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1.補習確定

「日常と空想の境目は一体どこにあるのか」「違和感」などをテーマに書いていこうと思います。

感想をくれると作者はとても喜びます。

本当に宇宙人は実在するのか。

子供の頃、友達と語り合っていたあの日が懐かしい。

齢20近くとなった今でも、その謎は解けずにいる。・・・解けずにいた。



西暦2050年「彼ら」は現れた。

東京上空に突如姿を見せた巨大な船。全長は優に2キロを超えるそれの存在は、瞬く間に世界中を早馬となり駆け抜けた。

「彼ら」は地球に対し、宇宙へと外交を開くことを求めてきた。

曰く、地球は宇宙空間を渡る上で重要な中継点となるらしい。

「彼ら」は宇宙船などの技術の開示や物資の提供を名目に掲げ、無理やりに「開星」を成し遂げた。

とんだ黒船もあったものである。

この10年で地球は変わった。

宇宙人の来訪はこの星の支配構造さえ簡単に塗り替えていったのである。

数百もの国が統合され、ひとつの統合星府が生まれた。

星府にはかつての国や人種にかかわらず優秀な者が選ばれ、今現在も腐敗なく星を治めているらしい。

この星の人間にできなかったことが宇宙人の手によって簡単に成し遂げられたというのも皮肉な話だ。

そうして、人類と「彼ら」の出会いは始まったとさ。
















「話しって・・・なんでしょうか?」

7月20日、俺、小野田ユウは窮地に立たされている。

おそらくこの間の期末考査のことだろう。

自慢ではないが俺は国語のテストを寝坊で欠席してしまったのだ。職員室中からの視線が痛い。

「とぼけるな。君も反省してそうな顔くらい準備してきたらどうだ?」

目の前でため息を吐く女性。その髪は肩口で切りそろえられ、つり上がった目つきが特徴的な美人である。

その人が俺を説教している本人でなければ最高なのだが。

「でも先生、過ぎてしまったことは仕方ないですよ。これから改善していきましょう!」

「そうだな、今さら嘆いたところで君の点数は帰ってこない」

キマッた。 このまま流して栄光の夏休みへと

「なので君には課題を出すことにした」

なんということでしょう。

「課題?まあ出るなら嫌々やりますが・・・」

「それはよかった。なら早速手配しよう」

「ところで、俺は何をやらされるんでしょうか?」

それをきいた先生は頬をつり上げて


「課外授業だよ」






話を聞くに、課外授業とは間もなく開催される開星20周年を記念するパーティでのボランティアらしい。

うちの学校でも出店をするからその手伝いを3日間しろとのことだ。

正直な所、それでテストが帳消しになるなら安いものだと思っていると後日感想文の提出を命じられた。誠に遺憾である。

隕石でも降ってこないかななど頭の隅でぼんやり考えながら、話を聞き流していると、ふいに窓の外に一筋、赤い閃光が走った。

流れ星。今の時代となっては珍しくなくなったが、昔は偶発的に見えるようなものではなかったらしい。それこそ信じがたい話しである。

この時代、流れ星なんて夕焼けに飛ぶカラスの群れくらいありふれたものだ。そんなものをありがたがるなんて、大層過酷な時代だったのだろう。


突然、頭に衝撃が走る。思わず倒れこみ尻もちをついてしまう

「転ぶことはないだろう。それよりも話しは聞いていたか?」

俺を見下ろしながらけらけらと先生が笑う。どうやらその手に持っている資料で頭を軽く叩かれたらしい。

「手伝いって31日ですよね。打ち合わせとかいいんすか?」

周りの奇異の視線を見ないように、引き上げられながら質問すると

「ああ、君にやらせるのはただの荷物運びだからな。育ち盛り、力仕事は任せたぞ!」

聞かなければよかった。本当にそう思う。

「まあ今日は帰りたまえ。あとは当日現場で説明するから適当に資料を読み込んでおいてくれればそれでいい」

そう言って先程俺を叩いた資料を手渡してくる。人に渡すもので殴るのは教師としてどうなんだろうか。







蝿を払うような先生のしぐさと共に職員室を追い出された俺は、帰路に就くために下駄箱に向かう。

夏休み前日ということもあってか、廊下には人っ子一人見えず、グラウンドから運動部の声が響いている。

雲ひとつない青空の中、若干の蒸し暑さはあるものの、この世界にひとり取り残されたような感覚は嫌いではない。そうぼーっと考えている内に下駄箱にたどり着いた。

靴を履き替え外に出ると、ふいに横から声を掛けられる。

「あれ?小野田君、こんな時間まで何やってるの?」

目を向けるとジャージ姿の生徒が一人、その線は細く中性的な印象を持たせる。

クリス=ジェイン。俺の数少ない友人のひとりである。

水晶の様に煌めく髪に瞳、おおよそ人間離れした見た目をしている「彼」だが、それもそのはずだろう。彼は地球人ではない。

「先生に呼び出しくらったんだ。ほら、俺寝坊したから」

「あはは・・・それは大変」

何があったのかを自嘲気味に伝えると彼は困ったように乾いた笑みを浮かべた。

「そういうお前は部活か?こんな暑いのに運動部は大変だな」

彼はサッカー部のマネージャーだったはずだ。美少女が入学してきたと散々騒いでいたサッカー部が男だと知ると急に大人しくなったのが思い出深い。

自分がプレイするわけじゃないから大丈夫だと言う彼、幾ばくか駄弁ったあとに解散となった。








宇宙人が地球を訪れて50年、町に宇宙人が混じり生活をするのも普通になった。

電車を乗り継ぎ、自宅の最寄り駅に降りる。

『宇宙人は敵だ!』と鼻息を荒くする老人活動家を尻目にまばらな人の波の中を歩いてゆく。

この時代に排外主義など誰も相手にしやしない。第一、今の産業は宇宙からの物資によるところが大きい。

彼の周りだけぽっかりと人の波が途絶えているのがその証拠だ。

時代逆行などできないのはいつだって同じである。連れて行かれる活動家を横目に、そう思った。







帰宅後、先生に渡された資料をベッドに寝そべりながら眺める。

A4用紙10枚ほどにまとめられた表紙に某家電量販店のようなマークが描かれ、『宇宙は1つ!みんな仲良し!』とでかでかと用紙を占領している。

頭が悪そうなことこの上ないが、大事なのは外見ではなく中身だと考えページをめくる。

流し読みをしていくと、うちの学校の出し物を見つけることができた。どうやら焼きそばを作るらしい。

それならばあまり苦労することもない。気楽に構えるとしよう。

―そう、思っていた。

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