機械人形と操り人形の狂想曲 前編
。(丸)で行を落として書いているので長く見えます。
ある雨の日の出来事。
ある曲がり角のゴミ捨て場に、一体の着せ替え人形が捨てられていた。
着せ替えようの服もまとめてポリ袋に入れられ、ゴミ捨て場に放置されていた。
今着せられている服はところどころが解れ、体はところどころが汚れていた。
着せ替え人形の瞳に雨の滴が辺り頬を伝って零れた。
それは心なしか、泣いているように見えた。
もう捨てられてから数週間にもなっているが、いまだにゴミ回収は来ず、経済悪化の模様を覗わせていた。
今、この世の中の経済は一部の地域を除き異様に悪かった。
東の都から離れたこの地域は特にひどかった。
信号機はついておらず、電車も動かず、車が通れば寄ってたかって壊しにかかる。
治安が悪いどころの騒ぎではなかった。
だがそんな街で、遠くから、子どもたちが近づいてくる声が聞こえた。
三人ほどだった。
この街でわいわいキャーキャーすれば生き延びることもままならない。
だが不思議なことに、近くの者は何一つ文句を口に出さず、普段なら銃を持って出てくるところの家も、特に反応なしだ。子供たちが人形の前まで来た。
ふと先頭を走る姉の後ろの双子らしき”姉妹”が、見事にそろって、人形の方に駆け寄ってきた。
姉は、「風邪ひいちゃうよ!早く行こうよ!」と呼び掛けているが、人形の目の前の姉妹は動こうとしなかった。
そのとき、ふと黒髪ツインテールの女の子が人形を手に取った。
姉に「これ欲しい!」と目を光らせながら言っている。
姉はしっかり安全かどうか確認した後、すんなりOkを出した。もう一人の、黒髪ショートウルフの少女は人形の後ろにあった袋をちゃんと確認もせず持ってきた。
その子は「人形の着せ替え用の服もあったよ」と姉に自慢げに見せびらかしていた。が姉は「それゴミじゃないの?」と言いつつも袋を開けた。
姉は少しばかり驚いた。中身はちゃんとした、着せ替え人形用の服だったのだ。
姉は持ってきた少女に「よく中身わかったね」と言いながら、頭を優しくなでた。
そのあと少女たちは再び走り出した。
家の方角だと思われる方向には、東の都がある。
少女たちは迷いなく愚民民衆(荒くれもの)の町から東の都の境界線を踏み越えて、すぐそこが家だったらしい。
東の都に入ってすぐの、まだ新しいぱっと見三階建ての一軒家に駆け込んだ。
奥から母親と思わしき人物が出てきた。
その人物はびしょ濡れになった少女たちの姿を見るなりタオルを取り出し「もうこんなに濡れちゃって」といい荒々しく少女たちの事を拭いた。
親に風呂に入るよう促された、三人は、靴を脱いで急いで風呂場へ駆けていき、服を脱ぎ棄て、風呂場に入った。
と、そこで知った事実だが、ショートウルフの子は、少女ではなく少年だった。
着せ替え人形も一緒に風呂に入れられた。
汚れていたところは綺麗になり、さっきまでの雰囲気とは大違いなほどあたたかなものになった。
ツインテールの少女に抱かれている着せ替え人形は、どこかうれしそうにも見えた。
人に捨てられ、悲しみというものを知らされて、念が入り込んだ、この人形は「どうせまたすぐに飽きて捨てられるだろう」と悲しみで作られた心の奥底で、思っていた。
だが、ここにいた、みんなは、一人一人がどんなに大きく成長しても、部屋に飾られていた。 真ん中のこの少年は、見るたびに話しかけてくる。
たまに愚痴も聞かせてくる。
そんな風にでも、かまってくれる彼は特に好きだった。
だが、そんな日々はそれから長くはかなかった。
長女の彼女は、長男がいなくなった事を私を持ってギュッと強く抱きしめて反してくれた。
彼女は、私が不運を振りまき、この世から消してしまったかもしれないのに、何一つ暴言を吐くことなく、なぜかひたすら私や彼に謝罪し続けていた。
翌日の朝。
そんな彼女も、また妹も、ふっとこの世界から姿を消した。
その後着せ替え人形は自身の力で、動くことができるようになった。
家を出てひたすらひたすら遠くまで歩き続けた。
そんなある日。
着せ替え人形は車につぶされ、残った意識は次第にこの世から消失した。
そんな着せ替え人形としての仕事を終えた彼女が、再び目覚めたのはある桜の木の下。
空は雲一つなく澄み渡り、優しくこの地を照らす、太陽をこの地で見上げる、その姿は目を離しただけで溶けて消えてしまいそうな、 儚く、淡い夢でも見てるのではないかと錯覚させるものだった。
少女は、自分の体に一通り目を通すと、身体中を触り始めた。
そこで気づいたのは、自分の首筋に、本当にわかりずらいのだが、ボタンが付いていることだった。
本当は押すつもりはなかったが、少し手に力が入ってしまい、押してしまった。
カチッと音とともに、自分の腹が、くるくる渦巻くように開き、中に見える歯車や、小さめのタンクのようなものに、内臓のような形状をしたパイプの後ろに、ひっそりと子宮と思わしき臓器が、かをのぞかせている。
基本的な人間と同じような位置に似たようなものが付いていたので、これは人間でいう消化器官、なんだと理解した。
自分の体内をじっくり観察した、のちにもう一つの疑問が生まれた。
この開いた腹をどうやって戻すのか。
もう一度首元のボタンを押してみたが、特に反応はなく、ぷにぷにしてるだけだった。
チョット焦りながら、身体中触れてみると今度は胸と胸の間、要は谷間に設置されていた。
今少女はボタンを、力ずよく押した。
すると身体中に快感が走り、あらぬ声を、上げてしまった。
辺りに誰もいないのに一人で、赤面して、顔を押さえてゴロゴロした。
すると不意に声がかけられた。
「なぁ。君、機械人形でしょ?機械人形が一人でいるのは珍しいね。それにしても凄いよねぇ。こっちの世界の技術力も。なんたって歯車とかが脳の代わりしてる上に、エネルギーは一食摂るだけで、三年間ぶっ通しの戦闘してやっと切れるくらいのエネルギーを得られると来たもんだ。上位品となると、戦闘力も蓄えられるエネルギー量も増える...俺も欲しかったけど、一体の値段って気色悪いほど高いんだよねぇ~」
少女にはよくわからない話を淡々と続けられたため、少女の思考回路は、オーバーヒート寸前だった。
しばらく頭をふらふらさせて、ふと正気に戻ったときに、すぐ後ろにいた女性にこんな質問をした
「あの...どこから私のこと見てたんですか?
すると女性は簡潔に、はっきりと、言った。
「あぁん♡の所か..ふがぁ!...」
「いやぁぁぁぁぁああ!」
思わず叫び、挙句少女は、後ろにいた女性に強烈なびんたをお見舞いしてしまった。
勢いよく吹き飛ばされた女性は、あまりの激痛にか、その場をひたすらゴロゴロして「あああああああああ...」と声の枯れた断末魔のようなものを発していた。
少女はさすがにやりすぎたと思って、女性に駆け寄り「大丈夫ですか?」と焦り何故か少女本人が涙ぐみながら、介抱し始めた。
少女に介抱され、起き上がった女性は、忘れてた、とばかりに唐突に自己紹介を始めた。
「私の名前はコズキ。君は?」
その問いに少女が戸惑った。
過去に着せ替え人形だった時に、三つほど呼ばれた名があった。
一つ目は、製品命として「サテラ」
二つ目は、一回捨てられる前にとある少女がつけてくれた名前「ルーシー」
三つめは、いつ廃棄されるかわからない場所から拾い、あたたかな空間をくれた家族、の一人。
あの少年がつけてくれた名前の「エイラ」
少女はどれかを言うべきだと思った。
が、それを見ていた、コズキは、苦笑いすると
「悪い質問だったね。名前ないんでしょ?私がつけたげる。私、気に入ってる名前があるんだ。」
少女は目を驚いた表情をして、コズキを見た。
コズキは、少し寂しそうな表情をしうつむくと、何かをりきるようにぶるぶると顔を振り少女の方を見て
「私が前持ってた着せ替え人形につけた名前なんだけど、」
その言葉が出てきた段階で、少女は目を見開いた。
あまりにも違っているその顔が、懐かしい彼の物に見えたから。
息を呑み、少女は目の前のコズキが言おうとしている名前を聞き逃すまいと、体を少し乗り出して、聞いた。淡い期待を胸に。
コズキはその少女の真剣なまなざしをみて、微笑を見せ、少しためてから
「...君の名前は、”エイラ”だ」
-----------------------------------------------------------------
機械人形と操り人形の狂想曲 前編。
初めて前編中編後編に分けて一つの買いを書きますね。
なんかいつもと違う感じな題名だと思っています。
不思議な感じがしますね。