要なところで使う必要がある。
道具は何とか解決した。鋸やらかんなやら色々とないが、外套の変化機能に不可能はなかった。…まあ、少々疲れるがこれも訓練、動作の安定化は重要な課題である。
「と言うわけで設計図だ。紙は無いので地面に間取りだけ描いてそれっぽくしよう。」
「意外とアバウトなんだな…君は。」
ヴァカめ、素人は何をしても素人なのだ。だったら潔く諦めてそれらしくすることに注力するべきだ。
とりあえず基礎が居るんだが…家は倒壊しても基礎は残ってるものだ。周りを掘り起こし、力技で引き摺り出し好みの形の場所を探す。
ま、そもそも基礎なんて如何やってんのか知らないのであるところのものを使おうと言うわけだ。
「ふむ、やっぱ此処か…」
そうして居るうちに見つけたのは俺が元いた宿屋があった場所、ダンジョンに近く。周りに武器屋や道具屋の揃ったいいところだったんだが、今じゃ瓦礫の山である。
とりあえず身体強化の祝福が強化された事によって上がった腕力とそれに相乗して上がる脚力でダンジョン付近、というか出入り口にあった仮設テントの施設を設置する場所を生み出し、設置、台車が役に立ってくれたが、それ以上にスコップやハンマーの扱いが上手くなった。
…ちなみに既に二日が経って居る。
さて、基礎、というかまあ殆どが仮設住宅めいたところだったので基礎らしい基礎というのは無い、大都市だったらコンクリで固めるが、出来立てホヤホヤだったこのダンジョン周辺できちんとした基礎工事をした場所というのはこの宿屋くらいだった。
「ま、宿屋は必要だし、いつまでもあるからな…こんなことが起きない限りな!」
とりあえず出した土を埋めなおし、踏み固める。コンクリの基礎には前世界の技術である鉄筋が入って居るが…まあ、上に出てた部分は吹っ飛んで居るため多少腐食して居る。
勿論、上に高い建物を建てるつもりはないが…大丈夫かなぁ?
「と、不安がってみるはいいが、結局固められた地面があるだけマシって感じだな…」
ぶっちゃけ尖らせた丸太さんを突き刺して四隅に柱を立てるくらいしか方策ないし…
丸太の長さは3メートル程、直径は30センチ…改めて考えるとすごいもんぶん回して居るが、身体強化が1でもあれば身長160センチ50キロの女性でも100キログラム、つまり体重の倍くらいのものを持ち上げて運べるのだ。
まあ、それが2もあってちゃんと鍛えてるなら…多少はね?
「それに、今は3だしな…っと!」
基礎の内側に穴を掘り、ズンズンと丸太を突き刺して埋める。…非常に腐りそうだが、ここら辺はそこまで雨も降らないし、世界樹の結界が多少は守ってくれるだろう。
掘ったついでに床には瓦礫君たちをパズルの様に敷き詰め石畳風味にしていく。外は木片と無秩序な瓦礫、石畳もまだない様な若い街だった為に外縁部に少しあるだけ…ちなみにダンジョン周辺は世界樹の根がある為石畳を引けない。
「ふんふーんふーん」
「飽きませんね…」
さて柱が建ったら…一回柱を抜いてほかの丸太と連結できる様に…というか今更だが…
「柱ぶっさして輪切りにした物の上に建物立てればよくないか?」
という考えに至り石畳の床の意味消失、もうちょっと深めに掘って石畳(笑)達を放り込みつつ柱を打ちたてる。が、しかし、
「…段差つくんのめんどくさい…」
もうなんか疲れてきた。
ここまでで既に三日、最初の二日と合わせて五日経って居る。
幸い丸太の品質は最高レベルだ。ダンジョン内の木は奇妙なほど画一的で毎日木こりに行っても次はいれば生えているようなやばい代物だ。
もう考えるのがめんどくさくなってきた俺は丸太をいい感じに外套で切り取って縦3メートル、横5メートルの長方形になる様木材を組み上げた。
見た目は出入り口と屋根のないログハウスである。地面との隙間がなく、非常に不安だが、とりあえず出入り口を切り取って補強する様に玄関っぽく丸太を加工したものをはめ込む。
「おお!床は土だけど家っぽい!」
「…豆腐?」
言ってくれるなポンコツよ、わかって居るんだ。これが豆腐建築なのは…!
とりあえず等間隔に丸太を突き刺して板材を地面から浮かせ、板状に加工された丸太で床を作る。勿論、乾燥させて居るし、変形もない、真ん中にある囲炉裏めいた焚き火用の瓦礫で出来た構造物と力尽きた為に真っ平らな屋根が気になるが、窓(穴に板で蓋できる様にしたもの)とベッド(木材でできたでかい箱ふかふかしそうな藁とかを詰めちょっと丈夫な布で覆った物)もある住居である。
「暗くない?」
「…」
実質寝るだけなのでノーカンである!
施工時間一週間、犠牲になった丸太50本、それで完成した家はとりあえず寝っ転がりたい時くらいにしか使われない倉庫と成り果てたのだった。




