魔法の道具
起きた。体操した。
「此処に…ご飯が、あどぅ、食べに…イクォ」
溺れそうなポンコツ天使様がいた。
「おはようございます。飯は今から作るとこですよ」
「ええ、知ってます。それよりもいいものを拾いましたね?」
そう言って俺にくっついている外套を見る。
「…コレ、なんなんですかね?」
「まぁ、物事には流れというのがありますし、お寿司」
この後むちゃくちゃ肉を焼いた。
「ご馳走様でした!」
「お粗末さまです…」
飯ついでに俺から魔魂を回収して残りは後40個ですね!と、爽やかに言い放つ。が、俺が知りたいのはそれじゃない、『おお〇〇よ、死んでしまうとは情けない』とか言いそうな王様的経験値通達はいいのでこの俺にへばりついた外套についての説明を、早く、とにかく。ハリー!ハリー!ハァリィィィ!
「わかりましたよそう脳内で喚かないでください。」
「なんで心読んでんだよ!」
プライバシーの侵害である。斯くなる上はエロいことを考えて自体を混迷させるしかない!取り敢えず雑コラみたいな想像しとけばいいだろ…
「アニメキャラのキメラみたいな粗大ゴミを考えている暇があれば取り敢えず私の話を聞きましょうねー?」
…じゃあ、最初から話してくれればいいと俺は思う。
「取り敢えずその外套はある種の呪いの装備です。」
「はぁ?」
「正確には持ち主以外に着られることを許さない、装備で貴方の体から僅かに出る魔力的なサムシング、まあ、人によって言い方は変わりますが、そういうのを消費しながら様々な能力を発揮する複合型の魔導具ですね。」
うーん、着られることを許さないって事はなんとか脱ぐ方法はあるんだろうが…第1層で能力が複数ある魔導具なんて聞いた事ないなぁ…
「そうですね、普通ありえません、ですが…ダンジョンの力を正常に押さえ込めていない今だからこその現象かもしれません。」
「…というかそもそもダンジョンで手に入る手製のものよりも明らかに強い魔道具やらなんやらはどうやってできてるんだ?」
言い方から察するにダンジョンの力が強ければ強いほどドロップ品の力は高くなる。だがそもそもそれが存在する理由はなんだ?
「…禁則事項です。攻略後なら何か言えるかもしれませんが、現状では発言許可がおりません」
「ふーん…」
「取り敢えず、効果の説明をします。ダンジョン協会で使用していた鑑定の権能の使用許可申請…受諾されました。情報を開示します。」
「無駄にシステマチックだなぁ…」
相変わらず。と、言うほど協会に行ってないが、今回の様に人型のユーザーインターフェースである天使を用意しながらも、通常ならば処理する人数の関係で大体天使に接続する複数に機器によって魔魂の量を確認したり、装備品の確認をしたりする。
まぁ、俺しかいないならわざわざ天使に許可申請をして、そこからさらに天上からの返事を待ち…なんて面倒くさい事するより、天使が自ら天に問いかけた方が早いと言うものだ。
「名称、奇術師の外套、効果、動作正確性と俊敏性に極大補正、四つの物体を所持者が重量に耐えられるだけストック可能、可変する。…大まかに言えば、限定的かつ所持重量に限界のあるアイテム袋に多少の戦闘補助機能が付いたものですね」
「いや、スゲェなオイ。」
呪いの装備とか言われてビクビクしてたのが馬鹿みたいじゃないか、なんだこのチート装備…
「ただし、代償として君の得る魔魂を少しずつ吸収する。」
「一階層での狩が!稼ぎが!」
チートの代償は大きかった。
「数値にするなら1ずつ、つまり二階層で一回層と同じ稼ぎになる。あと端数が生まれやすくなるね!それに君の言う様なチート装備らしく成長するらしい…上限は十段階、上がるのは補正かストック数か変形の多様化の内一つが上がっていくみたいだよ!」
「大昔のオンラインゲームかよ!?」
しかも選べないんだろ?口調的に!
「勿論さ!」
「なんで嬉しそうなんだ!」
このあと口論が続いたのでカット
天使は飯を食い終わって道具の説明をするとすぐに帰って行った。
「はぁ…まあ、悪い品ではないなぁ…」
少なくともダンジョンで手に入る魔導具らしくオンリーワン的な物だし、効果も高い、それに現状必要な機能が多く付いた物だ。大事に使おう。
「取り敢えず性能テストかな…」
強い装備を手に入れた。じゃあダンジョンに行こう!みたいな脳筋思考の奴から死んでいく。聖剣だろうが魔剣だろうが無敵に見えるものにも穴はあるし、そもそも持ち主が人間な時点で穴だらけの泥舟だ。
俺は取り敢えず収納機構から順番に試すことにした。
倒壊した家屋、よく考えれば人間という人間が蒸発した後も残るという異常事態の後も残っているのだが…まあ、そこは命よりも守り易かったんだろう。人間というのはその機能を停止するのにさほど大きな損害や変化はいらない、助からないと思ったものから切り捨てて行った結果、家屋だけが残ったのならば、天使という奇跡もそこまで万能でないということの証明に他ならないだろう。
…まぁ、そんなおセンチ(死語)なことを考えていてもしようがない、取り敢えず角材と呼ばれる凡そ同じような物を外套の奥にしまい込んで見る。
「おぉ…入った。」
その分身体は重くなっているが、そんなやわな鍛え方をしていないし、身体能力強化は2でも常人からするならば十分に超人だ。
だが、この分なら丸太なんかは数本抱え込んだら戦闘に支障が出るだろう。
「…ま、たしかに四種類の物が入るし、小石みたいなものなら結構入るな…」
スリンガー君大活躍の予感である。
というか機能を一つ一つ確認していく予定が、変形機能は角材を押し込んでいるときに俺の意思によって外套の一部が角材を持ち上げたりしてどんな具合かわかってしまったし、人間の本来持たない第三の腕のような拡張された感覚に瞬時に適応できたあたり、器用さへの補正もなかなかだ。
さらに角材を探すために家屋の周辺を歩いて見たとき明らかにいつもと違う速度感だったので敏捷性への補正もかなり大きいのはわかった。
「うん!よし…取り敢えず今日は資材集めて、キノコの処理して寝るか!」
そして、宣言通りの行動しかしなかったので1日は瞬く間に終わった。