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試運転がてらの大虐殺


ダンジョンで、怪物を殺せば自分に魔魂という形で帰ってくる。だが、それ以外にも世界樹にその一部が送られ、その力を強化していく。


「という訳で試運転がてらの一階層を荒らそう。」

「ひどい宣言ですね。」


朝起きて、体操して、なぜかしれっといる天使様の分まで朝飯のカエル肉を焼き、食べる。

今日も一日、がんばるぞい!


「それはアウトです。」

「いいじゃんか、減るもんじゃないし。」


俺が言っても需要ないし。


「わかってるならダンジョン行って下さいね!」

「大丈夫大丈夫、今日の俺はやる気満々よ?」


…まあ、二階層での狩がメインになるので、その前の慣らし、ついでに外套の機能をフルに使った新しい鍛錬をする。これから階層をどんどんと下って行き、最終的にはここを完全に制覇しなければならない、それに必要なのはなんといっても地力、筋力体力持久力、それに加えて俺には早さが必要だ。


「じゃ、行くか。」



なぜ早さが要るのか、それは一重に俺がソロ、つまりぼっちだからである。

盾で防ごうが籠手でながそうが怪物たちの膂力は凡そこちらの持つ力を超えてくる。それに加えて毒だったり、魔法の様な伝承の再現だったりと特殊な攻撃も多彩だ。


バシュッ


「一つ…」

「キュッ!?」


この外套、その能力は非常に多彩かつ有用だ。例えば変形、正確には変化ともいうべきその力はその先端の硬度を鉄のヤイバ程度にまで変化させ鞭の様に高速で斬撃を放つことができる。


「二つ、三つ!」


息が切れる。

今俺は積載して動ける限界近い木材やら石やらを持った状態で引き上げられた敏捷性と正確性で戦っている。

勿論、これからは基本スロット一つを潰して重量的な負荷をかけて行く。全身にほぼ満遍なく負荷が出るこの外套は肉体を余すところなく振り絞る事を可能とする。このダンジョンという環境で、世界で、卑怯であると言うのは最低限だ。

そこから一つ飛び出るには、少しでも楽に生きたいと思うのなら…ダンジョンに潜らなければいい。


「四つ!五つ!」


だが、俺はそれを選ばなかった。

バカな決断だ。おおよそ賢いとは言えない、だが、それでも俺はこれが良かった。


「ゲコォ!」

「っ…っふ!」


不可避の丸太がカエルを貫く。


「六つ…か。」


俺が卑怯だとか、卑劣だとか言われる本当の理由は、ありえない勝ち方では無い、正攻法で勝てるのにそうしないから言われるのだ。

非力故に、必要にかられて、では無い、それはただ頭が良く。要領がよく。何より尊く。素晴らしいのだ。弱者でありながら強者を打ち倒す。まさに英雄譚の主人公だ。

だが、強者が、少なくとも非力でも無ければ必要にかられてもいない者が策を練り、過剰なまでの戦力で持って敵を、弱きものを滅殺するのは…


「邪道であり、凡そ意味のない悪だ。」


だが、この世界は、このダンジョンは優しくない、少なくとも多くのバカが思い描く様な強者を弱者が打ち倒せる様な場所ではない、ここでは探索者と言う生物が最も下等で最も弱いのだ。

俺に正道とやらを説いた奴らは皆死んだ。死んでない奴も現実を知る前に知識だけが先駆けた様な奴ばかりだ。


「ま、気にして無いんだがな!」


狼の群れで一対多数を鍛えカエル相手に隠密とゆっくりと動く事でしか使わない筋力のトレーニング、そして昨日の今日で蘇って居た糞蛙を抹殺した。

階層ごとに怪物の数は決まっている。特殊なトレインの様な罠がない限りボスを入れて101体、ボス以外は一時間ごとに数を補填され、ボスはどうやら今の状態では1日で蘇るらしい…


手の甲には9、運悪く狼の群れが最大の10匹単位だったため無駄に死線をくぐらされたが、目の調子も良くなってきた。取り敢えず、一週間、手の甲が63になるまで篭る。

外套のおかげと言うか所為と言うかで、ただでさえ低い位階が一階層ではあげられなくなったのだが、まぁ…


「それもまた。いいってものさ。」


単純作業と筋トレは得意だ。というか得意にならざるえなかった。そうじゃないと剣の型の練習とか、体力作りとか、体づくりとか、探索者としての基礎が出来ないからな!


「取り敢えず…肉食ってリポップまで寝よう。」


安全地帯にはいかない、目と、それが写す視界と、おそらく同年代の誰よりも、そしてこの街にいた俺以外の焼け死んだ奴らの誰よりも長く。深くこのダンジョンの中にいた俺の感覚をより強く呼び覚ますためだ。

五感の全てと生き残りたいという生への執着、本能的なそれらを全て引き出して…それで漸く俺はこのダンジョンに立ち向かえる。




パチパチと薪が爆ぜる。

殺すなら必要な分だけと言うのが作法だが、ダンジョンに潜れる人間が俺しかいない関係上、怪物の総量を削るのは世界樹のためである。

普通なら数百人と言う探索者が自らが必要な分を倒し、持ち帰っているだけでも十分だったし今の俺の様に人気のない階層で魔魂を稼ぐ者もいた。


「ふぅ…」


カエル肉、味的には鶏肉に似ているが、それよりもムチムチとずいぶんを含み、ジューシーな感じがする。しかしウサギ肉と交互に食っていても飽きが来るのは必然、第二層は植物も多いが蛇や極楽鳥の様な南国的な環境にいる生物の強化体や少しだけ異形系、正に怪物と言わざるえない物が出てくる様になる。


俺は取り敢えずこれから六日続くこの訓練の為に目を閉じた。

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